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総務省,放送事業者向けの個人情報保護指針を策定

総務省は8月31日,放送に関わるすべての事業者が個人情報を扱う際に留意すべき共通のガイドライン,「放送受信者等の個人情報の保護に関する指針」を定め,告示した。

本指針では,放送番組を視聴する受信者などの個人情報を扱う事業者を「受信者情報取扱事業者」と定義し,その義務などが定められている。主な事項としては,(1)個人情報は本人の同意なしに目的以外に利用しない(2)個人データの保存期間を設定し,期限が過ぎたら消去する(3)個人情報取扱者の限定などアクセス管理を徹底する(4)視聴者本人から個人情報の開示や訂正,利用停止を求められた場合は応じる(5)個人情報流出の際には速やかに本人へ通知,公表し,総務大臣へ報告する,などが盛り込まれている。また,放送機関が報道目的で個人情報を取得する場合など,「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」で適用除外とされる場合には,本指針の規定を適用しないことが明記されている。

個人情報保護法は昨年5月23日成立,同30日に公布されたが,個人情報取扱事業者の義務などについてはまだ施行されていず,来年4月全面的に施行される予定となっている。同法第7条に基づき今年4月,民間の業界団体や個々の事業者などの扱う個人情報に関して取り組むべき枠組みを示した「個人情報の保護に関する基本方針」が閣議決定され,本格施行に向けて各府省は,所管する業界ごとのガイドラインを作成することになった。

放送分野を対象とした個人情報の保護に関しては,郵政省(現総務省)が1996年9月に策定した「放送における視聴者の加入者個人情報の保護に関するガイドライン」があるが,適用される対象が放送分野全体ではなく,BS放送のWOWOWやCS放送で顧客管理を行うスカパー,ケーブルテレビ事業者など,視聴する際に加入契約が必要となる事業者に限定され,衛星放送で通販番組を提供している委託放送事業者などは対象外となっている。こうした中,各業界で個人情報流出事件が相次ぎ,しかも委託放送事業者であるテレビ通販大手の顧客情報漏えいも判明し,総務省は今年3月,各放送事業者と放送関連の団体に対して個人情報保護の徹底を文書で要請した。

地上デジタル放送用受信機にインターネット接続機能が装備されるなど,今後,視聴者のインターネットを使ったアンケートへの参加や商品購入など,放送事業者に集まる視聴者の個人情報が膨大になると予想されること,相次ぐ個人情報流出事件で放送業界にも情報管理の徹底が求められること,などから総務省は今年5月,学識経験者ら6人で構成する「放送分野における個人情報保護及びIT時代の衛星放送に関する検討会」を設置し,議論を重ねてきた。検討会は8月13日,放送に関連する個人情報保護のあり方に関して「放送分野における個人情報保護の基本的な在り方について」をまとめ,その中で基本的な考え方や冒頭に記述した指針(案)などを公表した。検討会では今後,安全管理や本人の関与,苦情処理手続きなど具体的な対応策について12月までにまとめることにしている。

本指針は,個人情報保護法施行にあわせて来年4月1日から施行され,また,技術の進展や社会状況の変化などを踏まえ施行後1年をめどに見直される予定である。

東郷荘司