吉浦康裕

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よしうら やすひろ
吉浦 康裕
吉浦 康裕
生年月日 (1980-04-03) 1980年4月3日(44歳)
出生地 日本の旗 日本 北海道[1]
出身地 日本の旗 日本 福岡県福岡市[1]
職業 アニメ監督
脚本家
ジャンル アニメーション
事務所 スタジオリッカ
主な作品
イヴの時間
サカサマのパテマ
アイの歌声を聴かせて
 
受賞
日本アカデミー賞
優秀アニメーション作品賞
2021年アイの歌声を聴かせて
その他の賞
東京国際アニメフェアOVA部門優秀作品賞(2010年)
アヌシー国際アニメーション映画祭長編アニメ部門正式招待(2013年)
東京国際映画祭特別招待作品(2013年)
文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞(2013年)
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吉浦 康裕(よしうら やすひろ、1980年4月3日 - )は、日本アニメーション作家アニメ監督[2]スタジオ六花代表[3]

人物[編集]

福岡県出身。福岡県立筑紫丘高等学校九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部芸術工学専攻卒業[2]。大学在学中から個人作家スタイルでCGを使って制作したオリジナルのアニメーション作品を発表し、その作品群が国内のアニメ賞で評価された[3][4]

アニメーション監督として、オリジナル企画の脚本から動画制作・撮影編集までを手がける個人作家的スタイルを貫く稀有なタイプで、短編・長編問わず、作り込むタイプのアニメを得意としている[2][3]。CGで空間設計をかっちり作り上げ[注 1]カメラワークをつけて、キャラクターを作画するという手法を確立している[3]グループワークを重視しつつ総合的に映像を制御し、原作・脚本・絵コンテ・動画コンテ・演出・2D3DCG・撮影・編集と幅広く作業する[2]

高校生の頃に祖父母に買ってもらったパソコンPower Macと自分の小遣いで買ったStrata Studio Pro3DCGソフト)が映像作りを始めたきっかけ[3]。その頃に映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や『MEMORIES』、ケン・イシイMV『EXTRA』(森本晃司監督)といったデジタル系のアニメを観て、「自分の好きな空間をCGで作りつつ、そこに手描きのキャラクターを載せればアニメを作れるのではないか」と思い、九州芸術工科大学に進学した[3]

文章を書く仕事もしている[2]

台湾のハヤシ百貨店旧台南警察署(いずれも台南市)などを設計した建築技師、梅澤捨次郎は曽祖父にあたり、吉浦は自身の作品には梅澤が台湾に残した建築物の影響が少なからずあると語っている[5][6]

来歴[編集]

小学5年生の夏休みの自由研究にて処女作『竜巻を追って』を発表[注 2]。将来は物語を書く人になりたいと思うようになる[2]。中学時代、ゲーム好きが高じてCGやそれを使った創作活動に興味を持ち始める[2]。高校時代、兄の影響もあって演劇部に所属[2][注 3]。演者だけでなく脚本も担当し、将来は役者劇作家になりたいと思っていたが、卒業する頃には諦めていた[2][注 4]

大学に進学するとアニメーションの個人制作を始め、『キクマナ』『水のコトバ』を国内外で発表[2][3]。TV番組「デジタル・スタジアム」や「DoGA CGアニメコンテスト」の各賞を受賞[3]

大学卒業後は就職せず、フリーでショートアニメの制作を請け負いながら、地元の福岡でアニメーション作家活動を開始[3]。個人制作で『ペイル・コクーン』を完成させてDVDを販売、商業デビューを飾る[2][3]。ちょうどこの頃、新海誠監督が『ほしのこえ』を発表したことで自主制作アニメに世間の注目が集まっていたこともあり、これを機に上京[3]。以降は少人数でのグループワークを主な制作スタイルとしている。

2008年にシリーズWebアニメイヴの時間』(全6話)を発表[2]GyaOニコニコアニメチャンネルなどを通して配信[4]。プロモーションにあたっては、ニコニコ生放送等数々のメディアに出演した。さらに初の劇場作品としてそれらを編集した『イヴの時間 劇場版』[注 5]も全国公開され、これを機にブレイクを果たすことになる[2][4]

2013年、オリジナル劇場アニメ『サカサマのパテマ』を監督し、全国公開[2]

2014年、文化庁「アニメミライ2014」に参加、短編『アルモニ』を監督する[2]

