返校

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返校
Detention
ジャンル サバイバルホラーRPGアドベンチャー
対応機種 Microsoft Windows
macOS
Linux
PlayStation 4
Nintendo Switch
Android/iOS
開発元 赤燭遊戲
発売元 台湾の旗 赤燭遊戲
日本の旗 PLAYISM
アメリカ合衆国の旗欧州連合の旗 Coconut Island Games
プロデューサー 姚舜庭
デザイナー 王光昊
シナリオ 江東昱
プログラマー 王瀚宇、徐嘉陞
音楽 張衞帆、楊適維
美術 陳敬恆、何霈君
人数 1人
発売日 [PC]
台湾の旗 2017年1月13日
日本の旗 2017年10月27日
[PS4]
アメリカ合衆国の旗 2017年10月3日
欧州連合の旗 2018年3月1日
[Switch]
台湾の旗日本の旗アメリカ合衆国の旗欧州連合の旗 2018年3月1日
[Android/iOS]
2019年9月5日
対象年齢 CEROD(17才以上対象)
ESRBM(17歳以上)
PEGI18
コンテンツ
アイコン
CERO:暴力、犯罪
ESRB:Blood Violence
エンジン Unity
対応言語 日本語
英語
中国語(繁体字&簡体字)
韓国語
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返校』(へんこう、繁体字中国語: 返校英語: Detention)は、台湾中華民国)の赤燭遊戲英語: Red Candle Games)が開発したホラーゲーム[1][2]2017年1月13日に、パソコンゲームとしてSteamで配信された。日本語版は、同年10月27日PLAYISMにより『返校 -Detention-』として[3]Steam及びPLAYISMにて配信された[2][3]。また、同年10月3日には北米地域においてPlayStation 4版が配信され、2018年3月1日には欧州向けのPlayStation 4版と各国のNintendo Switch版が配信された[4][5]

Steamの売り上げランキングで一時世界第3位となり、大きな注目を集めた[1][6]

作品内容[編集]

戒厳令下で中国国民党強権政治を敷いていた1960年代[注釈 1]の台湾の学校が舞台[1][3]。当局による白色テロを題材として扱っていることから、台湾で大きな話題を呼んだ[1][6]。ゲームの操作方法は、マウスクリックがメイン[2]

元々はジョージ・オーウェルの『1984年』のようなディストピアものを作ろうとしていたが、次第に戒厳令時代の台湾との類似点に気付き方向転換したという[7]。また同じく1960年代の台湾を舞台にした映画『牯嶺街少年殺人事件』などの台湾ニューシネマから多くのインスピレーションを受けたという[8]

劇中音楽として鄧雨賢の作曲した曲が使用されている(望春風雨夜花など)。

あらすじ[編集]

ある日、翠華中学(高級中学、日本における高等学校に相当)の男子学生のウェイは歴史の授業中に居眠りしてしまう。目が覚めると周りには誰もおらず、黒板に台風警報とのみ書かれていた。薄暗い学校の中を彷徨いはじめたウェイは、体育館の壇上で眠る女子生徒レイを発見する。

登場人物[編集]

ウェイ(魏仲廷/ウェイ・チャンティン)
大人しそうな男子生徒。授業中に寝てでもしまったのか教室内で一人目覚め、周囲から誰もいなくなっていることに気づく。
公式サイトで「あなた」とプレイヤーの分身の様に書かれているが、実際にはゲームのほんの序盤部分でしか操作しない。 
レイ(方芮欣/ファン・レイシン)
ウェイが体育館で出会った少女。ゲーム前編での操作キャラクターである実際の主人公。
発見時は壇上で椅子に腰掛け眠っていた。翡翠のペンダントを大切にしている。異界と化した学校から脱出しようと進むうちに、自らの秘密を思い出していく。
実は既にこの世の住人ではなく、かつて、犯した過ちからこの世を彷徨う地縛霊。
生前は普通の学生だったが、元は仲睦まじかった両親が、いつの頃からか激しい喧嘩を繰り返すようになり、塞ぎ込む自分に親身に相談に乗ってくれたチャン先生に好意を抱くようになり、二人でデート染みたことをする内にチャン先生に惹かれていく。しかし、突然チャン先生に冷たくされるようになってしまい、家庭でも母が父の収賄疑惑を密告し、父が政府に連行されてしまう。再び塞ぎ込み、そんな時にチャン先生とイン先生が自分のことで口論しているのを聞いてしまい、その会話から二人の関係を疑い、イン先生を恋敵と勘違いしてしまう。そして、政府から派遣されたバイ教官に読書会のことを密告してしまい、その結果、チャン先生や禁書を読んでいたウェイや他の生徒は捕まり、チャン先生は死刑、友人であるウェイや他の生徒は懲役十五年の判決が下り、イン先生は海外に亡命するという最悪の結果を招いてしまう。その上、国からは密告の功績を讃えられるも、同級生からは「チクリ魔」とイジメを受けるようになり、遂に罪の意識に耐えきれなくなったことで屋上から飛び降りて自ら命を絶ってしまう。死後も自責の念から学校を彷徨い、記憶を取り戻す度に表彰台の上で首を吊るが、死者である為に死ぬことも出来ずに首を括る前後の記憶を無くしては取り戻す行為を永遠に繰り返していた。
モデルは傅如芝中国語版(1932年9月3日-1956年1月13日)とされる。
イン先生(殷翠涵/イン・ツイハン)
学校の先生。歴史担当の女教師。
チャン先生(張明暉/チャン・ミンホイ)
カウンセリングの先生。悩みを抱えるレイに親身になって相談に乗る。
バイ教官(白國峰/バイ・グオフォン)
教師ではなく学校の指導教官。元軍人で、生徒からは嫌われている。

