*** 別姓訴訟を支える会通信バックナンバー ***

第35号 2014年3月14日発行

【判決期日迫る! いよいよ高裁判決です】
【声の紹介】
【お知らせ】
【2013年度 別姓訴訟を支える会 会計報告】

第34号 2014年1月15日発行

【控訴審判決期日は3月28日に決定!】
【控訴審 第2回口頭弁論 12月20日】
【控訴審を傍聴して】
【お知らせ】

【控訴審 第2回口頭弁論 12月20日】
                             川見未華
 原審において、控訴人らは、民法750条が憲法及び条約に反するこ とを主張した上で、国会議員がそれを改廃しないという立法不作為は国 家賠償法上違法の評価を受けるべきものであることを主張してきました。 これに対して、原判決は、民法750条の合憲性についての判断を回避 し、国賠法上の違法性の判断枠組につき、独自の基準を定めた上で、国 賠法上違法であるか否かの審査に限定して審理しました。
 しかしながら、立法不作為による権利侵害の国家賠償訴訟では、立法 不作為の合憲性についてまず審査がなされるべきであり、民法750条 の合憲性の審理を回避した原判決は、重要な争点に関する判断を遺脱し たものです。
 このことは、これまでの最高裁判例をはじめとした判断を見ても明ら かです。
 控訴人らが国賠法上の違法性の判断枠組みを定めるにあたり依拠し、 原判決も引用している最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決では、 立法(不作為)の違憲性と国賠法上の違法性とは異なることを前提として、 国賠法上の違法性の判断を行う前に、まず、在外選挙制度の不存在・不 備が在外国民の選挙権を侵害して違憲であることの判断を行いました。
 精神的要因による投票困難者の選挙権に関する最高裁平成18年7月 13日判決では、泉徳治裁判官が、立法(不作為)の違憲性と国賠法上の 違法性とは異なることを前提にした補足意見を示しました
。  住民票記載義務づけ等請求事件に関する最高裁平成25年9月26日 判決では、国賠法上の違法性を判断する前提として、戸籍法49条2項 1号の合憲性の審査を行いました。
 受刑者の選挙権の行使を認めていない公職選挙法11条1項2号の違 憲性が争われた国家賠償訴訟では、国家賠償請求を退けた大阪地裁判決、 国家賠償請求を認めた大阪高裁控訴審判決ともに、平成17年判決の論 理に忠実にしたがい、最初に公職選挙法11条1項2号の合憲性につい て審査しました。
 このように、17年最高裁判決の審査方法は、その後の判例、裁判例 にも踏襲されています。民法750条の合憲性の審査を回避した原判決 は、重要な争点についての判断を遺脱していることは明らかです。


第33号 2013年12月3日発行

【東京高裁 第2回口頭弁論期日】
【東京高裁 第1回口頭弁論 10月25日】
【戸波江二早稲田大学大学院法務研究科教授の意見書の解説】
【衆・法務委員会で維新の高橋議員が夫婦別姓の質問 11月13日】

【東京高裁 第1回口頭弁論 10月25日】
                             寺原真希子
 原判決は、控訴人らの主張に真正面から向き合わず、重大な誤りを多 数犯しているものであって、取消を免れない。

 第1に、原判決は、民法750条の合憲性についての判断を回避した。  しかし、国家賠償請求訴訟において立法不作為の違法性が争われる場 合、その立法又は立法不作為の違憲性及びその程度の審査は必要不可欠 であり、国家賠償法上の違法性の審査の前にまず当該法律の合憲性審査 が行われるべきである。

 第2に、原判決は、控訴人らの主張していない「婚姻に際し、婚姻当 事者の双方が婚姻前の氏を称する権利」が憲法上保障されているかにつ き審理している。しかし、控訴人らが主張してきたのは「氏の変更を強 制されない自由」が憲法13条によって保障され「婚姻の自由」などが 憲法24条によって保障されるということである。原判決は「氏の変更 を強制されない自由」については不当に検討対象を狭め、「婚姻の自由」 などについては検討そのものを放棄しており、審理不尽は著しい。

 第3に、女性差別撤廃条約について、原判決は、同条約16条1項 (b)及び(g)が、「我が国の個々の国民に対し、直接、権利を付与 するものということはできない」などと述べるが、この判断は、女性差 別撤廃条約の性質を誤解するものである。同条約の締約国の国民は、差 別により権利を侵害された場合は司法的救済を求めることができる(同 条約2条(c))。裁判所としては、まず、民法750条が女性差別撤廃条約 違反にあたるかを判断する必要があったにもかかわらず、原判決は、こ の判断を不当に回避している。

 控訴人らが求めてきたのは、本来の姓のまま法律婚をしたいという、 ただそれだけである。憲法にも条約にも明白に反している民法750条 が、あまりに長期にわたり、それを阻んでいる。裁判所においては、民 法750条の違憲性を直視した上で、適切な判断を下されたい。


第32号 2013年9月28日発行

【東京高裁控訴審口頭弁論期日】
【最高裁 婚姻届出不受理処分の取消訴訟で上告を棄却 9月10日】
【最高裁 婚外子相続分規定に違憲判断 9月4日】
【インフォメーション】

【最高裁 婚姻届出不受理処分の取消訴訟で上告を棄却 9月10日】
                             小島延夫
 夫婦別姓で婚姻届を出したところ、それが受理されなかったので、不 受理の違法性を争うために、不受理処分の取消しを求める行政訴訟を提 起している件で、最高裁判所第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は、201 3年9月10日、このような訴えはできないとした、第一審の東京地方 裁判所、控訴審の東京高等裁判所の判決に対する上告に対し、憲法上の 問題はないとして、上告棄却等の決定をしました。
 婚姻届の不受理に対し争う制度は、現在、戸籍法で、家庭裁判所の審 判に限定しています。家裁の審判は、非公開で、かつ、裁判所で意見を 口頭で述べる審尋という手続を開くかどうかも任意となっています。つ まり、公開の法廷での口頭弁論はなく、裁判所が直接、当事者の意見を 聞く機会も保障されていません。
 憲法32条と82条は、公開の法廷で裁判を受ける権利を保障してお り、その意味として、最高裁は、法律上の実体的権利義務自体につき争 いがある場合には公開の法廷における審理が保障されるべきとしていま した。この問題は、国家賠償請求以外に夫婦別姓を争う機会を切り開く という意味で重要です。
 しかしながら、最高裁は極めて簡単に、本件は憲法上の問題でないと して上告棄却しました。上告から1年9ケ月検討したので、実際にはい ろいろ検討していると思いますが、この結果はきわめて残念です。
 今後は、家事審判含め検討せざるをえないかもしれません。


第31号 2013年8月28日発行

【東京高裁控訴審口頭弁論期日】
【控訴理由書を提出! 7月31日】
【弁護団がさらにパワーアップ!】
【支える会からのお願い!】

【原判決の問題について】
                             弁護団長 榊原富士子
 7月31日まで週1回の会議を重ね、同日、控訴理由書を裁判所に提 出しました。高等裁判所に不服を申し立てた理由を主張する書面です。 原告の皆さんも猛暑の中、よく会議に参加してくださいました。簡単に ご紹介します。
 原判決全体の問題点、氏の変更を強制されない自由(憲法13条論)、 婚姻の自由(憲法24条論)、2つの自由の二者択一という特殊性、国 家賠償法1条1項の違法性、条約違反の立法不作為の違法性、という順 で構成しました。
 原判決は民法750条の合憲審査を直接にはせず回避したので、これ をまずすべきという主張を強く打ち出し、2つの自由権論を国賠法より も先に展開しました。支える会サイトにアップしている理由書で「原判 決の問題点」をお読みいただくと、非常に理解するのが難しい原判決の 問題点がうっすらとおわかりいただけるのではと思います。
 立法不作為違法の基準の先例となる平成17年最高裁判例は、法律の 合憲審査を先にして、それを踏まえて国賠法上の違法性判断をしていま す。
 また、原判決が、原告の主張しなかった「婚姻に際し、婚姻当事者の 双方が婚姻前の氏を称する権利」という狭めた権利をもってきて国賠法 の審理の対象にしたのは、立法不作為の違法性を非常に狭く解した昭和 60年最高裁判所判例に戻っているからである点を批判しました。
 氏の変更を強制されない自由や婚姻の自由については、地裁での主張 と基本的に変わりありません。主張はいつもオープンにしていますので、 きたんのないご意見やアドバイスをいただければと思います。
 また控訴審でお会いできることを楽しみにしております。


