ベネズエラ国会に政権支持の群衆が乱入 議員ら一時閉じ込められる

国旗を掲げながら国会に乱入する群衆(5日、カラカス)

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深刻な経済危機に直面する南米ベネズエラの首都カラカスで5日、ニコラス・マドゥーロ大統領を支持する群衆が反政権派が多数を占める国会に乱入し、数人の議員に暴行した。

国会ではベネズエラ独立記念日を祝う本会議が終了したばかりだった。

AFP通信によると、群衆が棒やパイプを持って門を破って侵入するなか、現場にいた憲兵は傍観していたという。政府は事実関係を調査すると約束した。

国民議会のフリオ・ボルヘス議長は、約350人が何時間にもわたって国会内に閉じ込められたと述べた。同議長はツイッターで、108人の記者に加えて、学生や訪問者も閉じ込められたと書いた。

ボルヘス議長は負傷した議員5人の名前を明らかにした。一部の議員は病院に運ばれた。

頭の包帯が血だらけになったアルマンド・アルマス議員は救急車に乗る際、「我々の国が失われていくのを毎日目にするほどは辛くない」と語った。

米国務省は、「206年前のきょう、ベネズエラ独立のため戦った男女が大切にしていた民主主義の原則への攻撃だ」と述べ、襲撃を非難した。

目撃者によると、記者数人と2人の議会スタッフも負傷したという。

地元紙タル・クアルは、襲撃を行ったのは「コレクティボス」と呼ばれる民兵だとし、ロケット砲や爆竹を使って国会内に乱入したと伝えた。

同紙によると、一部の議員は「床の上に倒れ、(暴徒たちに)蹴られていた」という。

ソーシャル・メディアでは、暴行を受けて頭か血を流す負傷者の姿を撮影した写真や動画が拡散されている。アメリコ・デ・グラシア議員とみられる人物が担架に乗せられて運び出される様子を撮影したものもあった。

AFP通信によると、暴徒たちが同社記者に現場を離れるよう求めたという。暴徒の一人は銃を所持していた。

国会では独立記念日を祝う本会議が開かれていた

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事件当時、マドゥロ大統領はカラカスの別の場所で、政府が主催した独立記念日の軍事パレードで演説していた。

事件直前には、ターレク・エル・アイサーミ副大統領がブラディミル・パドリノ・ロペス国防相など閣僚らを伴って国会に予告なしに現れ、人々に対し国会に集まって大統領への支持を表明するよう求める演説をした。

群衆は国会に乱入する数時間前から国会の前でデモを行っていた。

ベネズエラの国会は2015年12月の選挙の結果、野党が多数を占めるようになり、大統領を批判する勢力の本拠地となっていた。

反大統領派は過去3カ月、全国で街頭デモを行っているが、治安部隊とデモ参加者の間の衝突で、少なくとも90人が死亡している。犠牲者が出ている責任をめぐっては、大統領派と反大統領派の両方が双方を非難している。

独立記念日の式典に出席したマドゥロ大統領(5日、カラカス)

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国会乱入が起きる数時間前には、ルイサ・オルテガ・ディアス司法長官が4日の出廷を拒否したことで職権停止に直面した。一部報道では、裁判官の任命をめぐってディアス長官に違法行為があったとの主張がされている。ディアス長官はマドゥロ大統領の改革案に反対を表明している。

ベネズエラの最高裁は先週、オルテガ長官の出国を禁止し、全資産を凍結した。

オルテガ長官は4日に行った記者会見で、「私が任務を解かれるだろうことは皆すでに知っている」と語った。

オルテガ長官は先週、盗まれた警察のヘリコプターが先月27日にカラカス上空を飛び、手投げ弾を落としたり、発砲したりしたことについて、マドゥロ大統領を激しく批判した。

マドゥロ大統領は「テロ攻撃」だとしたが、オルテガ長官はベネズエラが「国家テロ」の下で苦しんでいると述べた。

盗まれたヘリコプターは海岸近くで治安部隊によって発見された。野党政治家のボルヘス国民議会議長は、事件はでっち上げだったと主張した。

現在逃亡中でヘリコプターを操縦していたとされるオスカー・ペレス警察官は4日にインターネットに動画を投稿し、今もカラカス市内にいると語った。

ペレス警察官は動画の中でベネズエラ国民に対し、マドゥロ大統領への抗議デモを続けるよう訴えた。