肝臓
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総説
アルコール性肝障害の現況
谷合 麻紀子
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2018 年 59 巻 7 号 p. 312-318

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抄録

わが国におけるアルコール総消費量は1999年をピークとして若干の減少傾向にあるが,女性の飲酒率,大酒家や問題飲酒者数は増加している.慢性的な過剰飲酒に起因する臓器障害で,最も高頻度かつ重篤なものの一つがアルコール性肝障害(alcoholic liver disease;ALD)である.ウイルス性肝炎の減少もあいまって,全慢性肝疾患におけるALDの比率は増加し臨床上の重要性が増大し,急性アルコール性肝炎は以前より重症例の救命率の低さが問題であった.禁酒治療では,抗酒薬に加え,飲酒欲求を抑制する新たな薬剤がわが国でも使用可能となった.アルコール性肝硬変では栄養療法や新たな利尿剤など保存的加療の進歩により,重症アルコール性肝炎も集学的治療の進歩により救命率は上昇し,ALD全体の予後は向上し,今後は長期生存例の肝発癌が危惧される.ALD症例では,人格,家庭環境,社会因子などの要素が複雑に絡み合い治療を困難にする場合も多く,個々の患者に対応した治療が求められる.

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© 2018 一般社団法人 日本肝臓学会
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