第30号 2013年7月18日発行

【東京高裁控訴審期日が決定!】
【判決についての感想】
【旧姓使用権裁判 和解成立 6月3日】
【男女共同参画局が意見募集!】
【『時の法令』7月15日号に「別姓訴訟―立法不作為を問う!」】

第29号 2013年6月18日発行

【東京地裁、原告の請求を棄却!6月11日控訴】
【東京地裁で棄却の判決を受けて】
【判決を憲法の観点から見る】
【判決を条約の観点から見る】
【国家賠償請求について】
【判決に落胆、でも多くの方の応援を実感】
【判決に対する原告5人、それぞれの思い】
【カンパのお願い】

【東京地裁で棄却の判決を受けて】
                             弁護団長 榊原富士子
■残念な結果を受け、控訴審へ
 残念な結果でした。しかし、別姓訴訟をここまで支えてきてくださっ た多くの皆様、本当にありがとうございました。提訴から2年3か月、 皆で元気に訴訟を続けることができたのは、皆様の励まし、応援、祈る ような切実な期待があってのことでした。多分、この裁判は最高裁判所 まで、そしてもし日本が選択議定書を批准すれば国連への提訴まで続く でしょう。そんなに時間がかかっては困るという悲壮な声もあります。 控訴審も急ぎつつ、しっかりとやっていきたいと思います。

■違憲の明白性という高いハードル
 国会議員の立法不作為の違法性を問う形で提訴せざるをえなかったの で、単なる「違憲性」ではなく「違憲の明白性」という違法性基準の異 常に高いハードルを突破しなければなりませんでした。判決が、原告が 主張した「氏の変更を強制されない自由」にも「婚姻の自由」にも一切 触れず、「婚姻に際し、婚姻当事者の双方が婚姻前の氏を称することが できる権利」という他国の憲法で聞いたことのない名称の「権利」を判 決の中で観念せざるをえなかったのも(ここは被告の主張に依拠しすぎ てある意味では迷走?)、立法不作為をターゲットにする訴訟だからと いう点があります。しかし、その珍しい名称の上記権利ですら、判決は 「憲法が保障する権利に含まれるか明白とはいえない」と言ったにすぎ ず、「憲法上保障されない」と断言したのではありません。判決文が難 しいので、「民法750条は合憲」との報道もありましたが正確ではあ りません。ましてや「氏の変更を強制されない自由」については、判決 は保障していないと言っておらず、「人格権の一内容を構成する氏名に ついて、憲法上の保障が及ぶべき範囲が明白であることを基礎づける事 実は見当たらない」と述べているだけなのです。1947年の立法時か ら違憲の疑いを論じる学者もおられたのですから、66年経た今、「違 憲の疑いが生じている」くらいは、判決理由中で述べて欲しかったとい うのが率直なところです。

■改姓の不利益を認めた判決
 しかし、民法750条の立法目的について、かつての判決では夫婦の 一体感の確保と説明されることがありましたが(東京地判平成5年11 月19日の通称使用判決もそうです)、本判決では、「(国会の審議で は)ファミリーネーム』として個々人を表すという意味での氏が必要と 考えられたことを理由とする説明がされたにとどまり、婚姻制度に必要 不可欠のものであるとも、婚姻の本質に起因するものであるとも説明さ れていない」との事実を認めたこと、また、「氏を変更することにより、 人間関係やキャリアの断絶などが生じる可能性が高く、不利益が生じる ことは容易に推測し得る」と認めた点には、十分に着目して欲しいと思 います。これらは、今後、原告らにとっての力になると思います。 難しい裁判ですが、今後ともご支援をどうぞよろしくお願いいたします。


第28号 2013年5月9日発行

【判決日迫る! いよいよ地裁判決です。】
【参議院内閣委員会で糸数慶子議員が夫婦別姓について質問】
【「時の法令」に夫婦別姓の世論調査を分析】


第27号 2013年3月31日発行

【mネットの院内集会に 別姓訴訟を支える会が賛同・参加】
【mネットが民法改正を求める院内集会を開催 3月8日】
【参加者の感想】
【別姓訴訟を支える会富山での記念講演のご報告】
【2012年度 別姓訴訟を支える会 会計報告】

【別姓訴訟を支える会富山での記念講演のご報告】
                             弁護団 川見未華
 2月24日、別姓訴訟を支える会富山の総会での記念講演において、 別姓訴訟に関するお話をする機会をいただきました。そこで、私が弁護 団からの派遣員として、これまでの訴訟の経過や双方の主張、争点など についてお話をしてきました。講演当日は雪が降っていましたが、50 名程度の方が参加してくださいました。別姓訴訟を支える会富山は、原 告の一人である塚本協子さんのご活動と信念に賛同した方々が結成した 会です。当日は、総会・講演会の前に、支える会富山の方々と昼食をご 一緒させていただく機会もあり、会の皆さんが塚本さんのまっすぐな思 いに共感し、応援しながら、夫婦別姓を待ち望んでいるご様子を肌で感 じることができました。
 長い間信念を貫き闘い続ける塚本さんのお姿は、富山出身の私にとっ ても誇りであり、別姓訴訟に向けた最高の活動源になっています。寒い 雪の日でも決して変わらぬ富山の皆さんの熱い思いを実現できる日が来 るよう、弁護団一同、ますます頑張っていきます。


第26号 2013年2月21日発行

【5月29日に判決へ】
【結審、いよいよ判決へ!】
【傍聴してくださった方の感想】
【内閣府が、選択的夫婦別姓制度などの世論調査の結果を発表
                                60歳未満が民法改正に賛成多数】

【第7回口頭弁論で原告全員への本人尋問】
                             弁護団事務局長 打越さく良
 傍聴ありがとうございました!
 1月30日、第8回口頭弁論期日に、多くの方に傍聴していただきま して、有難うございました。この日、結審(審理の終結)となりました。 結審後は、裁判所が、これまでの主張書面や証拠(原告からの書証は甲 第91号証に及びました!)に基づいて、判決を書きます。 原告からの準備書面(7)〜(9)のうち、(9)では、原告本人尋問 の結果を踏まえ、夫婦同姓しか認めない民法のもと被っている原告の損 害をまとめました。
 大谷美紀子弁護士が、準備書面(7)の要旨を陳述し、裁判所に対し、 被告による難解な議論に惑わされることなく、女性差別撤廃条約の締約 国として日本国が負う差別的法規の改廃義務を立法機関である国会が果 たさない以上、原告らに救済を与える判断をすべきであると訴えました。 中川武隆弁護士が、準備書面(8)の要旨を陳述しました。原告が根拠とする平成17年判決は被告が持ちだす昭和60年判決を実質的に変更 したことを直視すべきです。さらに、女性差別撤廃条約により国が民法 750条を改廃する義務を負う点を、国会の立法不作為の違法性が顕著 であることの根拠として強調しました。

学者の書面尋問申請は不採用
 日本の裁判所において、女性差別撤廃条約16条1項(b)及び(g) の規定が、立法不作為に基づく国賠訴訟の根拠となりうることを立証す る目的で、学者に対する書面による尋問の申出を行いました。しかし、 裁判所は、法的論点に関する意見であること等から、採用しませんでし た。原告が提出した文献で理解している、この裁判体(3月に裁判官は 異動することが多いです)で判決を書きたいという趣旨と肯定的に考え たいです。

いよいよ判決期日
 次回期日はいよいよ判決です。5月29日午前11時東京地方裁判所 103号法廷です。是非傍聴してください。その後、報告会、交流会を 予定しています。「勝訴」の喜びを分かち合いたいと切に祈っています。


第25号 2013年1月24日発行

【選択的別姓制度実現の弾みになる一審判決を期待!】
【今年は地方裁判所の判決が出る年です。】
【長い裁判になります。2年間の一体感は私たちの財産です。】
【夫婦別姓訴訟弁護団、総勢15人】
【2012年 法廷の記録】
【今後の期日予定】

【2012年 法廷の記録】

 昨年は国賠訴訟の口頭弁論が4回行われました。
 2月 8日 国賠訴訟東京地裁第4回口頭弁論
 5月 9日 国賠訴訟東京地裁第5回口頭弁論
 7月11日 国賠訴訟東京地裁第6回口頭弁論
10月10日 国賠訴訟東京地裁第7回口頭弁論(原告本人尋問)

