事件記者コルチャック

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事件記者コルチャック』(じけんきしゃコルチャック、原題: Kolchak: The Night Stalker)は、1974年から1975年にかけてアメリカABCで製作され、1976年4月4日から日本テレビ系で全20話が放送された特撮ホラー番組。

ストーリー[編集]

シカゴの新聞社インディペンデント通信社(Independent News Service,INS)の、冴えない中年事件記者コルチャックは、編集長のヴィンセントに怒鳴られながら取材に走り回るが、彼の関わる事件はなぜか怪物心霊現象のからんだものばかり。切り裂きジャック亡霊狼男ゾンビ吸血鬼、果ては宇宙生物までが、次から次へと登場する。コルチャックは果敢な行動で事件の真相をつきとめ、随時テープレコーダーに吹き込んだ取材経過を、タイプライターで記事に起こすのだが、あまりにも常識の範囲を超えた内容のため、いつもボツにされてしまうのだった。

解説[編集]

1972年、ジェフ・ライス(ジェフリー・グラント・ライス)の未出版原作を元に、ホラー作家のリチャード・マシスンが脚本を書いて、90分枠のテレビ映画『魔界記者コルチャック / ラス・ベガスの吸血鬼』(The Night Stalker)が制作され、1972年1月11日の夜に放送された。これが当時のアメリカテレビドラマ史上最高視聴率をとり[1]、翌1973年シアトルを舞台とした続編『魔界記者コルチャック / 脳髄液を盗む男』(The Night Strangler)が作られた。この2本をパイロット版として、1974年に60分枠のシリーズ化がなされたのが、『事件記者コルチャック』である。

特撮技術は、当時の水準から見ても決して高いとは言えなかったが、内容の徹底ぶりから人気は高かった。だが、原案のジェフ・ライスが、シリーズ化は許可していないと訴えたため、わずか20本で制作は打ち切りとなってしまった。

しかし、その制作本数の少なさが、かえって放送終了後もカルトな人気を呼ぶこととなった。ドラマ『Xファイル』も、この『事件記者コルチャック』の影響を色濃く受けて制作されたといわれている。

また、2005年には、同じABCから新キャストでリメイクされた『ナイトストーカー』が放送されている。

なお、2本のパイロット版は、当初日本では未放映で、1989年に『ラス・ベガスの吸血鬼』がビデオ化されたものの、『脳髄液を盗む男』の方は、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の影響で、発売が中止になったといういきさつがある。1997年に、『事件記者コルチャック/ナイト・ストーカー』および『事件記者コルチャック/ナイト・ストラングラー』とタイトルを改めて、ようやく両者そろって販売されている。

日本語吹替は1990年代後半に「事件記者コルチャック 完全版」としてVHS化された時にオリジナルキャストによる追加収録が敢行されたが、この際に吹き替えの存在していたシーンも一部セリフが差し替えられている[2]

スタッフ[編集]

日本語吹替版スタッフ

キャスト[編集]

  • カール・コルチャック:ダーレン・マクギャヴィン(日本語吹替え:大塚周夫
    INSの事件記者。「鳥の巣」と揶揄されるくたびれたカンカン帽がトレードマーク。足で稼ぐ記者らしく、常時スニーカーで、ポケットカメラ、口述筆記兼インタビュー録音用の小型テレコを常備している。警察無線を傍受して現場に先回りしたり、窓ガラスを割って侵入するなど強引な取材行動も多く、警察にも目をつけられているが、真実を追究する姿勢だけは一目置かれている。なお、自己紹介時に「INS、Weekly News」と名乗った事があるため、週刊新聞の模様。
  • トニー・ヴィンセント:サイモン・オークランド(日本語吹替え:木村幌、追加収録:池田勝
    コルチャックの上司。トラブルメーカーであるコルチャックには手を焼いているが、記者としては信頼している。コルチャックの強引な調査が警察の捜査妨害にあたるなどして、拘留された時には、ビンセント本人が身元引受人となる。ため息交じりながら、最終的にはコルチャックに協力する、良き理解者。パイロット版ではビンチェンゾとなっている。
  • ロン・アップダイク:ジャック・グリンナージ(日本語吹替え:富山敬、追加収録:坂東尚樹
    コルチャックのすました同僚。作中に経済面の担当らしい事が窺えるシーンがある。コルチャックを見下したような言動と嫌味が多いが、記者としての評価は、コルチャックの方が高いらしい(ロンの記事は、退屈で当たり障りが無いと評される)。コルチャックとは対照的に、清潔な白いスーツに革靴と言う出で立ちが多い。
  • エミリー・カウルズ:ルース・マックデヴィッド(日本語吹替え:高村章子
    職場の花。通称エミリーおばあちゃん。記者なのか事務員なのかは不明。読者の投稿を処理したり、悩み相談のコーナーを持っているようだ(エミリーが旅行中に、その仕事の代理をコルチャックが命じられるシーンがある)。穏やかな性格で、殺伐としがちなオフィスの清涼剤。パイロット版では、名前だけが登場する。

放送リスト[編集]

