ユニタリ行列

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ユニタリ行列(ユニタリぎょうれつ、: unitary matrix)は、次を満たす複素正方行列 U として定義される。

ここで、I単位行列U* は行列 U随伴行列 (U* = UT)。

なお、実数で構成される行列の随伴は単に転置である[1]ため実ユニタリ行列は直交行列に等しく、直交行列を複素数体へ拡張したものがユニタリ行列とも言える。

性質[編集]

  • 正方行列である。
  • 正規行列である。
  • 任意のベクトル x に対しユニタリ行列による変換は等長変換 (isometry) である。‖ Ux ‖ = ‖ x ‖
  • 正則であり、逆行列U−1 = U*
  • 対角化可能(正規行列であるから)
  • 固有値の絶対値は 1|λ| = 1(つまり、すべての固有値は複素平面の単位円上に存在する)
(証明)Ux = λx なる λ が固有値。‖ Ux ‖2 = |λ|2‖ x ‖2 また ‖ Ux ‖2 = (Ux)*Ux = x*U*Ux = x*Ix = ‖ x ‖2
(証明)1 = det(I) = det(UU*) = det(U)det(UT) = det(U)det(U) = det(U)det(U) = |det(U)|2

同値条件[編集]

以下の条件は、複素正方行列 U がユニタリ行列であることと同値である:

  1. 行列 UUU* = I を満たす[2]
  2. 行列 UU*U = I を満たす[2]
  3. 行列 U は正則行列で U−1 = U* を満たす
  4. 行列 U の列は正規直交基底である[2]
  5. 行列 U の行は正規直交基底である[2]
  6. 行列 U等長写像である
  7. 行列 U は単位円上に固有値をもつ正規行列である

脚注[編集]

  1. ^ 西田吾郎 2009, p. 133.
  2. ^ a b c d 西田吾郎 2009, p. 134.

参考文献[編集]

  • 西田吾郎『線形代数学』京都大学学術出版会、2009年6月22日。ISBN 978-4-87698-757-3 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]