 行政訴訟は、2011年12月6日に最高裁に上告し、昨年1月26日 に上告理由書を提出しました。


第24号 2012年12月29日発行

【来年1月30日の第8回口頭弁論に向けて 準備書面(7)(8)の解説】
【安倍内閣 女性閣僚わずか2人】
【衆院選で女性議員が大幅減の38人に】
【今後の期日予定】

第23号 2012年11月16日発行

【第7回口頭弁論、原告本人尋問の特集2】
【女性差別撤廃委員会に政府とNGOがフォローアップ報告書提出】
【今後の期日予定】

第22号 2012年10月22日発行

【第7回口頭弁論で原告全員への本人尋問】
【本人尋問の意味】
【弁護団による解説 各原告への尋問のポイント】
【本人尋問を終えて 原告の感想】
【今後の期日予定】

【第7回口頭弁論で原告全員への本人尋問】

 夫婦別姓訴訟の第7回口頭弁論が10月10日、東京地方裁判所10 3号法で開かれました。90人を超える傍聴の方々に見守っていただき、 原告も弁護団も大きな力を得て、訴訟最大の山場である原告本人への尋 問を終えることができました。傍聴の皆さま、ありがとうございました。 原告、弁護団の皆さま、お疲れさまでした。
 支える会通信は今号と次号、本人尋問の報告の特集として弁護団によ る解説、原告、傍聴者の感想をお伝えします。
 閉廷後に衆議院第二議員会館で開いた報告&交流会にも定員を超える 70人が集まりました。原告、弁護団、支える会の会員をはじめ、支え る会・富山から15人、あいち別姓の会から5人、夫婦別姓選択制をす すめる会の方など、各地で夫婦別姓法制化を求めて活動している方々と、 傍聴と交流の一日をともにしました。


第21号 2012年9月22日発行

【 国賠訴訟 第7回口頭弁論】
【進行協議期日で証人尋問について協議】
【mネットが民法改正をテーマに院内集会】
【旧姓使用権訴訟で支援団体が署名活動開始】
【国会議員への働きかけ、具体的方法】
【別姓訴訟が紹介されました!】

【進行協議期日で証人尋問について協議】
                             弁護団 寺原真希子
○訴訟の進行を三者が協議
 9月5日午前11時より、東京地方裁判所で進行協議期日が開かれま した。進行協議期日は、非公開の法廷で、裁判所、原告代理人及び被告 代理人の三者が、今後の訴訟の進行について協議を行うための期日です。

○研究者の尋問ができるかは継続協議
 まず、原告より申請していた3人(民法学者の二宮周平教授、女性差 別撤廃委員会委員の林陽子弁護士、憲法学者の山元一教授)の証人尋問 について、裁判所より、「尋問で明らかにすべき事項ではないので、今 のところ、必要がないと考えている」との発言がありました。これに対 しては、原告弁護団は、「要点だけでも口頭で尋問したい」と主張して おり、協議を継続する予定です。

○原告本人への尋問は合計60分
 次に、原告5人について、裁判所より、「既に陳述書が出ているので、 それで十分(尋問は不要)という被告の意見にも一理あるが、損害賠償 請求ということもあり、本人尋問については採用する方向で考えている。 ただし、時間の関係で、代表者1〜2名に絞るなどして、主尋問で合計 60分としてほしい」との発言がありました。これに対しては、原告弁 護団より、「原告一人ひとりについて事情が異なるため、代表者に絞る ことはできない。また、60分を原告5人に割り当てると1人分の尋問 時間が短くなってしまうが、実際に各原告がどれほどの苦悩・苦痛を抱 えているかという点は重要な立証対象であるから、全ての原告について 十分な尋問の機会を与えるべきである。もし、次回期日(10月10日) で時間が足りなければ、もう1期日取ってほしい」と主張しましたが、 認められず、裁判所は合計60分と決定しました。

○次回で結審ではないことを確認
 最後に、尋問以外の今後の進行との関係で、次回期日をもって結審の 予定はないことが確認され、また、裁判所から被告代理人に対し、「前 回期日にて、被告より、『原告の主張のどこについて反論すべきかとい う点について、もし裁判所に何か考えがあれば教えてほしい』という話 があったが、具体的にどこについて反論ということではなく、全般的・ 網羅的に反論を行ってほしい」との指示がありました。
 原告本人への尋問では、60分という枠の中でどのように時間配分す るかについて現在検討中ですが、各原告は、尋問担当弁護士と打ち合わ せを重ね、尋問の準備を行っています。できるだけ多くの方に傍聴して 頂ければ、原告本人としても心強いですし、多くの人たちがこの裁判に 関心を寄せ、見守っているということを、裁判官だけでなく、被告の国 やメディアに示すことができます。
 どうぞよろしくお願い致します。


第20号 2012年8月24日発行

【10月10日の口頭弁論の見通し】
【自民党丸山和也参議院議員が別姓について質問】
【女性に対する差別的法規・慣習に関する作業部会】
【閉廷後の傍聴者へのインタビュー】
【今さら聞けないサイバンの話 Q&A】
【mネットの集会のお知らせ】

【女性に対する差別的法規・慣習に関する作業部会】
                            弁護団 大谷美紀子
 2010年、人権理事会は、女性に対する差別的法規・慣習に関する 作業部会を新たに設置しました。長年にわたって、各国では、女性の人 権を国内法において完全に取り入れるために、憲法を含む法改正に取り 組んできました。しかし、改善は未だに不十分なままで、公的・私的い ずれの領域においても、女性に対する差別は根深く存在し、続いていま す。女性に対する差別は、法律や政策、慣習に反映された父権的なステ レオタイプや力の不均衡によって、さらに助長されています。
 女性に対する差別の撤廃の問題については、女性差別撤廃条約という 規範と、条約に基づいて設置された女性差別撤廃委員会の下での条約の 実施を国際的に保障するための国家報告制度や個人通報制度・調査制度 が設けられ、世界中の国における女性差別の撤廃の実現のために貢献し てきました。今般、新たに設置された作業部会は、国連の5つの地域グ ループから1人ずつ任命された5人の専門家から構成され、女性に対す る差別的法規・慣習の撤廃のための良い実行例や効果的な措置について、 テーマ毎に研究を行い、人権理事会や国連総会に報告書を提出します。
 国連憲章に基づく国連の人権機構として、条約機関である女性差別撤 廃委員会の活動と連動し、女性に対する差別的法規・慣習の撤廃の実現 が進むことを期待します。日本においても、2011年から開始された 作業部会の活動に注目し、最大限に活用していきたいと思います。


第19号 2012年7月25日発行

【2012年7月11日の裁判報告】
【提出した準備書面(6)の要約】
【滝実法務大臣に要望書提出!】
【国賠訴訟第7回口頭弁論が開催されます】
【TwitterとFacebook始めました】

【2012年7月11日の裁判報告】
                            弁護団 塩生朋子
 今回は、原告が準備書面(6)を提出しました。これまで原告は、訴 状や準備書面において詳細な主張を展開してきましたが、国会議員の立 法不作為について、違憲性と国家賠償法1条1項との関係での違法性に ついて端的に整理してまとめたものが準備書面(6)です。法廷では、 竹下弁護士が大変わかりやすく要約し陳述しました。
 また、原告からは、書証(甲第71号証から77号証。憲法に関する 文献など)と証拠説明書を提出しました。
 これに対し被告は、これまでの反論を繰り返すのでは意味がないので、 裁判所から主張の足りない点について指摘を受けた上で反論したいと述 べました。裁判所は、そのような指摘をすることを考えていなかったよ うで、指摘をするかどうか自体を検討し、指摘をする場合には原告にも 内容を伝える、ということでした。

 次回は、9月5日に進行協議期日が設けられました。原告は前回、原 告ら5人全員、二宮周平教授(立命館大学、民法)、林陽子弁護士(女 性差別撤廃委員会委員、条約)、山元一教授(慶応大学、憲法)の尋問 を請求しました。
 これに対し被告は、本件の争点は憲法や関係法令の解釈問題、女性差 別撤廃条約の法的性質等であるが、これらは裁判所の専権的判断事項で あって証明の対象となるものではないから、いずれの尋問も必要性がな いこと、また個別の立証趣旨からしても尋問の必要性がないことを理由 として、原告本人尋問と証人尋問の申し出は、いずれも不必要だから却 下されるべき、という意見を提出しました。これを受けて裁判所は、本 人尋問と証人尋問を採用するかどうかを話し合い、あわせて今後の進行 について話し合うために、少人数で非公開の進行協議期日を開くことに 決めたということです。

