金本位制から不換紙幣制度に至るまでの経緯が解説されている。物々交換から始まった経済は、より効率的にかつ便利に交換する媒介として、金や銀などの貴金属を使用し、その重さで供給者と需要者が物の価値を合意して交換する。やがて供給者と需要者がわざわざ貴金属を媒介せずに、受領証つまり貴金属に裏付けられた紙幣を流通させることによって決済する方法が編み出される。貴金属は貨幣倉庫(銀行)が預かり、経済活動では紙幣決済の受け渡しで決済するようになる。以上が自由社会による貨幣流通の始まりである。
ところが、政府による貨幣への干渉が始まると、民間の銀行にあった金は中央銀行に集約され、中央銀行が通貨発行権を独占し法定通貨制度を設けた。これは、国家という信用を前面に押し出し、勝手な信用創造で金の裏付けなく紙幣を野暮図に発行する事を許すことになり、金本位制をなし崩し的に崩壊させることを合法的に可能にするもので、経済にとって決して健全とは言えない。いわゆる部分信用銀行制度を銀行の経営体力に関係なく可能にするもので、預金者が預けたお金の大部分は金の裏付けのない紙幣となっており、もうこれは合法的な詐欺と同然である。国民が政府を信用し、国から「騙されている」内はこの制度は成り立つが、いざ預金の取り付け騒ぎが発生すると、裏付けのない紙幣発行が暴露されて経済崩壊する危うさをはらんでいる。
欧米でも19世紀から20世紀初頭までは金本位制であったが、第一次大戦の戦費調達のためのインフレ、戦後のイギリスのポンドの過大評価等によってまずは欧州が金本位制を止めざるを得なくなった。アメリカにおいては何とか金本位制を保っていたが、金の流出に耐えられなくなって、1971年のニクソンショックで変動法廷不換紙幣に移行し変動相場制となって現在に至る。
物々交換から変動相場制に至るまでの経緯を振り返ると、政府による貨幣制度への介入がインフレを引き起こして通貨の購買力を減じさせ、しかも政府中枢に近い者だけがインフレの恩恵を受けて、まじめに働く一般国民はインフレによるツケを払わされて、本来の正常な経済活動を歪めていることが良くわかる。政府は経済や通貨には介入せず、本来の責務たる「国防」「外交」に専念し「小さな政府」に徹することが望ましい。
しかし、第二次安倍政権ではアベノミクスと称して国債を大量に発行して中央銀行に引き受けさせ、莫大な財政出動を繰り返して株価が上昇し、一見して経済が回復したようにも見えるが、生産の裏付けのない紙幣を大量に刷った事により、紙幣の購買力が減少して国民の預金の価値を相対的に目減りさせた。それだけではなく、中央銀行(日銀)の財務状態を一著しく悪化させ、少しでも金利が上昇すれば民間銀行から預かっている当座預金の利払い額が、政府から引き受けた国債の運用利回り額を上回って逆鞘となる。この逆鞘の穴を埋めるため、価値の裏付け無く紙幣を刷ればハイパーインフレのきっかけとなる。
一方で、国の借金総額は1400兆円まで膨れ上がり、長期金利が上昇すると発行済の低金利の国債から上昇した金利の国債への乗り換えの動きが加速する。しかし、発行済の国債を政府が買い戻すには新たに借り換え用の国債を発行して日銀に引き受けてもらう必要があるが、日銀にはその余力はなく、裏付けのない紙幣の大量発行で賄わざるを得なくなる。これもハイパーインフレのきっかけとなる。
以上を考えると、アベノミクスの経済政策は一部の政府寄りの既得権益者には恩恵をもたらしたが、何も知らない一般国民はそのツケを払わされている。完全な失政だったと言わざるを得ないのである。かねてから私は政府の財政再建として複式簿記を導入し、無駄遣い排除のための外部監査導入を主張してきた。後世にツケを回さず、国民負担を最小限を抑えるためにも、財政出動によるばら撒きを即刻止めて財政再建に着手すべきであると考える。
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政府はわれわれの貨幣に何をしてきたか Kindle版
新オーストリア学派でリバタリアンのロスバードの貨幣論。
現在のほとんどの国の政府は無価値の「偽造」紙幣を発行し、人々の財産を奪っている。そしてより多くの財産を奪うには紙幣を増刷すればいいので、どの国もインフレに向かう傾向があるのだ。
本書によって、貨幣の成り立ちから、政府がどのようにして貨幣を支配するようになったのかを理解することができる。
そして、欧米の経済政策はもちろんのこと、日本政府の「アベノミクス」の正体も明らかになる。本書は、アベノミクスに論理的に反論できる国内唯一の本であり、本書を読めばその結末もおのずから明らかになる。
<目次>
Ⅰ.序論
Ⅱ.自由社会における貨幣
1.交換の価値
2.物々交換
3.間接交換
4.貨幣の利点
5.貨幣の単位
6.貨幣の形
7.私的な硬貨鋳造
8.「適切」な貨幣供給
9.「退蔵」の問題
10.物価水準を安定させる?
