3)種子発芽と環境要因
雑草種子が休眠覚醒から発芽に至る内的変化の進行には温度,光,水分,ガス条件などの種子がおかれている土壌の環境要因が関与している(下図参照)。
温度の影響
土壌中の温度は,表層ほど温度較差が大きい。雑草の出芽深度は大部分5cm内外と浅層にある。このことから変温の効果が光条件に関係することと関連があることが理解できよう。一般に微粒種子は変温,光要求性が強く,大粒種は弱い傾向がある。光と変温が発芽に及ぼす例を下図に示した。
a:ホソムギ(ペレニアルライグラス) b:オオウシノケグサ(レッドフェスク) c:シラゲガヤ(ベルベットグラス)
d:Chenopodium rubrum
e:イ
f:オオアカバナ
○-○は明区(光照射18hrs),●-●は暗区,高温(22度),低温をこれより0-12度低くし暗期の6時間を低温とした場合の光と変温が発芽に及ぼす影響。
光の影響
光は多くの雑草種子の発芽に影響を及ぼすことが知られている。光反応性から明所で発芽しやすい種子を光発芽種子(light-sensitive seedまたはphotoblastic),暗所で発芽しやすい種子を暗発芽種子(light-hard seed),光要求性をもたない種子の3つに大別できる。
光要求性は絶対的なものではなく,温度,水分,ガス,種子の齢の進行によっても変化する。光の質によってことなり,吸水状態の胚における光受容体は赤色光をうけて近赤外光吸収型に転換され発芽を誘導する。耕起の後に雑草が一斉に発生するのは,埋土種子が地表面に移動し,種子が曝光することにより埋土種子が光依存型に変化するためである。
ガスおよびその他の物質の影響
発芽に影響するガス要因には酸素,炭酸ガス,エチレンなどがある。
1.低酸素条件下で良く発芽する雑草:コナギ,イヌホタルイなど
2.低酸素条件下で発芽が抑制される雑草:ヒメイヌビエ,オオイヌタデなど
3.低酸素・空中で良く発芽する雑草:タイヌビエなど
4.エチレンにより発芽が促進される雑草:アオゲイトウ,オナモミ,スベリヒユ,オオツメクサなど
酸素分圧が発芽に及ぼす影響(片岡ら,1978)