 次回の公開法廷での裁判は、10月10日(水)午前10時からと決 まりました。
 進行協議期日での話し合いにより、裁判所が本人尋問や証人尋問を採 用することを決めれば、尋問がこの日に行われるかもしれませんので、 時間は10時から12時と長めにとられました。
 通常の民事裁判は、原告も被告も主張を書面に記載して期日の前に提 出し、期日当日は主張を戦わせることはほとんどなく、手続き的な話の みで終わってしまいます。しかし、この裁判では、毎回、原告から裁判 所に予め要望を出して、訴状や準備書面の要約を陳述する時間をいただ き、マイクを使用できるようお願いし、傍聴にいらして下さる皆様にわ かりやすい期日となるように工夫してきました。それでもまだ聞き取り にくいといったご意見を頂戴し、申し訳なく思っています。
 次回期日に尋問が行われることになれば、生の声を裁判所に届けるこ とのできる素晴らしい期日となると思います。ぜひ、多くの方に傍聴に いらしていただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。


第18号 2012年6月27日発行

【国賠訴訟 第6回口頭弁論 開催】
【第6回の口頭弁論では何が行われるか】
【三士業、公明党に申し入れ】
【支える会 会員の声】
【今さら聞けないサイバンの話 Q&A】

【第6回の口頭弁論では何が行われるか】
7月11日午後4時から、東京地方裁判所(1階103号法廷)で、 国家賠償請求訴訟の第6回口頭弁論期日が開かれます。原告は第5回 口頭弁論で、以下の証人尋問の申請をしました。

(1) 原告ら5人全員
(2) 立命館大学の二宮周平教授(民法)
(3) 女性差別撤廃委員会委員林陽子弁護士(条約)
(4) 慶応大学の山元一教授(憲法)

 被告は、人証についてはいずれも不要とする意見書を出す予定という ことです。裁判所は今後双方の意見を聞いて、人証申請についての採否 を決定することになります。

 原告は今回、準備書面(6)を提出する予定です。このなかで、国家 賠償法1条1項の規定(注)の適用上違法であると主張する被告国の行 為は何かを整理します。皆様、ぜひ傍聴に来て、応援してください。閉 廷後、簡単な解説を行います。退室したらすぐに待合室にお集まりくだ さい。

注:国家賠償法1条1項国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、 その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加 えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。


第17号 2012年5月28日発行

【2012年5月9日の裁判報告】
【条約論についての解説】
【配布資料:夫婦別姓訴訟 2012年5月9日 裁判の内容】
【第5回口頭弁論、傍聴を終えて】
【国賠訴訟第6回口頭弁論が開催されます】
【第6回口頭弁論で何を行うか】
【TwitterとFacebook始めました】

【2012年5月9日の裁判報告】
                            榊原富士子
 今回も雨気味なのに多くの方が傍聴にきてくださいました。本当にあ りがとうございます。年度が替わり、裁判長は石栗正子判事に交替され ましたが、ソフトな訴訟指揮で傍聴人に好評でした。条約の適用につい てしっかり説得的に展開した原告の準備書面(5)を大谷美紀子弁護士 が、コンパクトにかつ大変わかりやすく要約して陳述しました(内容は 大谷さんご報告に)。

 今回初めて、原告から証人尋問申請も提出しました。(1)原告ら5 人全員、(2)二宮周平教授(立命館大学・民法)、(3)林陽子弁護 士(女性差別撤廃委員会委員・条約)、(4)山元一教授(慶応大学・ 憲法)です。あわせて、甲第53号証から70号証を提出しましたが、 林弁護士が作成くださった条約論の意見書に引用されるこれまでに条約 の審議状況などの書証もいっせいに提出しました。山元一先生の、「ジ ェンダー関連領域における国際人権法と国内裁判」(講座国際人権法3 巻、信山社)も提出しました。次回、原告の主張する違法行為は何かを さらに端的にまとめる予定ですので、まだ弁論期日が続きますが、主張 のやりとりは、相当に詰まってきています。なお、弁論の声が聞き取り にくかったとのこと、せっかく傍聴にきてくださった方々には本当に申 し訳ありません。次回、原告代理人だけでも、もっとマイクに近づけて 話すなど工夫してみたいと思います。原告吉井さんの5ヶ月の娘さんも 原告席で泣かずににこにこと頑張りました。0歳で裁判に参加とは、素 晴らしいですね。次回少し暑くなりますが、またどうぞよろしくお願い します。


第16号 2012年4月25日発行

【国賠訴訟第5回口頭弁論が開催されます】
【第5回口頭弁論について】
【社民党 重野議員が衆議院本会議で民法改正について質問】
【元教員 新聞の人事異動に旧姓が認められず神奈川県を提訴】
【国連社会権規約委員会へレポート提出】
【個人通報制度の集会で夫婦別姓訴訟が紹介されました】
【Web記事のご紹介】

【第5回口頭弁論について】
                            折井純
 5月9日午後4時から、東京地方裁判所(1階103号法廷)で、国 家賠償請求訴訟の第5回口頭弁論期日が開かれます。
 2月8日に開かれた第4回口頭弁論期日で、被告(国)は第2準備書 面を陳述し、書証(乙20、21号証)と証拠説明書を提出しました。 第5回の口頭弁論では、原告側は、以下を予定しています。
 まず、被告の第2準備書面に対する反論として、条約論を中心とする 準備書面(5)を陳述します。また、女性差別撤廃委員会委員の林陽子 弁護士の陳述書の提出と証人申請、立命館大学の二宮周平教授(民法) の証人申請、原告本人尋問の申請、その他の書証の提出です。
 原告は、今回、陳述する予定の準備書面(5)のなかで、被告が民法 750条が女性差別撤廃条約に違反するか否かなどの重要な本質論を回 避し、技巧的反論に徹していること、また、国会が停滞し、重要な法案 が成立しない状況のなかで、今ほど司法が力を発揮し、人権にかかわる 重要な制度改革を後押しすべき時はないことを訴えています。
 今回の重要な点は、林陽子弁護士及び二宮周平教授の証人申請が採用 されるかという点です。原告については、5人全員の尋問を申請します。 ぜひとも証人及び原告の尋問を実現させたいです。
 今回も傍聴席のたくさんある大きな法廷(103号法廷)で行われま す。傍聴席が埋まることで、裁判官に皆様の熱い支援を感じてもらえるはずです。裁判の後に、簡単な報告会を開催する予定です。ぜひ傍聴に 来ていただき、応援してください。


第15号 2012年3月26日発行

【mネットが民法改正を求める院内集会開催、3月8日】
【支える会・富山の一周年記念集会開催、2月26日】
【原告よりご挨拶】
【2011年度別姓訴訟を支える会会計報告】
【支える会、代表交代】
【次の期日予定】

【mネットが民法改正を求める院内集会開催、3月8日】
 mネット・民法改正情報ネットワークが3月8日、の国際女性デーに 参議院議員会館で「立法不作為を問う!民法改正を求める院内集会」を 開催しました。共催した日本弁護士連合会や、夫婦別姓訴訟の原告団、 弁護団、民法改正を求める市民や、女性団体、国会議員など101人が 参加しました。
 別姓訴訟の弁護団から多数の参加があり、大谷美紀子さんが民法改正 をめぐる国連の女性差別撤廃委員会からの勧告について解説しました。 大谷さんは、「委員会は民法750条が条約に違反すると度々勧告して いる。特に2009年の審査では、勧告の実施について必要な措置を講 じるよう国会に働きかけることを勧告した」と国会で議論することを求 めました。
 また、弁護団の寺原真希子さんは、別姓訴訟の訴えの主旨を解説し、 「民法750条は婚姻前の氏を捨てるか、法律婚を断念するか二者択一 を迫っている。制定当時から違憲であり、女性差別撤廃条約の発効から 27年、法制審議会答申から16年もの間、国は怠っており、国の立法 不作為が違憲であることは明白である」と述べ、立法不作為を厳しく指 摘しました。
 原告団からは塚本協子さんと小国香織さんが参加し、塚本さんは「私 は一人っ子で、相手は長男だった。1960年に結婚したとき、両方と も名前を変えたくなかった。出産の時に婚姻届と出生届を出し、子ども を戸籍に入れて、離婚届を出した。
夫は絶対自分の名前を変えたくないという。自分の名前を続けたい時ど うすればいいのか。離婚、 再婚を繰り返し13年間格闘したが、とう とう夫の名前になった。1947年から夫婦別姓ができていれば私はこんなところにいない。別姓訴訟を支えてほしい」と訴えました。
 集会には、与野党の民法改正に積極的な国家議員が、本人11人、代 理19人参加しました。議員からは、政府は今国会に改正法案を提出す べきこと、また閣法の提出を待つだけでなく、すぐにも野党が共同で議 員立法で提出する予定であることや、党内・連立内の事情などが述べら れました。
                          (mネット通信第269号を引用して作成)


