ハウス・オブ・M

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"ハウス・オブ・M"
出版社マーベル・コミック
ジャンルスーパーヒーロー
クロスオーバー作品
タイトル
ブラックパンサー英語版 (vol. 4) #7
ケーブル・アンド・デッドプール英語版 #16-17
キャプテン・アメリカ (vol. 5) #10
Decimation: House of M - The Day After英語版 #1
エクスカリバー英語版 (vol. 3) #11-14
ファンタスティック・フォー: House of M #1-3
House of M #1-8
超人ハルク (vol. 3) #83-85
アイアンマン: House of M #1-3
Mutopia X #1-4
ニュー・サンダーボルツ英語版 #11
ニュー・X-メン英語版 (vol. 2) #16-19
ザ・パルス英語版 #10
ザ・パルス: House of M Special #1
Secrets of the House of M #1
スパイダーマン: House of M #1-5
アンキャニー・X-メン #462-465
ウルヴァリン (vol. 3) #33-35
製作者
ライターブライアン・マイケル・ベンディス
ペンシラーオリビア・コワペル
インカーTim Townsend
着色Frank D'Armata
ハードカバーISBN 0-7851-2466-7

ハウス・オブ・M』(House of M)は、マーベル・コミックから2005年より出版された全8号のリミテッド・シリーズで、クロスオーバーストーリーである。ライターはブライアン・マイケル・ベンディス、イラストレーターはオリビア・コワペルである。『プラネットX』、『アベンジャーズ・ディスアッセンブルド』から続き、子供と力を失い精神を病んだミュータントヒーローのスカーレット・ウィッチが能力を暴走させ、世界を改変させるストーリーである。スカーレットの父のマグニートーや双子の弟のクイックシルバーも登場する。

マーベルのマルチバース(多元宇宙)英語版では、本作品の舞台はアース-58163と設定されている。(正史世界はアース-616である)

出版史[編集]

2005年6月に第1号が発売されて233000部以上を売り上げ、第2号と合わせてその月で1位、2位を獲得した[1]。11月に出た最終第8号は135462部を売り上げ、第3位の成績となった[2]。全8号の本編に加え、『エクスカリバー』第13-14号、『アンキャニー X-メン』、 『ニュー・X-メン: アカデミー・X』、『ウルヴァリン』とクロスオーバーした他、『ファンタスティック・フォー: ハウス・オブ・M』、『ジ・インクレティブル・ハルク: ハウス・オブ・M』、『アイアンマン: ハウス・オブ・M』、『ミュートピア・X: ハウス・オブ・M』、『スパイダーマン: ハウス・オブ・M』といったミニシリーズも制作された。

主な登場キャラクター[編集]

アストニッシングX-MEN
ジェノーシャ国
  • プロフェッサーX
  • マグニートー
  • スカーレット・ウィッチ
  • クイックシルバー
ニューアベンジャーズ
オールド・アベンジャーズ
  • イエロージャケット(ハンク・ピム)
  • ワスプ
  • ワンダーマン
  • ミズ・マーベル
  • ファルコン
  • シー・ハルク
その他

あらすじ[編集]

発端[編集]

スカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフはチャールズ・エグゼビア教授(プロフェッサーX)と父のマグニートーと共にアフリカ東部の島国・ジェノーシャで療養生活を送っていた。プロフェッサーXは、テレパシー能力でワンダを眠らせ、現実改変能力を抑えるのには限界が来ているとマグニートーに話す。マグニートーは自分の夢と野望のために自分の子供を不幸に陥れたことで自責の念に囚われていた。

場面は変わり、エグゼビアはアベンジャーズ・タワーにX-メンアベンジャーズを招集し、ワンダ・マキシモフの今後の処置についての会議を開いた。エマ・フロストはワンダを処分するしかないと結論付ける一方、キャプテン・アメリカは他の方法を捜すべきだと述べる。フロストはさらに、ワンダの暴走が世間に知れ渡ったら人間とミュータントの関係は石器時代まで逆戻りしてしまうと主張する。話は平行線を辿り一向に結論が出ないため、一同は彼女と話し合うためにジェノーシャへ向かう。