出典:ミステリマガジン 2006年8月号 No.606 p.33-37「コルチャック関連作品ガイド」尾之上浩司

  • 1)恐怖の切り裂きジャック (The Ripper):日本放送版第1話
アレン・バロン監督、ルドルフ・ボーチャート脚本、ギル・メレ音楽
  • 2)生き返った死体ゾンビー (The Zonbie):日本放送版第7話
アレックス・グラスホフ監督、ゼキアル・マーコ原案、ゼキアル・マーコ, デイヴィッド・チェース脚本、ギル・メレ音楽
  • 3)骨髄を吸い取る宇宙の怪物体 (They Have Been They Are They Will Be...)日本放送版第19話
アレン・バロン監督、デニス・クラーク原案、ルドルフ・ボーチャート脚本、ギル・メレ音楽
  • 4)闇に牙をむく女吸血鬼 (The Vampire)日本放送版第15話
ドン・ワイズ監督、ビル・ストラットン原案、デイヴィッド・チェース脚本、ギル・メレ音楽
  • 5)満月に出る狼男の恐怖 (The Werewolf):日本放送版第3話
アレン・バロン監督、デイヴィッド・チェース, ポール・プレイドン脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 6)炎に浮ぶ怨霊の影 (Fire Fall / Doppelganger):日本放送版第2話
ドン・ワイズ監督、ビル・S・バリンジャー脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 7)悪魔に魂を売った男 (The Devil's Platform):日本放送版第4話
アレン・バロン監督、ティム・マスラー原案、ドン・ムラリー, ノーム・リープマン, ラリー・マークス, デイヴィッド・チェース, ルディ・ボーチャート脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 8)永遠の宝石を創る魔術師 (Bad Medicine / The Diablero):日本放送版第16話
アレックス・グラスホフ監督、L・フィールド・ニール, ジョン・ハフ脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 9)悪夢が生んだ植物魔人 (The Spanish Moss Murders):日本放送版第6話
ゴードン・ヘスラー監督、アル・フリードマン原案、アル・フリードマン, デイヴィッド・チェース脚本、ギル・メレ, ジェリー・フィールディング, ハル・ムーン音楽
  • 10)よみがえる地底の怪神 (The Energy Eater / Matchmonedo):日本放送版第8話
アレックス・グラスホフ監督、ロバート・アール原案、アーサー・ロウ, ルドルフ・ボーチャート脚本、ジェリー・フィールディング, ルチ・デ・イェサス音楽
  • 11)地獄をさまよう悪霊ラクシャサ (Horror in The Heights / The Rakshasa):日本放送版第18話
マイケル・チャフィ監督、ジミー・サングスター脚本、グレッグ・マクリッチー音楽
  • 12)情念に燃える殺人ロボット (Mr. R.I.N.G.):日本放送版第5話
ジーン・レヴィ監督、L・フォード・ニール, ジョン・ハフ脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 13)凍結細胞から生まれた北極原人 (Primal Scream / The Humanoids):日本放送版第17話
ロバート・シーアラー監督、ビル・S・バリンジャー, デイヴィッド・チェース脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 14)マネキンにのり移った悪霊 (The Trevi Collection):日本放送版第11話
ドン・ワイズ監督、ルドルフ・ボーチャート脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 15)闇に舞う爆走首なしライダー (Chopper):日本放送版第13話
ブルース・ケスラー監督、ロバート・ゼメキス, ボブ・ゲイル原案、スティーブ・フィッシャー, デイヴィッド・チェース, ボブ・ゲイル, ロバート・ゼメキス脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 16)地獄の底からはい上がる女悪魔 (Demon in Lace):日本放送版第9話
ドン・ワイズ監督、スティーヴン・ロード原案、スティーヴン・ロード, マイケル・コツォル, デイヴィッド・チェース脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 17)心臓を抉るアステカのミイラ (Legacy of Terror):日本放送版第14話
ドン・マクドゥーガル監督、アーサー・ロウ脚本、ギル・メレ音楽
  • 18)虐殺の血に飢える亡霊騎士 (The Knightly Murders):日本放送版第12話
ヴィンセント・マッケヴィーティ監督、ポール・マジストレッチ原案、マイケル・コゾル, デイヴィッド・チェース脚本、ジェリー・フィールディング音楽
  • 19)若さを奪うギリシャの妖女 (The Youth Killer):日本放送版第20話
ドン・マクドゥーガル監督、ルドルフ・ボーチャート脚本、ギル・メレ音楽
  • 20)地底怪獣ワニトカゲの影 (The Sentry):日本放送版第10話
セイモア・ルビー監督、L・フォード・ニール, ジョン・ハフ脚本、ジェリー・フィールディング音楽

書籍[編集]

  • 『事件記者コルチャック』(ジェフ・ライス尾之上浩司, 真崎義博訳、ハヤカワ文庫NV)
    TVムーヴィー版1作目の原作小説「ラスヴェガスの吸血鬼」と、リチャード・マシスンがオリジナル脚本を執筆したTVムーヴィー2作目の「脳髄液を盗む男」を原作者のジェフ・ライス自身が小説化した「シアトルの絞殺魔」の2篇を収録。

脚注[編集]

  1. ^ ミステリマガジン 2006年8月号 No.606 p6-11「事件記者コルチャック」興亡史(尾之上浩司)
  2. ^ @newline_maniacs (2022年10月19日). "NewLine Corp.のツイート". X(旧Twitter)より2022年11月9日閲覧

外部リンク[編集]

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