第14号 2012年2月22日発行

【第4回口頭弁論の報告】
【提訴から1年、温かい支援をありがとうございます。】
【行政訴訟の上告理由】
【国賠訴訟第4回口頭弁論、傍聴感想】
【行政事件地裁判決の評釈】
【次の期日】

【第4回口頭弁論の報告】         弁護団 折井純
○原告から証人申請と当事者の尋問申請
 第4回口頭弁論期日では、まず、被告(国)が第2準備書面(支え る会のサイトでご覧いただけます)を陳述し、書証(乙20号証、2 1号証)と証拠説明書を提出しました。
 これに対し、原告は、今後の予定として、女性差別撤廃委員会委員 の林陽子弁護士の陳述書を提出し、証人として申請すること、新たに 立命館大学の二宮周平教授(民法)を証人として申請すること、また、 原告本人の尋問も申請することを述べました。
さらに、学者の意見書として、早稲田大学の戸波江二教授(憲法)の 意見書を提出する予定であることも述べました。
   証人尋問は、証人が法廷に出てきて、裁判官や当事者、傍聴人の前 で自ら認識した事実などを証言します。証人尋問をするためには、ま ず当事者が証人尋問の申し出をします。これを受けて、裁判所が証人 尋問をすると決めた場合に、はじめて尋問が実施されることになりま す。
 当事者(原告本人)の尋問の手続きも、基本的に証人尋問の手続き と同じです。

 証人尋問の申出→裁判所による採否の決定→証人尋問の実施

 今回は、証人及び原告本人の尋問の申し出をする予定であることは 伝えましたが、実際に申し出をするのは、次回の予定です。
 尋問は、証人や原告本人の生の声を裁判官に聞いてもらいじっくり 検討してもらうことができる貴重な機会です。裁判所には、ぜひ尋問 を実施していただきたいと思います。
 尋問は裁判の大きな山場です。尋問が終わると、第1審の裁判手続 も終結の方向に向かっていきます。

○被告から、議論のかみ合わない反論
 今回陳述された被告の第2準備書面では、国家賠償法1条1項の違 法性、憲法24条、憲法13条、及び、女性差別撤廃条約に関する原 告の主張に対して、被告が反論を述べています。原告と被告の議論が かみ合っていないところがありますが、この第2準備書面に対しても、 反論をしていく予定です。

○大勢の傍聴のお陰で次回も大法廷
 今回、大勢の方に傍聴に来ていただき、裁判官に傍聴人の熱い視線 が伝わったようで、次回も大きな法廷で行われることになりました。 次回は、5月9日(水)午後4時から103号法廷です。次回は、以前のように廊下ではない場所での報告会をし、傍聴に来てくださる方 どうしの交流がもっとできるよう工夫してみたいと思います。皆様の 応援が原告及び弁護団のエネルギーになりますので、引き続きご支援 くださいますようお願いいたします。


第13号 2011年1月21日発行

【国賠訴訟第4回口頭弁論 2月8日】
【傍聴は直接法廷へ 法廷後に、報告会実施】
【弁護団による法律解説「違憲審査基準」について】
【国賠訴訟第3回口頭弁論、傍聴感想】
《事務局から》
【行政訴訟、上告 12月6日】

【国賠訴訟第4回口頭弁論 2月8日 被告の反論、提出へ】         弁護団 折井純
 2月8日午後4時から、東京地方裁判所(1階104号法廷)で、国 家賠償請求訴訟の第4回口頭弁論期日が開かれます。
 昨年12月14日に開かれた第3回口頭弁論期日で、原告は準備書面 (3)と準備書面(4)を提出しました。
 準備書面(3)では、女性差別撤廃条約を締結した結果、国は女性に 対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止す るためのすべての適当な措置(立法を含む)をとる義務を負い(同条約 2条)、同条約16条1項(b)及び(g)に違反する民法750条を 改廃する義務を負うが、その改廃を怠ってきた立法不作により生じた損 害について、原告らは国家賠償請求を求めることができる、という主張 をしています。
 準備書面(4)では、民法750条が婚姻の自由(憲法24条)と氏 の変更を強制されない自由(憲法13条)を制約するものであり、厳格 な審査基準を用いて憲法適合性を審査すべきであり、この審査基準によ ると、民法750条の違憲性は明白であることを主張しています。 この原告の準備書面(3)(4)に対し、被告は今回反論を提出する予 定です。
 口頭弁論も佳境に入ってきました。今回も傍聴席のたくさんある大き な法廷で行われます。前回は傍聴に来てくださった方が少なかったので すが、今回はぜひ多くの皆様に傍聴に来ていただき、応援していただき たく、お願いいたします。


第12号 2011年12月26日発行

【国賠訴訟第3回口頭弁論 12月14日】
【国賠訴訟第3回口頭弁論、準備書面】
【言葉の戦いに備える弁護団】
【傍聴の感想】
【二つの意見書を提出】
【行政訴訟、上告 12月6日】
【連載 弁護団による法律解説 「女性差別撤廃条約違反」】
【2011年 提起と法廷の記録】
【今後の期日予定】

【国賠訴訟第3回口頭弁論、準備書面】  弁護団 竪 十萌子
○2つの準備書面
 第3回口頭弁論期日では、原告から準備書面(3)と(4)を提出し ました。どちらの書面も、長期間、調査と議論をし尽くして書き上げた 力作です。

   ○準備書面(3)女性差別撤廃条約について
 準備書面(3)は、条約について記載しました。国は、女性差別撤廃 条約を締結した結果、女性に対する差別となる既存の法律、規則、慣習 等を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む)を取 る義務を負っているのであるから、同条約16条1項(b)及び(g) に違反する民法750条を改廃する義務があるにもかかわらず、民法7 50条を改廃していない。したがって、国は民法750条の改廃を怠っ てきた立法不作為により生じた損害について原告らは国家賠償を求める ことができる、という主張を展開しました。日本の裁判において条約に 基づいて主張することは困難なのですが、条約チームが説得的にかつわ かりやすくまとめました。

○準備書面(4)憲法24条について
 準備書面(4)は@憲法24条に裁判規範性が認められ、「婚姻の自 由」は憲法24条1項によって保障されること。A氏は個人の人格の象 徴であり、人格権の一つとして「氏の変更を強制されない自由」が憲法 13条によって保障されていること。B民法750条は、上記「婚姻の 自由」と「氏の変更を強制されない自由」という憲法上の権利を制約す るものであり、違憲審査基準は厳格にすべきであるところ、審査基準に 照らすと違憲であること。C仮に民法750条制定時には合憲であった としても、その後の国内的・国際的環境等の変化等から、現在において は違憲であること、という主張を展開しました。様々な判例や国内的環 境の変化のデータ、学者の主張等も盛り込み、61ページにもなる大作 となりました。
 今回の書面で、基本的には原告の主張はし尽くしたことになります。 次回は、今回の原告書面に対して、被告が反論をしてきます。きちんと 正面から反論してくるか、ほとんど正面からは反論してこないか、楽し みなところです。

○いよいよ佳境、傍聴をお願いします
 次回、被告の反論を見て、必要があれば、原告は次々回に反論をしま す。また、次々回以降、尋問の期日が入ります。いよいよ佳境に入って きましたので、ぜひとも傍聴にお越しいただければと思います。


