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だからこそ、エンタメと世間的には呼ばれるジャンルで普遍性を持ち続けているチャップリンは、すごいと思う。俺が中学生の頃、チャップリンの映画をいろんな名画座で観たんだけど、超満員だったから。笑いにはある種の連鎖反応もあるから、『街の灯』のボクシングのシーンなんて、映画館全体でドッカンドッカンとウケて、俺もおかしくって仕方なかった。それこそ酸欠になるぐらい笑った。その経験からも、チャップリンが全盛期の頃、いかに大衆に支持されてど真ん中にいたかが想像できたし、おそらく今後も普遍性を持ち続けるだろう。ちなみに、俺が劇場で笑った映画は、チャップリンと黒澤明監督の『生きる』と森田芳光監督の『家族ゲーム』しかない。

テレビに出て、残るものも作りたい。そんなことを考えている俺は、ここ数年「芸のないことをしてんなぁ」という意識がある。たとえば、『太田総理』で「憲法9条は守んなきゃダメだろ!」とストレートに言うことの芸のなさってなんだろうと。同じことを表現するのでも、テーマを奥に引っ込めて物語にしてみせるのがだろうって。そういう意味じゃ漫才よりもコントのほうが芸をしている感覚が強い。ま、でも、これはしょうがないっていうか成り行きだから。爆笑問題を結成してからしばらくして、コントから漫才に変えて以来の成り行きっていうね(笑)。

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「ぴあ」2010.8.9号より
文:唐澤和也
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