遅刻はやはり吉兆だった。黒星発進となったフィリーズとのワールドシリーズ第2戦(29日)でヤンキースの松井秀喜外野手(35)が値千金の決勝アーチを放った。同シリーズでの本塁打は2003年のマーリンズ戦に続き通算2本目。同点の6回、好投のフィリーズ先発ペドロ・マルチネスから右翼スタンドへ運んだ。3打数2安打と気を吐いた松井の活躍でチームは3−1で勝ち、1勝1敗とした。第3戦は舞台を敵地フィラデルフィアに移し、31日に行われる。
1−1の6回2死で迎えた第3打席。カウント2−1から粘り、5球目の低く沈むカーブをすくい上げ、右翼席へ勝ち越しソロ。ポストシーズンでは地区シリーズ第1戦以来、通算8本目の一撃で、前日の完敗で意気消沈していたチームをよみがえらせた。
「とにかく勝ってうれしい。貴重なホームランになったと思うので良かった。2球続けてカーブが来た。ちょっとインコースよりに入ってきて見送ればボールだと思うけど、うまく対応できた」
かつて宿敵レッドソックスのエースだったマルチネスに対し、チームは苦戦。松井も過去のレギュラーシーズンで打率.143だったが、この日は一人、光った。0−1の2回には右前へチーム初安打。4回は四球で出塁した。6回の松井の本塁打をきっかけに、チームは7回に連打を浴びせ、マルチネスをマウンドから引きずり下ろした。
松井の一発には予兆があった。この日、高速道路の出口封鎖で交通渋滞に巻き込まれ、約30分遅刻して球場入り。「昔から遅刻したときは打つ」と公言してきた松井のジンクスは大一番でも生きていた。
試合はヤンキースの先発A・Jバーネットが7回1失点と好投。不安定なブルペン陣を飛ばして8回からクローザーのリベラが登板し、締めくくった。
チームは1勝1敗のタイに持ち込み、第3戦はDHのない敵地へ。「接戦をものにして、いい形でフィラデルフィアに行ける。(第3戦以降は)どういう場面で声が掛かってもいいように、しっかり準備する」。ワールドチャンピオンを目指し、今季初めて守備につく可能性はまだ残っている。
【「遅刻したつもりない」松井に聞く】
−−遅刻について
「遅刻したつもりないんで、わからない(笑)あれは星稜高校のルールでは遅刻じゃないんだよ。確かに渋滞には巻き込まれたけど、誰も気づいてなかったと思う。え、反省? 昔からしてない」
−−巨人時代も遅刻したときほど打つと言っていたが
「いやほら、してないと思ってるから」
−−大リーグでもオールスターとワールドシリーズ両方で遅刻した選手はあまりいないようだが
「いやだから、してないって言ってるでしょ、しつこいね君たち」
−−ある意味、歴史を作ってると思わないか
「歴史を作ってるのは、君たちでしょ」
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