第11号 2011年12月1日発行

【行政訴訟の控訴審判決で、行政訴訟はできないと再度判断 11月24日】
【高裁判決を受けて 「議論の場が持てたことはよかった」】
【高裁の判決を傍聴して】
【女性差別撤廃委員会フォローアップ審査 民法改正はB評価】
【今後の期日予定】

【行政訴訟の控訴審判決で、行政訴訟はできないと再度判断 11月24日】  弁護団 小島延夫
 夫婦別姓で婚姻届を出したところ、それが受理されなかったので、不 受理の違法性を争うために、不受理処分の取消しを求める行政訴訟を提 起している件で、東京高等裁判所(青柳馨裁判長)は、2011年11 月24日、このような訴えはできないとした、第一審の東京地方裁判所 に引き続き、訴えを却下するとの判断を示し、控訴を棄却しました。東 京高裁は、戸籍の受理は形式的審査であり、公開の法廷での審査を認め なくとも憲法違反とならないとしました。同判決は、末尾で、夫婦同一 姓を定めている民法750条を違憲とすると、婚姻制度や戸籍制度全般 に影響が及ぶので、立法によることなく、裁判所が是正することはでき ないと述べており、この点が今回の判断の実質的な理由のようです。
 しかし、登記手続のように、形式的審査でも訴訟できるのは広く認め られており、東京高裁の判断には理由がありません。そもそも夫婦別姓 のような重要な問題について、国家賠償という形態でなく、直接に、公 開の法廷で争う手段がなければなりません。最高裁も、法律上の実体的 権利義務自体につき争がある場合には公開の法廷における審理が保障さ れるべきとしています(憲法32条、82条)。これからは、最高裁に 上告し、最高裁の判断を求めることになります。


第10号 2011年11月16日発行

【行政訴訟 11月24日に高裁判決、傍聴をお願いします】
【弁護団による法律解説 「婚姻の自由」】
【裁判前に国会ロビー】
【今後の期日予定】

【弁護団による法律解説 「婚姻の自由」】     弁護団 竹下博將
1 「婚姻の自由」とは
 婚姻は、個人の私生活上の人生を計画し、実行するという家族形成の 最も基本的な場面ですので、いつ誰とどのような場合に結婚するかにつ いては当事者の自由な意思によるべきです。
 このように、当事者以外の誰からの干渉も受けることなく、当事者の 意思だけで婚姻する自由・権利を「婚姻の自由」といいます。

2 明治憲法・明治民法と「婚姻の自由」
 明治憲法には婚姻に関する規定はなく、明治民法においては、婚姻は 「家」と「家」との結びつきで、戸主の同意がなければ婚姻できないと され、「婚姻の自由」は保障されていませんでした。

3 日本国憲法と「婚姻の自由」
 「婚姻の自由」については、憲法24条1項が、「婚姻は、両性の合 意のみに基づいて成立」すると具体的に規定していますので、明文で保 障されていると考えています。この点に関する最高裁判所の判例はあり ませんが、昭和40年代、女性について結婚した場合に退職することと 定められた結婚退職制度の有効性が争われた裁判例において、憲法24 条に基づく人権であることが繰り返し確認されています(結婚退職制度 は無効と判断されています。)。
 また、「婚姻の自由」は、個人尊重の原理を宣言した13条の幸福追 求権にも由来する重要な人権です。13条は、包括的な人権としての幸 福追求権を定めていて、家族形成に関する人格的自律権・自己決定権に ついても保障していると考えられますが、婚姻は家族形成の最も基本的 な内容として、24条1項によって具体化されていると考えられるので す。

4「婚姻の自由」に対する制約
 「婚姻の自由」が保障されても、当事者の合意以外に一切の制約がな いというわけではありません。
 例えば、婚姻は、民法上の権利義務関係や税制などの公法上の権利義 務関係に重大な影響を生じさせるものですので、その手続や公示制度が 整備されることが不可欠です。その限りでは「婚姻の自由」も制約され る場合があります。
 例えば、民法739条は、婚姻について届出制としています。合意だ けでなく届出が必要という点で「婚姻の自由」は制約されていますが、 これ自体は制度上やむを得ない制約だと考えられています。

5 民法750条と「婚姻の自由」に対する侵害
 戸籍法74条が、婚姻届に「夫婦が称する氏」を記載することを求め ていますので、この記載がなければ、婚姻届は受理されず、結婚できま せん。民法750条が夫婦同氏制を定め、これを受けて戸籍法74条が 婚姻届の記載事項とすることで、法律上、夫婦は同氏としなければ結婚 することができないのです。実際、法律上の婚姻を断念して事実婚を選 択する夫婦も少なくありません。
 夫婦同氏制は、婚姻を求める当事者に対し、「婚姻の自由」と憲法 13条が保障する「氏の変更を強制されない自由」の二者択一を迫るも ので、「婚姻の自由」に対しても「氏の変更を強制されない自由」に対 しても重大な制約ですが、夫婦同氏制の目的の正当性・必要不可欠性や その目的を達成する手段としての合理性・相当性等は全く論証されてきませんでした。本訴訟においても、国は、夫婦同氏制の目的を現時点で は明らかにしていません。
 本訴訟においては、目的の正当性も手段の合理性・相当性も明らかで ない夫婦同氏制は、「婚姻の自由」に対する許されない制約(すなわち、 侵害)だと主張し、夫婦同氏制を改正してこなかった国に対して損害賠 償を求めています。

6 今後の展開
 弁護団としては、これまでの学説などを踏まえて、夫婦同氏制の目的 の正当性と手段の相当性について検討し、それぞれ主張していきます。


第9号 2011年10月15日発行

【国賠訴訟 第2回口頭弁論のご報告】
【参加者全員の、訴訟に寄せる思いを交流(国賠訴訟 第2回口頭弁論 交流会)】
【裁判前に国会ロビー】
【みなさんの思いを知り、大変励まされました】
【行政訴訟が結審、判決は11月24日に(第2回口頭弁論のご報告)】
【みなさんから勇気をもらいました】
【弁護団自己紹介 第5弾】

【参加者全員の、訴訟に寄せる思いを交流(国賠訴訟 第2回口頭弁論 交流会)】     大澤容子
 報告・交流会は5時から衆議院第二議員会館で開き、原告・弁護団・傍聴者、議員、報道関係者など50名の参加がありました。
 民主党の中村哲治参議院議員は、「法制審答申が出てから15年たつが、国会では歩みが遅い。訴訟と同時に、地元の国会議員にメールやファックスを送るのが重要だ」と国会議員に働きかけを呼びかけました。
 婚外子の住民票と戸籍の続柄差別記載の撤廃を求めて闘った田中須美子さんは「17年半裁判を闘い、差別記載撤廃を勝ち取った。大阪高裁違憲決定のニュースに感動した。国会への要請行動や最高裁に違憲判決を求めた運動展開ができたらいい」と今後の活動への抱負を語りました。
 また、子どもが生まれるたびに婚姻届と離婚届を出してきた方が複数、事実婚で臨月を迎え、自分も行政訴訟を起こそうかと検討している弁護、夫婦別姓をテーマに討論の授業を企画している高校の教員、ジェンダーとセクシュアリティの研究をしている大学生、25年前、30年前からという長い年月別姓の法制化を求めてきた方も複数ありました。
弁護団の中川武隆さんは「今日は熱い思いをたくさん聞いて、元気が湧きました」と感想に述べ、参加者一同の気持ちを代弁しました。
最後に支える会の坂本洋子さんが「立法府にいる国会議員の一人一人の不作為を問いたい。みなさんと一緒に、全員が訴訟で闘う思いでつながって広げたい」と力強く述べました。


第8号 2011年9月19日発行

【間もなく裁判期日、傍聴をお願いします】
【9月27日開廷の行政訴訟第2回口頭弁論で争われること】
【10月5日開廷の国賠訴訟第2回口頭弁論で争われること】
【衆議院本会議で社民党の重野議員が民法改正を質問 9月15日】
【2010年人口動態 夫の氏96.3% 婚外子割合2.1% 9月1日】
【弁護団、またパワーアップ】

