有理曲面

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代数幾何学で、有理曲面(rational surface)は射影平面双有理同値な曲面、すなわち、次元が 2 の有理多様体のことを言う。有理曲面は、複素曲面のエンリケス・小平の分類の中の 10 個の曲面の最も単純なクラスで、最初に研究された曲面であった。

構造[編集]

すべての非特異有理曲面は、極小有理曲面を繰り返しブローアップ(blowing up)することにより得られる。極小有理曲面は射影平面と r = 0 もしくは、r ≥ 2 のときのヒルツェブルフ曲面 Σr である。

不変量は、多重種数で、全て 0 であり、基本群は自明である。

ホッジダイアモンド:

                1
          0          0
     0        1+n        0
          0          0
                1

ここに n は射影平面に対しては、0 であり、ヒルツェブルフ曲面英語版(Hirzebruch surface)に対しては 1 であり、他の有理曲面に対しては 1 よりも大きくなる。

ピカール群は、奇のユニモジュラー格子英語版(unimodular lattice) I1,n である。例外は、偶のユニモジュラ格子 II1,1 のときで、ヒルツェブルフ曲面 Σ2m である。

カステルヌオボーの定理[編集]

グイド・カステルヌオボー英語版(Guido Castelnuovo)は、q と P2算術種数第二多重種数(second plurigenus))とがともに 0 となるような任意の複素曲面は、有理的であることを証明した。これはエンリケス・小平の分類を使い、有理曲面を特定した。Zariski (1958)では、カステルヌオボーの定理が正の標数の体の上でも成立することを証明した。

カステルヌオボーの定理は、任意の単有理性な複素曲面は有理的であることも示した。何故ならば、複素曲面が単有理的であれば不正則数も多重種数も有理曲面により制限されることから、全てゼロとなり、単有理的な曲面は有理的となるからである。次元が 3 もしくはそれ以上の単有理的な複素多様体のほとんどは有理的ではない。標数が p > 0 のとき、Zariski (1958)は単有理的な曲面(ザリスキー曲面英語版(Zariski surface))で有理的ではない例を見つけた。

当時、q も P1 も両方ともゼロとなる複素曲面が有理的であることは明らかではなかったが、フェデリゴ・エンリケス英語版(Federigo Enriques)によって反例であるエンリケス曲面が発見された。

有理曲面の例[編集]

参照項目[編集]

参考文献[編集]

  • Barth, Wolf P.; Hulek, Klaus; Peters, Chris A.M.; Van de Ven, Antonius (2004), Compact Complex Surfaces, Ergebnisse der Mathematik und ihrer Grenzgebiete. 3. Folge., 4, Springer-Verlag, Berlin, ISBN 978-3-540-00832-3, MR2030225 
  • Beauville, Arnaud (1996), Complex algebraic surfaces, London Mathematical Society Student Texts, 34 (2nd ed.), Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-49510-3, MR1406314 
  • Zariski, Oscar (1958), “On Castelnuovo's criterion of rationality pa = P2 = 0 of an algebraic surface”, Illinois Journal of Mathematics 2: 303–315, ISSN 0019-2082, MR0099990