メディアミックス[編集]

書籍版[編集]

  • 2017年2月6日に、外伝にあたる小説『返校 悪夢再続』が台湾で発売された。原著:赤燭遊戲、小説:笭菁。
  • 2021年7月16日に、ゲームの30年後の世界を描いたドラマ版の小説『返校 影集小説』が日本で発売された。小説:李則攸・巫尚益、監修:公共電視、訳:七海有紀。この小説の漫画版『返校 -DETENTION-』が2022年2月28日から電子書籍で作画:OGAにて配信。

映画版[編集]

返校 言葉が消えた日
タイトル表記
繁体字 返校
簡体字 返校
英題 Detention
各種情報
監督 ジョン・スー
脚本 ジョン・スー
製作 リー・リエ
アイリーン・リー
製作総指揮 劉宜佳
出演者 ワン・ジン
ツォン・ジンファ
フー・モンボー
チョイ・シーワン
リー・グァンイー
パン・チンユー
チュウ・ホンジャン
音楽 盧律銘
主題歌 「光明之日」
撮影 チョウ・イーシェン
編集 ライ・シュウション
製作会社 影一製作所
販賣機電影
公開 中華民国の旗 2019年9月20日
日本の旗 2021年7月30日
上映時間 102分
製作国 中華民国の旗 台湾
言語 中国語国語台語
製作費 9300万ニュー台湾ドル
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2019年9月20日に封切られ、観客動員数が公開24日間で100万人を突破する大ヒットとなった[9]。台湾においてゲームが原作の映画が製作されるのは、本作品が初めてであり、台湾の行政機関である文化部鄭麗君文化部長(文化相)は、政府として支持していく考えを示している[6]

屏東県潮州鎮にある廃校舎で撮影が行われ、近隣の学生がエキストラとして参加した[10]

2021年には日本国内でも『返校 言葉が消えた日』の邦題で上映され、DVDとしても販売された(日本語での字幕・吹替あり)[11]

あらすじ[編集]

1962年、台湾は中国国民党による戒厳令下にあり、学校も軍隊のように統制されていた。翠華高校の2年男子であるウェイ・ジョンティンは反乱を計画したとして逮捕され、計画の全容を吐かせる為に過酷な拷問を受けていた。牢で眠る度に悪夢を見るウェイ。

同校3年生の女生徒ファン・レイシンは、真夜中の無人の校舎で目を覚ました。2年生の男子学生ウェイと出会い、共に用務員の幽霊に追われるファン。

「読書会」の仲間の身を案じるウェイ。「読書会」とは国民党によって閲覧禁止とされた本を密かに読み、書き写す学生組織で、創設者はチャン教師だった。数人の教師も同士だったが一人が憲兵に逮捕され、隠していた禁書を安全の為に処分するメンバーの女教師イン。チャン教師がまだ本を隠し持っていると聞いた学生たちは、憲兵がうろつく中、一人づつ順番を決めて受け取りに行く事になった。

憲兵隊の公告が貼られ荒れ果てた校舎を見て、「読書会」の仲間は逮捕されたと絶望するウェイ。防空壕に隠れているかもと見に行く途中に、メンバーの学生・ウェンションが現れ、仲間の一人が裏切り密告したとウェイに告げた。官憲の制服を着た化け物に殺されるウェンション。

防空壕で「読書会」のメンバーやイン教師を見つけるウェイとファン。だがそれは幻(まぼろし)で、イン教師はファンこそが密告者だとウェイに告げて消えた。

夜の学校に来る以前の生活を思い出すファン。ファンとチャン教師はプラトニック・ラブの関係にあった。チャン教師と女教師インの親しげな様子を見て嫉妬したファンは、イン教師が読書会と関わっている事を知り、ウェイから禁書を借りて官憲に渡したのだ。それが愛するチャン教師の逮捕に繋がる行為だったと知った時、現実世界のファンは首を吊って死んだ。

悪夢の中では生きており、ウェイを助けて校門の外に出すファン。だが、ファン自身は後に残り、崩れ落ちる校舎の中に消えて行った。

逮捕され、拷問されている現実世界のウェイ。ウェイは牢内で、刑死する直前のチャン教師から「生き延びろ」と遺言されていた。生きる為に読書会について白状し、釈放されたウェイは後年、解体される直前の高校を訪れ、隠されたままだったチャン教師の禁書を取り出して、挟まれていた愛のメッセージをファンの霊に捧げた。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