【10月5日開廷の国賠訴訟第2回口頭弁論で争われること】          弁護団 折井純
 10月5日午後4時から、東京地方裁判所(1階103号法廷)で、 別姓訴訟の国家賠償請求訴訟の第2回口頭弁論期日が開かれます。
 5月25日に開かれた第1回口頭弁論期日で、原告は、夫婦同氏制を 定める民法750条が憲法13条、憲法24条1項、2項及び女性差別 撤廃条約2条、16条1項(b)(g)に違反するとしたうえで、国が 民法750条を改正し夫婦同氏に加えて夫婦別姓という選択肢を認める 立法を行わないことは、国家賠償法1条1項の違法な行為に該当すると 主張しました。これに対し、被告は、民法750条は違憲ではなく、国 家賠償法1条1項の違法性も認められないと反論しました。ただし、国 際法(条約)が国家賠償法の適用上の違法を基礎づけることができるか という点については、後日に主張するとしました。
 第2回口頭弁論期日では、原告は、「被告のたてた国賠の違法性の基 準は従前の最高裁判所判例の立場とは異なる独自のものである」等の再 反論をします。被告からは、「条約を含む国際法は直接個人の権利義務 を規律するものではない」等の主張がなされます(既に準備書面が届い ています)。これに対する原告の反論は、第3回に行う予定です。
   第2回には、原告本人らの陳述書も提出する予定です。陳述書とは、 訴訟当事者や関係者がこれまでの経緯や状況などをまとめて記載した書 面で、証拠の1つとされています。
 次回も、大きな法廷で行われますので、皆様、ぜひ傍聴に来ていただ き、ご支援くださいますようお願いいたします。


第7号 2011年8月31日発行

【女性差別撤廃委員会に政府とNGOがレポート提出】
【弁護団による法律解説 第3回 「憲法13条」】
【総務省が当選証書に通称使用の付記を認める見解 8月26日】
【弁護団自己紹介 第4弾】
【支援要請活動の報告】
【今後の期日予定】

【女性差別撤廃委員会に政府とNGOがレポート提出】          坂本洋子
 国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は2009年8月、度々の勧告にもかかわらず改善されない民法改正とポジティブ・アクションの二つをフォローアップ項目とし、どのような措置を講じたか2年以内に報告するよう日本政府に勧告しました。その報告期限は今年8月7日とされていました。
 CEDAWに政府コメントを送った日本政府は8月8日、ウェブサイトで全文を公開しました。その主な内容は、@2009年9月に最高裁が婚外子相続差別規定を違憲としなかったものの、規定は違憲の疑いが極めて強いとして立法府に早期の法改正を求めた、A2010年の通常国会で民法改正案を提出予定としたが、提出しなかった、B男女共同参画会議が2010年7月に答申した第3次男女共同参画基本計画に「民法改正が必要である」と答申し、閣議決定された基本計画は「引き続き検討する」とした。その基本計画はホームページやパンフレットで広く周知している、などです。
 一方、日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)や日本弁護士連合会もCEDAWにNGOレポートを送り、それぞれ公開しましています。JNNCのレポートでは、最高裁で違憲判断の可能性が高かった婚外子相続差別訴訟が却下されて以降、政府や立法府がこの問題を放置していることを批判し、民法改正についてもはや「検討を進める」段階ではなく、速やかに法改正すべきである、と厳しく指摘しています。
   政府コメントとNGOレポートの全文は、それぞれのウェブサイトでご覧になれます。
http://www.gender.go.jp/teppai/6th/cedaw_co_followup_j.pdf
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/d ata/woman_report_followup.pdf


第6号 2011年7月13日発行

【行政訴訟第1回口頭弁論の報告 7月7日】 弁護団 橘高真佐美
【行政訴訟第1回口頭弁論 原告感想】
【弁護団自己紹介 第3弾】
【国賠訴訟第1回口頭弁論(5月26日)傍聴の感想 第2弾】
【今後の期日予定】
【みなさまへ、訴訟を支えるカンパのお願い】

【行政訴訟第1回口頭弁論の報告 7月7日】 弁護団 橘高真佐美
 7月7日午後1時30分から東京高等裁判所(817号法廷)で加山 恵美さん・渡辺二夫さん夫婦が訴えた婚姻届の不受理処分の取消請求 (行政訴訟)の第1回口頭弁論期日(控訴審)が、開かれました。今回 も、たくさんの方が傍聴に来てくださり、高等裁判所の裁判官の方たち にも、関心の高さが伝わったと思います。
 今回の夫婦別姓訴訟では、国家賠償(慰謝料)請求と併せて、この婚 姻届不受理処分取消請求も提訴しました。しかし、東京地方裁判所は、 両者を分離し、婚姻届不受理処分取消請求については、行政訴訟ではな く、戸籍法に基づき家庭裁判所で家事審判手続として不服申立をすべき であるとして、口頭弁論期日を開催することもなく、訴えを却下しまし た。加山さんと渡辺さんは、この判決を不服として、東京高等裁判所に 控訴しました。
 第一審の判決が述べるように、家庭裁判所で家事審判手続として不服 申立をしても、今回のような口頭弁論期日は開かれず、非公開の審判期 日が開かれるか否かは裁判官次第(これまでの別姓の婚姻届不受理に関 する家庭裁判所での事件では開かれていない)、婚姻届を受理しなかっ た荒川区は、審判の相手方にはならず(事件の当事者は申立人のみ)、 裁判所が申立人の主張を判断するのみで、裁判所が双方の主張の当否を 吟味して判断するのではなく、後見的判断をする(審判とはそういう手 続き)はずの裁判所が、「事件で敵対する相手方」のような印象になる 場合があります。
審判廷が開かれても、申立人以外の人が傍聴することはできず、時に は、一度も裁判官に会わないまま、密室の中で裁判所の判断が行われる ことになります。弁護団としては、婚姻届不受理処分は、婚姻の成立と いう権利義務の存否に関わるものですので、公開法廷で、主張立証の機 会が保障される訴訟手続で争うことができなければ、裁判の公開を保障 する憲法82条に反することになると考えています。  ところで、行政に対する取消訴訟をするためには、行政の行為につい て直接国民の権利義務を形成したり範囲を確定したりすることが法律上 認められている「処分性」が必要とされます。
裁判長は、時代が変われば、「処分性」の概念も広がると取消訴訟が できるという判断の可能性を示す一方で、現在法律で認められている家 庭裁判所以外の救済方法がないことが憲法違反に当たるということであ っても、それを救済するために立法府ではない裁判所が新たに法律を作 るかのような法律の解釈をできるだろうかと疑問を投げかけました。ま た、これから国家賠償訴訟が続き、別姓による婚姻ができないことの違 憲性を問おうとしている中で、この取消訴訟で、第一審で口頭弁論期日 も開かず全く実質的な審理をしていないのに、高等裁判所で、いきなり 権利について判断すべきであろうかという問題意識を持っていることも 示しました。
 弁護団としては、これから学者の方に意見書を書いていただき、それ らの意見を踏まえ、取消訴訟ができるという主張を補強する予定です。 裁判所も弁護団の希望を受け、9月27日午前10時30分に次回の口 頭弁論の期日を指定しました。次回が高等裁判所での最後の弁論期日と なる予定です。
 高裁では、口頭弁論期日が開かれ、主張を慎重にたたかわせようとし ていること、1回で結審という部も少なくない中、2回目期日までに、 約3ヶ月という良い書面を作成するために十分な時間を与えてくれたこ と、など、裁判所は、本件の内容に添う対応をしてくれたと思います。
 なお、荒川区は、取消訴訟は許されないとして、これ以上の反論は行 うつもりがないということが確認されました。
 婚姻届不受理処分取消請求の第2回口頭弁論期日(控訴審)も、ぜひ 傍聴にきていただき、引き続きのご支援を、どうぞよろしくお願い申し 上げます。


第5号 2011年6月28日発行

【行政訴訟第1回口頭弁論、7月7日に開廷】 弁護団 竹下博將
【弁護団による法律解説 夫婦別姓と違憲訴訟の方法】 榊原富士子
【弁護団自己紹介 第2弾】
【国賠訴訟第1回口頭弁論 傍聴の感想記】
【今後の期日予定】