2015年から「日本アニメ(ーター)見本市」(1stシーズン)に参加、短編作品『POWER PLANT No.33』『ヒストリー機関』を劇場とWEBで公開[2]。2016年にはエクストラ作品として初の原作モノとなる『機動警察パトレイバーREBOOT』を制作した[3]

2021年、オリジナル劇場アニメ『アイの歌声を聴かせて』を監督[2]

エピソード[編集]

高校時代に見ていた『新世紀エヴァンゲリオン』の関連作品、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の映像製作参加にあたって、イヴの時間製作初期の激務の頃であったが、「まさか自分が携わることができるとは」と、その感激を知人にもらしている。

ニッポン放送アナウンサー吉田尚記とは飲み仲間である(吉田がパーソナリティーを勤めた『YAGアニメラボ』にゲスト出演経験あり)。

作品[編集]

自主制作[編集]

テレビアニメ[編集]

Webアニメ[編集]

  • イヴの時間(2008年 - 2009年)原作・監督・脚本・絵コンテ・演出・3DCG・撮影・編集・音響監督
  • 日本アニメ(ーター)見本市「POWER PLANT No.33」(2015年)原案・監督・脚本・絵コンテ・演出・レイアウト演出・怪獣アニメーション・撮影・編集
  • 日本アニメ(ーター)見本市「ヒストリー機関」(2015年)原案・監督・脚本・絵コンテ・演出・撮影・編集
  • 日本アニメ(ーター)見本市「機動警察パトレイバーREBOOT」(2016年)監督・脚本・絵コンテ・演出・撮影監督・撮影

OVA[編集]

劇場アニメ[編集]

ゲーム[編集]

受賞歴[編集]

『キクマナ』
『水のコトバ』
  • 第6回 文化庁メディア芸術祭 / 審査委員会推薦作品入作
  • サンタマニアショートフィルムフェスティバル2003 / 審査員奨励賞
  • 東京国際アニメフェア2003 / アニメ作品部門優秀作品賞
  • 第15回 DoGA CGアニメコンテスト / 作品賞
  • ブロードバンド・アート&コンテンツ・アワードジャパン / 映像コンテンツ最優秀作
『ペイル・コクーン』
『イヴの時間』
『サカサマのパテマ』
『パトレイバーREBOOT』
  • VFX−JAPANアワード2017:ショートフィルム部門 優秀賞(2016)
『アイの歌声を聴かせて』
  • Scotland Loves Animation 2021:AUDIENCE AWARD(観客賞)(2021)[7]
  • New York City Film & Television Festival 2021:Best Animation(2021)[7]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 自身は絵描きではないので、それを補完する意味でCGを使っていた。
  2. ^ 自由研究としては異例である小説の発表は教師の想定を凌駕。後に書籍の形式をもって各教室及び友人数人に配布された。なお、配布時期により表紙に変化を施してあり、製作は全て家族の手で行っていた。
  3. ^ この経験が後の作品で自身で行ったアフレコに繋がったとされる。
  4. ^ 大学でも一時演劇部に所属していたが、CG製作の夢に集中する為に退部している。
  5. ^ 第1シーズンの6話+αをまとめた作品。
  6. ^ 大河内一楼と共作。

出典[編集]

  1. ^ a b 「[こう思う・福岡市長選] (5) 映像の街、もっと知って 吉浦康裕さん(福岡市出身)」読売新聞、2010年11月6日付西部夕刊、8頁
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q プロフィール”. スタジオリッカ. 2022年1月5日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 3DCG の夜明け 〜日本のフル CG アニメの未来を探る〜 第15回:吉浦 康裕 氏(アニメーション監督)”. AREA JAPAN (2017年1月25日). 2017年1月25日閲覧。
  4. ^ a b c 『アイの歌声を聴かせて』が掲示したポジティブな未来図 吉浦康裕が描くAIとの共存”. リアルサウンド. 株式会社blueprint (2021年11月18日). 2022年1月5日閲覧。
  5. ^ (繁体字中国語)動畫大師吉浦康裕與林百貨.台南警察署有關係?”. TVBS (2016年3月26日). 2019年8月17日閲覧。
  6. ^ (繁体字中国語)人類相隔在上下顛倒的兩個世界,直到有一天連接天地的通道開啟了...”. World Screen 世界電影雜誌社 (2016年3月25日). 2019年8月17日閲覧。
  7. ^ a b 吉浦康裕監督『アイの歌声を聴かせて』英国の映画祭で観客賞受賞”. ORICON NEWS. オリコン (2021年10月21日). 2022年1月5日閲覧。

外部リンク[編集]