神姫バス(兵庫県姫路市)の車体横の行き先表示がツイッターで話題です。「大丈夫!」との謎過ぎる表示があるようで、「面白すぎて写真撮り損ねた」「凄い」などネット上に数々の目撃談。確かめるべく、神姫バスが集まる駅前のバスロータリーに向かうと…ありました!
「大丈夫」の文字が躍るのは、バスの乗降口横のLED画面「行先表示器」。通常、停留所名が4つ並びますが、向かって右から「バス運転士→募集中→大型免許無でも→大丈夫!」。これって、求人広告じゃないですか!
■遊び心あふれるメッセージも
発案者は同社バス事業部営業課の宮本篤志さん。2017年8月から約1年間、回送中の車両には創立90周年の記念メッセージ「神姫バス→祝☆90周年→これからも→皆様と共に」を表示していた同社。周年期間の終了に伴い、「『回送』に戻すのはもったいない。何か変わったものが出せないか」という社内の声にひらめいたのが、先の「求人広告」だったそう。
宮本さんのアイデアは即採用され、8月第2週から運用が始まりました。表示を見たという人から応募もあり、「やわらかい文言が応募のハードルを下げたのでは」と採用担当者。
■鬼教官からのメッセージ?
取材を進めると、社内には宮本さんのアイデアを凌駕する人が。
新人運転士の教習バスのLED画面には「ただいま 心技体を 鍛えています by鬼教官」と表示されています。神戸市西区を中心に運行するグループ会社「神姫ゾーンバス」社長自らが発案したもので、「社風に少し遊び心を」と10月から導入。鬼呼ばわりされた教官の方の胸中が気になるところですが、社内の教官は皆優しい人たちだそうです。
この表示が見られるのは神戸市西区のごく一部のエリア。見つけるのが難しいレア表示といえそうです。
■「ももクロ」の次は
アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のイベント会場と駅を結ぶ臨時シャトルバスの「行先表示器」前面にマスコットキャラクターのイラスト、後面に「モノノフ集合だZ!」と表示し、ファンを喜ばせた同社は現在、人気アニメ「けものフレンズ」とコラボを実施中です。
JR姫路駅とサファリパーク「姫路セントラルパーク」を結ぶ直通バスでは、「けものフレンズ」仕様で表示。登場キャラクターのイラスト入りとあってファンの間で評判のようです。
通常、行き先表示は、社員が専用ソフトで文字を入力。手順は一般的なパソコンの文字入力とほぼ同じで、路線バス用なら30分もあれば完成するそうです。
しかしイラストの場合は、点をつなげて絵を描く「ドット絵」の手法。数にして6720もの小さな升目にマウスのクリックで点を打ち続ける地道な作業は、けものフレンズの場合、所要時間は48時間。
さぞや入力担当者は苦労したのでは、と思いきや、作業をしたのは、社内随一の“けもフレファン”という運行ダイヤ担当の男性社員。話を聞きつけ、部署の垣根を越え自ら“志願”。周囲が口を挟む間もないままに「尋常ではないこだわりで、ありえない“作品”が生まれました」(宮本さん)。
クオリティーの高さは本家「けものフレンズプロジェクト」のお墨付き。姫路セントラルパークでは、直通バスを降りた来場者が行き先表示を熱心に記念撮影する姿が、お約束になりました。
次はどんな行き先表示が登場するのか心待ちにする人も増えたのでは?
「ハードルは上がりましたが、弊社の認知度も上がればありがたいです。それと1人でも多く採用出来ればと思っています」
(ネクスト編集部 金井かおる)