薄濁りの「あったまりの湯」が、体の芯からぽっぽと温めてくれる

晴天時 駒ケ岳くっきり

 海に面した露天風呂の眺めは断然、男性上位。だって、眼下の海岸から女性風呂が見えたら一大事だもの。「晴れたら海の向こうにくっきり駒ケ岳が見えるんだ」。写真のモデル役を引き受けてくれた常連さんは、目を細めて教えてくれた。「今日なら夕日もいいはずだよ」

 撮影を終えて、筆者もひと浴び。確かに女性露天は目隠しの板塀に覆われている。だが見上げればカモメが翼をひらめかせ、深呼吸すれば潮の香り。時折、海岸をゆく室蘭線の列車の音が耳に届く。

 温泉は建物間近に湧出する鮮度抜群の食塩泉。泉温が50.5度あり、そのまま湯船に満たせば熱いため気温に応じてわずかに加水するが、寒い時期ならば源泉そのままを堪能できる。

 大窓から海が見える内湯は男女ともゆったりしており、高温湯と低温湯、サウナに水風呂も用意。ザバザバと源泉を吐く湯口の隣に水蛇口が並びチロチロと湯温を調える。これほど湯客に分かりやすい加水もないだろう。浴槽はすべて毎日湯抜き清掃されており、温泉の鮮度もとびっきり。飾り気はないが、真っ正直さが伝わる風呂なのだ。

 もともとは1990年に当地に開業した銭湯だったが、2010年にオーナーが代わって独自の経営を開始した。地元に親しまれた施設名だけはそのままにしたが、様変わりしたのは湯。翌11年に敷地内から見事な温泉を掘り当てたのだ。

 これだけの温泉で、湯代も普通の銭湯以下だ。聞けば公衆浴場の入浴料金の統制額が上がった際に、一度は他所と同じく440円(大人)にしたが、「家風呂のように通ってくださる年金暮らしのお客さまも多く、再び値下げしたのです」と管理部長の福井憲一さんはうなずく。

 幹線道路の国道37号からは1本海側の道道沿い。洞爺湖温泉など有名温泉地に近い伊達だが、こんな素朴な穴場湯もあるのだ。(旅行ジャーナリスト)

住所 伊達市舟岡町365の1
電話 0142・25・2626
泉質 ナトリウム-塩化物泉
日帰り入浴時間 正午~午後10時(大みそかと元日のみ午後8時閉店)
日帰り入浴料 大人400円、6~11歳140円、6歳未満70円
日帰り入浴定休日 無休
交通 道央自動車・伊達ICから車で約7分。JR北舟岡駅から徒歩約7分