2月3日以降続いていた「血液検査の結果」シリーズは今回で終了です。
専門的用語が飛び交い、面白くなかったと思いますが、
「“琉球犬”の特徴」の説明として、ご容赦戴きたいと思います。
遺伝子頻度分析による“琉球犬”の認定
イヌの血液タンパク質遺伝子のうち、
多型を示した16座位の遺伝子について、
それぞれの犬種ごとに遺伝子頻度を調べて、
その遺伝子頻度から分散共分散行列を作り、
コンピューターで主成分分析を行いました。
データは分かりにくくなるので省略しますが、
この結果日本犬種は、下記の3種類に分けられました。
・北海道(アイヌ)犬と“琉球犬(山原系・八重山系)”、
西表在来犬、屋久島在来犬の集団
・韓国の珍島犬、済州島在来犬群と近い三河犬、山陰柴犬、対馬犬群の集団
・これらの中間に位置する多くの日本犬種の集団
特に、
・ イヌ血球ヘモグロビンA型遺伝子(HbA)
・ イヌ血球ガングリオシドモノオキシゲナーゼg型遺伝子(Gmog)
・ イヌ血漿プレトランスフェリンA型遺伝子(PtfA)
という3つの座位の遺伝子は、その分布から、
日本犬には朝鮮半島を経由して入ったに違いない、という結論に達しました。
さらにこれらの遺伝子頻度が朝鮮半島のイヌでは高く、
日本にいるイヌでは低いという結果が出ました。
これは、これらの遺伝子の流入前に、
その対立遺伝子を持ったイヌが、
既に日本にいたことを示す重要な手がかりだと思われるのです。
以上のことから、
日本最南端の“琉球犬”と、日本最北端の北海道(アイヌ)犬は、
縄文時代に縄文人に連れられて南方から来た、
古い型のイヌの子孫であると考えられるのです。
同時に、他の多くの日本犬種は、
南方由来のイヌと、弥生時代以降に弥生人および古墳時代人に連れられて、
朝鮮半島から来たイヌとの、
混血によって成立した犬群の子孫であると考えられます。
このように、イヌの遺伝子の導入ルートから、
日本列島へのヒトの渡来ルートも推定されるのです。
また、北サハリンの在来犬は、遺伝子分析の結果、
日本犬種の成立には直接関係が無いことも明らかになりました。
以上の結果から「血液検査」に基づいて、
・イヌ血球ヘモグロビンA型遺伝子(HbA)
・イヌ血球ガングリオシドモノオキシゲナーゼg型遺伝子(Gmog)
の朝鮮半島から浸透した遺伝子を保有しない在来犬を
“琉球犬”として認定することにしたのです。
琉球犬保存会による琉球犬血統書を交付した犬は、
全て純粋な南アジア系の遺伝子であるHbA、Gmogを持つもので、
今から13年前の平成5年12月当時で134頭を認定したのです。
当時認定された琉球犬で、
現在、生存が確認されているのは約20頭になりました。
現在は、それらの子や孫が主流となって引き継いでいるのです。
これらの純粋な血を絶やさないように後世に伝えたいと思っているのです。