ペロシ米下院議長が台湾を訪問、議会で演説 中国は「極めて危険」と非難

動画説明, ペロシ米下院議長は2日深夜、台湾に到着した

アメリカのナンシー・ペロシ下院議長が2日深夜、台湾を訪問した。過去25年間で最も高位の米政治家による訪台で、中国は「極めて危険」な行動だと非難した。ペロシ氏は3日、台湾の立法院(議会)で演説した。

ペロシ氏は下院議長として、大統領権限の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職にある。長年にわたって中国を批判してきた政治家としても知られる。

3日には台湾の立法院で演説。アメリカと台湾の議員同士の交流を活発化させたいと述べた。また、台湾は「世界有数の自由な社会」だとした。

台湾メディアによると、ペロシ氏は同日、蔡英文総統らと会談の予定。

今回の訪台を受け、中国は声明を発表。「火遊びをする者は、それによって滅びるだろう」とペロシ氏に警告した。

また、中国外務省はペロシ氏の訪台に抗議するため、アメリカのニコラス・バーンズ駐中国大使を召喚した。

中国商務省は3日午前、台湾からのかんきつ類、2種類の魚の輸入と、台湾への砂の輸出を直ちに禁止すると発表。前日も、ビスケットや菓子類などを制裁の対象にするとしていた。

台湾にとって中国は、最大の貿易相手国で、輸出の3割近くを占めている。

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画像説明, ペロシ氏(右)は3日午前、台湾の立法院を訪れた

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中国軍機が台湾周辺を飛行

一方、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は、「この訪問が危機や紛争に拍車をかけるものとなる理由はない」と述べた。

カービー報道官はペロシ氏の台湾到着後、今回の訪問はアメリカの長年の対中政策に沿ったもので、中国の主権を侵害するものではないと、記者団に繰り返し述べた。

ペロシ氏が乗った航空機が台湾に着陸したのと同じころ、中国国営メディアは、中国軍機が台湾海峡を横断したと報じた。台湾は当時、この報道を否定したが、その後、20機以上の中国軍機が2日に、台湾が設定している防空識別圏に進入したと発表した。

中国は台湾を、やがて統一される分離した省とみなしている。ペロシ氏の訪台についてはこれまで、中国軍が「ただ黙っていることはない」と警告してきた。

ペロシ氏の到着から1時間もたたない内に、中国は人民解放軍が台湾周辺の空と海で今週末、実弾軍事訓練を実施すると発表。当該地域に船舶や航空機が入らないよう求めた。

中国はペロシ氏の訪台の数日前から、軍用機を中国と台湾の非公式な境界線となっている中間線付近まで飛行させており、緊張が高まっていた。

「アメリカと台湾の連帯が重要」

ペロシ氏は台湾への到着前に声明を発表。今回の訪問は「台湾の活力ある民主主義を支援するというアメリカの揺るぎない約束」を尊重するものだとし、アメリカ政府の方針と矛盾しないと主張した。

声明ではまた、「世界が独裁と民主主義との間で選択を迫られているなか、台湾の2300万人とアメリカがいま連帯するのは、かつてないほど重要だ」とした。

この声明が出されたのと同じタイミングで、米紙ワシントン・ポストはペロシ氏の寄稿を掲載。その中で同氏は、台湾の「強固な民主主義が(中略)脅かされている」と書いた。

また、「中国共産党が攻撃を加速させる中での私たち議会代表団の訪問は、アメリカが台湾を支持していることの明確な表明と見なされるべきだ。台湾は民主的なパートナーであり、自らと、自らの自由を防衛している」とした。

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画像説明, 台北市内でペロシ氏の訪問に賛成するデモをする人たち。市内では訪台に反対するデモも繰り広げられた

ペロシ氏の台湾訪問は、数日前から国際的に大きな話題となっていたが、直前まで秘密裏に進められた。

ペロシ氏が7月31日にアジア歴訪に出発した際には、公式日程の訪問先にシンガポール、マレーシア、韓国、日本などが挙がっていたが、台湾はなかった。

米政府は、ペロシ氏の訪台への反対を公然と表明。ジョー・バイデン大統領は、米軍が「良い考えではない」とみていると述べていた。

しかし、ペロシ氏が台湾に到着すると、NSCのカービー報道官は今回の訪台について、他の高官による過去の訪台と同様だと米CNNで説明。

「紛争に発展する理由はない。私たちの政策に変更はない。これは完全に一貫している」と述べた。

また、中国からの強い反応について、「アメリカは脅しに屈しない」と述べた。

米政府を取材するBBCのジョン・サドワース記者は、通常ならペロシ氏を支持しないであろう共和党の反対派からも、今回の訪台は超党派の支持を集めているようだと伝えた。

共和党のダン・サリヴァン上院議員は、「アメリカの指導者が訪問できる場所とできない場所を、中国共産党に指図してもらいたくはない」、「彼女はそこにいるし、私たちはこの訪問を支持し、彼女の後ろ盾となる」と述べた。

台湾と国際関係

中国は「一つの中国」原則を受け入れるよう、他国に国際的な圧力をかけている。台湾と正式な外交関係を結んでいるのは世界で15カ国しかない。

アメリカの長年の政策は、北京の中国政府を承認する一方で、台湾と「強固で非公式な」関係を維持するというものだ。これには、台湾の自衛のための兵器売却も含まれる。

ペロシ氏は長年、中国を批判してきた。

天安門事件の2年後の1991年には、下院議員として天安門広場を訪問。中国政府の弾圧で亡くなった人々を追悼する横断幕を広げ、同政府を怒らせた。