アフガン駐留米軍、9月11日までに完全撤退へ

US troops training the Afghan Army 215th Corp in Helmand, July 2016

アメリカのジョー・バイデン大統領は、アフガニスタンの駐留米軍を9月11日までに完全撤退させることを決めた。米メディアが13日、政府高官の話として伝えた。

バイデン大統領は14日にも、記者会見で正式に発表する見通し。

ドナルド・トランプ前米政権は昨年、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンと今年5月までの米軍撤退で合意していたが、バイデン政権はこの期限をオーバーすることになる。

新たな撤退期限は、米同時多発攻撃からちょうど20周年の日に当たる。

バイデン大統領はこれまで、5月1日という撤退期限に間に合わせるのは厳しいと話してきた。

アメリカと北大西洋条約機構(NATO)の高官らは、タリバンが武力行使を縮小させるという制約を守っていないと指摘している。

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米政府高官は、タリバンが米軍撤退にあわせて攻撃を仕掛けてきた際には、「力ずくで対処する」と警告していると話した。

また、バイデン大統領は早急な撤退によって米軍が危険にさらされる事態は避けるべきだとしているという。

一方で今回の決定は、アフガニスタンでの20年におよぶ紛争を終わらせ、よりはっきりとした脅威に注力するためのものだというアメリカの意思表示だとも言える。

タリバンは13日、全ての外国軍がアフガニスタンから撤退するまで、同国の将来を決める首脳会談には参加しないと述べた。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は14日にも、ブリュッセルでNATO加盟国にこの決定について説明する予定だ。

動画説明, タリバンと平和は築けるのか? BBC記者がアフガニスタンで取材(2019年)

アメリカは2001年にアフガニスタンに進攻して以来、数兆ドルを費やしてきた。これまでに2000人以上の兵士が亡くなっている。同国にとっては史上最長の戦いとなっている。

昨年2月の合意では、タリバンが支配地域でアルカイダなど他の武装勢力の活動を認めず、アフガニスタン政府との和平交渉を進めるといった約束を守った場合、14カ月以内に全ての部隊を撤退させることが決まった。

一方でタリバンは、アフガニスタン政府との交渉を始めるにあたり、数千人の捕虜を解放するよう求めた。

政府とタリバンの直接交渉は昨年9月にドーハで始まったものの、突破口はまだ見えていない。

タリバンはこの合意後、駐留軍との戦闘は行っていないが、アフガニスタン政府軍との戦いは続けている。

しかしタリバンは3月、外国軍が5月1日以降も同国にとどまっている場合は敵対行為を再開すると脅迫した。

一方で、永続的な合意に至る前に外国軍が撤退した場合、タリバンがアフガニスタン国内で権力を掌握する恐れも出ている。

アメリカは現在2500人、NATOは9600人強の兵士を駐留させている。

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アメリカのアフガニスタンでの作戦

2001年10月: 9月11日の米同時多発攻撃を受け、アメリカ主導によるアフガニスタン空爆が始まった

2009年2月: アメリカはさらに1万7000人の派兵を決定。NATO加盟国もアフガニスタンへの増派などを約束した

2009年12月: 当時のバラク・オバマ米大統領は、アフガニスタン駐留軍を3万人増員し、計10万人に拡大すると決定。一方で、2011年までに撤退を開始するとした

2014年10月: アメリカとイギリスが、アフガニスタンでの戦闘作戦を終了した

2015年3月: オバマ大統領が、駐留軍の撤退時期を遅らせると発表。アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領の要請を受けたもの

2015年10月: オバマ大統領が、2016年末までは兵士9800人をアフガニスタンに残すと述べた。これ以前は、1000人を残し全軍を撤退させると約束していた

2016年7月: オバマ大統領は「安全保障上の不安定な状態」を理由に、2017年には米兵8400人が駐留すると発表。NATOも駐留を継続することに合意したほか、2020年までアフガニスタン政府軍への資金援助を続けると強調した

2017年8月: ドナルド・トランプ大統領(当時)が、タリバンの勢力拡大を受けて増派すると述べた

2019年9月: アメリカとタリバンの和平交渉が決裂

2020年2月: 数カ月におよぶ交渉の末、アメリカとタリバンがドーハで合意に至る。アメリカは駐留軍撤退を約束した

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<解説>タリバンを後押しする? ――セカンダー・カーマニ・アフガニスタン特派員

アフガニスタン国民の多くが、アメリカの今回の決定はタリバンを後押しすると見るだろう。タリバンが強調していた5月1日という撤退期限は守られないのだが。期限延長は短期間なので、タリバンがアメリカ駐留軍への攻撃を再開する可能性は低い。とはいえ、タリバンの反応はすでに敵対的だ。

アフガニスタン政府には、バイデン新政権が「条件に基づいた」アプローチで和平交渉への道を進んでくれると期待していた者もいた。しかし、その希望は完全になくなってしまった。

アフガニスタンとタリバンの交渉はゆっくりとしか進んでおらず、現時点では、米軍撤退までに権力分割の合意に至ることは難しい見通しだ。もしかしたら、国際的承認を得たいというタリバンの要求が、妥協の道を歩ませるかもしれない。

しかし多くの人が、タリバンは米軍撤退を待ってから、徹底的な勝利か、少なくとも優勢を得るために動くのではないかと恐れている。アフガニスタン政府は現在まで、タリバンの勢力拡大を抑えるのにアメリカの空爆に頼っている。

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