第2回東京が「トンジン」と呼ばれたら 「キーウ」の発音はこう生まれた

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 ロシア軍のウクライナ侵攻が続く中、「キエフ」から「キーウ」へ、「チェルノブイリ」から「チョルノービリ」へと同国の地名表記を変更する動きが日本国内で広がりました。今回の言い換えの文化的背景と現地の言語事情をどう理解すればよいのか。ウクライナ語学とロシア語学が専門の東京外国語大名誉教授、中澤英彦さんに聞きました。

 ――早くからウクライナ語の地名や人名のカタカナ表記をめぐる提案をしてきたのはなぜですか。

 ウクライナは1991年のソ連崩壊とともに独立した、古い歴史のある「新しい」国です。旧東側諸国ではロシアに次いで人口が多く、東欧の隣国ポーランドと並んで大きな存在です。ウクライナ語の話者は世界各地に5千万人以上を数えます。ウクライナとウクライナ語をより深く、正確に理解するために、現地の発音により近い日本語の表記が必要だと考えていました。2009年に初版が出た著書『ニューエクスプレス ウクライナ語』(白水社)でウクライナの首都名の表記「キエフ」を「キーウ」としてはどうかと提唱しました。

100%正解とは言えないが

 ――「キエフ」を「キーウ」とすべき理由を教えてください。

 キエフはロシア語の発音をも…

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連載「キエフ」から「キーウ」へ 地名は誰のもの?(全3回)

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