11.共存する貨幣
12.貨幣倉庫
13.要約
Ⅲ.政府の貨幣への介入
1.政府の歳入
2.インフレーションの経済的影響
3.鋳造の強制的な独占
4.貨幣価値の引き下げ
5.グレシャムの法則と貨幣鋳造
a.複本位制
b.法定通貨
6.要約:政府と貨幣鋳造
7.銀行の支払拒絶を許可する
8.中央銀行:インフレーションの抑制を除去する
9.中央銀行:インフレーションへ導く
10.金本位制を停止する
11.法定不換紙幣と金の問題
12.法定不換紙幣とグレシャムの法則
13.政府と貨幣
Ⅳ.欧米の金融崩壊
1.第1段階:古典的金本位制度、1815-1914年
2.第2段階:第一次世界大戦とその後
3.第3段階:金交換本位制度(イギリスとアメリカ)、1926-1931年
4.第4段階:変動法定通貨、1931-1945年
5.第5段階:ブレトン・ウッズ体制と新しい金交換本位制度(アメリカ)、1945-1968年
6.第6段階:崩壊するブレトン・ウッズ体制、1968-1971年
7.第7段階:ブレトン・ウッズ体制の終焉:変動法定通貨、1971年8-12月
8.第8段階:スミソニアン協定、1971年12月-1973年2月
9.第9段階:変動法定通貨、1973-?年
訳者あとがき
現在のほとんどの国の政府は無価値の「偽造」紙幣を発行し、人々の財産を奪っている。そしてより多くの財産を奪うには紙幣を増刷すればいいので、どの国もインフレに向かう傾向があるのだ。
本書によって、貨幣の成り立ちから、政府がどのようにして貨幣を支配するようになったのかを理解することができる。
そして、欧米の経済政策はもちろんのこと、日本政府の「アベノミクス」の正体も明らかになる。本書は、アベノミクスに論理的に反論できる国内唯一の本であり、本書を読めばその結末もおのずから明らかになる。
<目次>
Ⅰ.序論
Ⅱ.自由社会における貨幣
1.交換の価値
2.物々交換
3.間接交換
4.貨幣の利点
5.貨幣の単位
6.貨幣の形
7.私的な硬貨鋳造
8.「適切」な貨幣供給
9.「退蔵」の問題
10.物価水準を安定させる?
11.共存する貨幣
12.貨幣倉庫
13.要約
Ⅲ.政府の貨幣への介入
1.政府の歳入
2.インフレーションの経済的影響
3.鋳造の強制的な独占
4.貨幣価値の引き下げ
5.グレシャムの法則と貨幣鋳造
a.複本位制
b.法定通貨
6.要約:政府と貨幣鋳造
7.銀行の支払拒絶を許可する
8.中央銀行:インフレーションの抑制を除去する
9.中央銀行:インフレーションへ導く
10.金本位制を停止する
11.法定不換紙幣と金の問題
12.法定不換紙幣とグレシャムの法則
13.政府と貨幣
Ⅳ.欧米の金融崩壊
1.第1段階:古典的金本位制度、1815-1914年
2.第2段階:第一次世界大戦とその後
3.第3段階:金交換本位制度(イギリスとアメリカ)、1926-1931年
4.第4段階:変動法定通貨、1931-1945年
5.第5段階:ブレトン・ウッズ体制と新しい金交換本位制度(アメリカ)、1945-1968年
6.第6段階:崩壊するブレトン・ウッズ体制、1968-1971年
7.第7段階:ブレトン・ウッズ体制の終焉:変動法定通貨、1971年8-12月
8.第8段階:スミソニアン協定、1971年12月-1973年2月
9.第9段階:変動法定通貨、1973-?年
訳者あとがき
- 言語日本語
- 発売日2013/4/13
- ファイルサイズ509 KB
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商品の説明
著者について
岩倉竜也(いわくらたつや) 1962年生まれ。自称リバタリアン。著書に「ロスバード入門」(デザインエッグ社)があり、主な訳書にハンス・ヘルマン・ホッペ「私有財産の経済学と倫理学(第一部)」、マレー・N・ロスバード「新しい自由のために」、同「力と市場」(いずれもデザインエッグ社)などがある。
登録情報
- ASIN : B00CCSK1RA
- 出版社 : きぬこ書店; 第1版 (2013/4/13)
- 発売日 : 2013/4/13
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 509 KB
- 同時に利用できる端末数 : 無制限
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 112ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 101,694位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 45位経済思想・経済学説 (Kindleストア)
- - 5,654位投資・金融・会社経営 (Kindleストア)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年1月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
お金は政府が作り出すものではない。個人が自発的な取引を通して選び取るものなのだ。政府による通貨発行の独占を打破しないかぎり、健全な経済は取り戻せないと説く、革命的著作。「政府は経済のために貨幣を生み出す力はない。貨幣は自由市場の過程によってのみ発展することができる」
2017年9月27日に日本でレビュー済み
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通貨の歴史と本質を描くロスバードの名著。
分かりやすく、素晴らしい。
翻訳は、ブラシアップの余地があると思う。
原著に忠実に訳そうとする訳者の配慮だと思うが、ときおり翻訳にぎこちなさがある。
分かりやすく、素晴らしい。
翻訳は、ブラシアップの余地があると思う。
原著に忠実に訳そうとする訳者の配慮だと思うが、ときおり翻訳にぎこちなさがある。
2022年8月21日に日本でレビュー済み
世界各国政府がコロナや戦争を口実に異次元金融緩和を正当化しインフレを引き起こしている2022年の今こそ読まれるべき一冊
個人的にはミーゼスやハイエクよりもロスバードの理論の方が説得力があると感じる
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2020年4月7日に日本でレビュー済み
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金融緩和、財政拡大の行き着く先を知りたくて、この本を読みましたが、通貨制度の歴史を通して理解は深まりました。ただ、他のレビューにもあるように翻訳の文章に難があり消化不良です。意訳されて分かり本が出版されるといいですね。