【行政訴訟第1回口頭弁論、7月7日に開廷】 弁護団 竹下博將
   時間:13時30分〜 
   場所:東京高裁817号法廷

 加山恵美さん・渡辺二夫さん夫婦が訴えた婚姻届の不受理処分の取消請 求(行政訴訟)の第1回口頭弁論期日(控訴審)が、東京高等裁判所(8 階817号法廷)で7月7日13時30分に開かれます。
 2月14日に提起した夫婦別姓訴訟では、国家賠償(慰謝料)請求と併 せて、この婚姻届不受理処分取消請求も提訴しましたが、東京地方裁判所 は、両者を分離し、婚姻届不受理処分取消請求については、2月24日、 訴えを却下しましたので、この判決を不服として、不服申立(控訴)した のです。東京地方裁判所は、婚姻届の不受理処分を争う場合、行政訴訟で はなく、戸籍法に基づき家庭裁判所で家事審判手続として不服申立をすべ きであるとして、訴えを却下しました。
 しかし、婚姻届不受理処分取消請求は、婚姻の成立という権利義務の存 否の判断を求めるものですので、公開法廷で、主張立証の機会が保障され る訴訟手続で争うことができなければ、裁判の公開を保障する憲法82条 に反することになります。
 婚姻届不受理処分取消請求の第1回口頭弁論期日(控訴審)では、5月 25日に東京地方裁判所で開かれた国家賠償請求の第1回口頭弁論期日と は異なり、訴状や控訴理由書の陳述は予定されていませんが、審理手続の 進行を見守っていただきたく、どうか傍聴して応援してください。


第4号 2011年6月3日発行

【第1回口頭弁論で原告側陳述】5月25日  報告 弁護団 川見未華
【原告側陳述ダイジェスト】
【院内にて報告&交流会】
【次の期日決定】

【第1回口頭弁論で原告側陳述】5月25日     別姓訴訟を支える会通信第4号より(抜粋)
                                               報告 弁護団 川見未華
 5月25日(水)午後4時から、東京地方裁判所104号法廷において、別姓訴訟の第 1回口頭弁論期日が開かれました。104号法廷は、東京地方裁判所の中でも最大級 の広さの法廷です。
 当日は、予想どおり多くの傍聴希望者に集まっていただきました。
 5月25日の第1回口頭弁論期日では、まず、原告弁護団による15分間の訴状の陳述 が、弁護団員のうち若手5名が分担 をして行いました。 訴状陳述の後は、被告の答弁書の陳述が行われました。さらに その後、原告及び被告が提出している証拠の取調べが行われました。
 最後に、今後の訴訟の進行についての確認が行われ、次回期日は 10月5日(水)午後4時(103号法廷)、次々回期日は12月14日(水)午前 10時(103号法廷)に行われ ることになりました。
 次回期日までの間に、原告は被告が提出した答弁書に対する反論書面及び原告の皆 さんの陳述書を、被告は追加の主張書面を提出することになっています。私たち弁護 団としては、この期間を最大限に利用して、次回期日の準備に全力をあげていきたい と思います!
 皆様におかれましては、次回以降もぜひ傍聴にきていただき、引き続きのご支援 を、どうぞよろしくお願い申し上げます。    


第3号 2011年5月3日発行

初回期日決定 5月25日(水)16時〜、報告及び交流会 同日17時〜
【弁護団による訴訟解説】
弁護団、1名増えてさらに強力に
弁護団による自己紹介(第1弾)
支える会会員からの応援メッセージ

【弁護団による訴訟解説】
婚姻届の不受理処分の取消請求(行政訴訟)
 行政訴訟の専門家である小島延夫さんに解説していただきます。
 現在の民法では、夫婦別姓を認めていないため、夫婦別姓の婚姻届は受 理されません(不受理となります)。そこで、今回、国家賠償請求以外に、 婚姻届の不受理処分の取消請求(行政訴訟)も、東京地裁に提起しました。  ところが、東京地裁は、この訴えが不適法であるとして却下しました。 その理由とするところは、戸籍法上、戸籍についての処分については、家 庭裁判所に不服申立することとし、審判手続で決定すべきとされているか らということでした。
しかし、家庭裁判所の審判手続は、非公開の手続で、傍聴などはできませんし、関係者が意見を陳述する機会も任意でしかなく、夫婦別姓制度が憲 法や条約に違反するかどうかといった点について、専門家の証言をする機 会が保障されていません。
他方、憲法82条は公開の法廷での裁判を保障しています。最高裁判所も 「法律上の実体的権利義務自体につき争があり、これを確定する場合には、 公開の法廷における対審及び判決によるべき」としています。家庭裁判所 の審判は、権利義務自体の争いについてのものでないから合憲だとしてい ます。したがって、憲法上、法律上の実体的権利義務についての争いにつ いては、家庭裁判所の審判ではなく、公開の法廷での裁判である「訴訟」 によらなければならないことになります。
 今回の婚姻届が受理されるかどうかは、婚姻が成立するかどうかという、 まさに、法律上の実体的権利義務自体についての争いです。また、専門家 の証言も必要です。したがって、婚姻届が受理されるかどうかについての 争いについては、公開の法廷での審理及び判決によらなければならず、家 庭裁判所の審判手続では憲法上不十分ということになります。
 控訴審での主張の要点は、以上のように、公開の法廷での審理と判決が 保障されないと憲法82条に違反するという点が基本です。他に、地裁では、 婚姻の成否は判決によって定まるわけではないともしていました。そこで、 その解釈が誤りであることについて、取消訴訟の判決効・準法律行為的行 政行為としての婚姻届の受理の法的意味についても説明しました。  


第2号 2011年3月3日発行

初回期日決定5月25日(水)
訴訟の一部に却下の判決2月24日、東京高裁に控訴3月3日
原告の加山恵美さん「耳を疑う展開に、ただただ驚きました!」
別姓訴訟を支える会・富山」発足と報告集会

【訴訟の一部に却下の判決 2月24日、東京高裁に控訴 3月3日】
婚姻届不受理処分を争う行政訴訟
 加山恵美さん・渡辺二夫さん夫婦が訴えた婚姻届の不受理処分の取り消 し請求(行政訴訟)が、2月24日、却下されました。
2月14日には、この行政訴訟と、全員による国に対する慰謝料請求(国 家賠償法に基づく民事訴訟)を併合して提訴しましたが、東京地方裁判所 (八木一洋裁判長)は2つを分離し、前者のみ却下、後者は行政部でする 必要がないとして、一般部である同地裁民事24部へ事件を移しました。 前者の婚姻届の不受理処分を争う裁判については、行政訴訟でなく、戸籍 法に基づき家庭裁判所に申し立てるべきというのが、裁判所の却下の理由 です。(中略)
   原告側は、判決を不服として3月3日、東京高等裁判所に控訴しました。  損害賠償請求の方は、これから、民事24部で本格的に裁判が始まりま す。ご支援よろしくお願いします。


第1号 2011年2月22日発行

別姓訴訟開始にあたって
(原告団のご紹介/弁護団のご紹介)
記者会見&国会報告会
(原告から/弁護団から/会場から/出席された国会議員)
別姓訴訟への応援メッセージ
(日本弁護士連合会会長 宇都宮健児さん/
I女性会議共同代表 清水澄子さん/
実践女子大学教授 鹿嶋敬さん/元衆議院議長 土井たか子さん/
和光大学教授 井上輝子さん)

【記者会見&国会報告会】
 民法の夫婦同姓規定は、個人の尊厳を定めた憲法13条や、両性の平等 を定めた24条、女性に対する差別法規の改廃義務を定めた女性差別撤廃 条約などに違反するとして、富山県の塚本協子さん、東京都の加山恵美さ ん・渡辺二夫さん、小国香織さん、京都府の吉井美奈子さんの5人が、国 などを相手に計600万円の慰謝料や、別姓で提出した婚姻届の不受理処 分の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こしました。
 夫婦同姓規定を違憲として国家賠償を求める訴訟はこれが初めてです。
 塚本さん、小国さん、吉井さんは法律婚で旧姓を通称使用し、戸籍姓と 自己の違和感や、不便不利益を被っていること、事実婚をしている加山さ んと渡辺さん夫婦は、法律婚していれば得られる利益を受けられない損害 が生じていることを慰謝料請求の理由としています。さらに、夫婦は今年 1月、夫婦別姓の婚姻届を荒川区に提出しようとして不受理になった精神 的損害を慰謝料請求しています。
 訴状を提出後、衆議院第一議員会館で別姓訴訟を支える会主催の報告会 が行われ、原告4人弁護士9人が提訴への思いや訴状の解説などを行いま した。