  • 監督・脚本:ジョン・スー
  • 製作総指揮:劉宜佳
  • プロデューサー:リー・リエ、アイリーン・リー
  • 撮影:チョウ・イーシェン
  • 編集:ライ・シュウション
  • 音楽監修:盧律銘

ドラマ版[編集]

2020年12月5日、Netflixオリジナルの実写ドラマとして全8話が配信開始された[12]。原作ゲームから30年後の後日談として描かれており、李登輝政権末期・民主化直後の1999年10月頃の台湾の片田舎が舞台。舞台は同じ翠華高校となっている。主人公ユンシアン(劉芸香/リウ・ユンシアン)を李玲葦が演じており、レイ(方芮欣)、ウェイ(魏仲廷)、バイ教官(白國峰)が30年後の姿として出演している。ノベライズ版の邦訳が『返校 影集小説』のタイトルで角川ホラー文庫から刊行されている[13]

あらすじ[編集]

登場人物・キャスト[編集]

  • 李玲葦 - 劉芸香 - とある理由で台北から片田舎の翠華高級中学に転校してきた。
  • 韓寧 - 方芮欣 - 翠華高級中学の旧校舎を彷徨う亡霊。
  • 黄冠智 - 程文亮 - 劉芸香の同級生。寺生まれ。
  • 姚淳耀 - 沈華 - 翠華高級中学の教師。校長の息子。
  • 趙正平 - 白國峰 - 翠華高級中学の教官。
  • 羅光旭 - 沈敬 - 翠華高級中学の校長。
  • 鄭家楡 - 鄧馨予 - 劉芸香の母親。
  • 張翰 - 劉俊賢 - 劉芸香の父親。
  • 蔡瑞雪 - 蘇婕妤 - 二年忠組の班長。
  • 吳昆達 - 魏仲廷 - 廃医院に住む世捨て人。

注釈[編集]

  1. ^ 映画版では1962年、ドラマ版では1969年。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 韓テイテイ、陳俊華 (2017年1月21日). “白色テロ扱ったホラーゲームが話題に 台湾の「暗い歴史」呼び起こす”. 中央通訊社フォーカス台湾. http://japan.cna.com.tw/search/201701210005.aspx?q=%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0 2017年10月28日閲覧。 
  2. ^ a b c 宮本章弘 (2017年10月27日). “PLAYISM、台湾産のホラーゲーム「返校-Detention」が日本語版で登場!”. Impress Watch. https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1088572.html 2017年10月28日閲覧。 
  3. ^ a b c Minoru Umise (2017年10月27日). “台湾の学校が舞台のホラー『返校 -DETENTION-』日本語版が本日配信、ハロウィンセールとあわせて半額で提供開始”. AUTOMATON. http://jp.automaton.am/articles/newsjp/20171027-56712/ 2017年10月29日閲覧。 
  4. ^ Lost (2017年9月30日). 好评恐怖游戏《返校》10月3日登陆PS4. 游戏时光. http://www.vgtime.com/topic/840623.jhtml 2017年10月29日閲覧。 
  5. ^ redcandlegames公式Twitter” (2018年3月1日). 2018年3月25日閲覧。
  6. ^ a b c 江佩凌 (2017年6月23日). “ホラーゲームを映画化 台湾初=戒厳令下の時代扱った「返校」”. 中央通訊社フォーカス台湾. http://japan.cna.com.tw/search/201706230004.aspx?q=%E3%83%9B%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0 2017年10月28日閲覧。 
  7. ^ 鄭景雯 (2017年6月8日). “返校讓玩家感動落淚 公視將改編影視” (html) (中国語). 2018年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月15日閲覧。
  8. ^ “台湾の暗黒時代を背景にしたホラー「Detention」インタビュー”. IGN Japan. (2017年9月29日). https://jp.ign.com/detention/17732/interview/detention 2021年7月16日閲覧。 
  9. ^ “台湾ホラーゲーム原作映画「返校」台湾で大ヒット中。日本での版権はすでに購入されており、国内上映に期待かかる”. (2019年10月20日). https://automaton-media.com/articles/newsjp/20191020-104468/ 2020年4月20日閲覧。 
  10. ^ 郭芷瑄 (2019年9月27日). “返校的陰森校園 是荒廢18年的屏東志成工商”. 中央通訊社. オリジナルの2019年9月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190930215816/https://www.cna.com.tw/news/amov/201909270273.aspx 2021年7月30日閲覧。 
  11. ^ 返校 言葉が消えた日”. 2021年12月7日閲覧。
  12. ^ “返校 - Netflix”. (2020年12月5日). https://www.netflix.com/title/81329144 2021年6月8日閲覧。 
  13. ^ [1]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]