同じ頃、ジェノーシャでは取り乱したクイックシルバーがマグニートーに詰め寄り、ニューヨークでX-メンとアベンジャーズがワンダを殺すことを企てていると話す。マグニートーはどうしていいかわからず、ただすすり泣く息子と眠らされている娘を見るだけだった。

その後、エグゼビアと2つのグループがジェノーシャに到着するが、ワンダの姿がどこにも見当たらない。そして突如、世界が真っ白になる。

新世界[編集]

光が消えると、世界は大きく変化していた。サイクロップスとエマ・フロストは結婚し、ドクター・ストレンジは心理学者となり、アスリートで俳優のピーター・パーカー(スパイダーマン)グウェン・ステイシーと結婚して子供をもうけ、キャロル・ダンバースはアメリカを代表するスーパーヒーローであるキャプテン・マーベルとして活動し、ガンビットは犯罪者として追われ、スティーブ・ロジャースは老人となり、そして皆改変前の世界の記憶を失っていた。しかし、これまでの生涯の記憶を全て取り戻したウルヴァリンだけが元の記憶を保持し、世界が変わったことを認知した。この世界ではホモ・スーペリアー(ミュータント)とホモ・サピエンス(人間)の立場が逆転しており、マグナス一族(ハウス・オブ・M)が王族となって支配していたのだ。

ウルヴァリンはX-メンとアベンジャーズを捜し始める。まずはウェストチェスター郡にある恵まれし子供らの学園へ向かったが、プロフェッサーXは見当たらない。次にウルヴァリンはトニー・スタークを探しにスターク・タワーへ行くが、そこで元の世界では「仲間」だったレッドガード(S.H.I.E.L.D.のエリートミュータント集団)に遭遇する。逃亡したウルヴァリンは人間を守るためにレジスタンス活動をするルーク・ケイジと出会い、更に現実世界で死んだはずのホークアイ(クリント・バートン)を見て衝撃を受ける。

ウルヴァリンはなぜ自分だけがこの世界がスカーレット・ウィッチによって創られたものであることを知っているのか、理由をケイジ達に説明する。彼はマグニートーが皆の望みが反映された世界を創造する為に、彼女を利用したのだと推理した。マグニートーはミュータントを支配する世界、スパイダーマンは罪悪感から自由になる生活、ウルヴァリンは失われた長年にわたる全ての記憶を取り戻したのだ。ケイジは、昨日出会いウルヴァリンと全く同じ話をするレイラ・ミラーという少女を紹介する。彼女もまた元の世界を知る者で、ヒーローたちの元の記憶を呼び覚ます能力を持っていたのだ。ヒーローたちを目覚めさせるため、ウルヴァリン達は新しい人生を送るアベンジャーズやX-メンの下を訪れるのだった。

目覚め[編集]

ウルヴァリンとレジスタンスたちはサイクロプス、スパイダーマン、シャドウキャット、ドクター・ストレンジ、アイアンマン、シー・ハルクデアデビル、ローグ、ミスティークナイトクローラー、トード、スパイダーウーマンを含む多くのヒーローたちの記憶を呼び起こす。元の世界で自分が死んだと知ったホークアイは姿を消した。そして一同はマグニートーと決着をつけるためにジェノーシャへと向かう。

ジェノーシャではマグニートーが記念行事の為に世界各国から代表者を招待しており、そこへヒーローたちが攻撃を仕掛ける。その一方でクローク、エマ・フロスト、ドクター・ストレンジ、レイラ・ミラーがエグゼビアを捜していた。彼らは、エグゼビアの名前が彫られた墓石を見つけ、クロークがその下に潜って身体を探すが、何も見つからなかった。

決戦[編集]

マグナス一族とヒーロー達が激しい戦闘を繰り広げる中、ドクター・ストレンジは離脱してワンダと子供たちが居る塔へと向かう。彼はこの狂気の原因を明らかにするためにワンダに問いかけ、そして彼女はストレンジに世界が変わる直前の光景を見せる。そこには、クイックシルバーがワンダに誰も幸せに過ごせる完璧な世界を創造することを促している姿が映っていた。この事実を知ったエマ・フロストは、ドクター・ストレンジに、さらにチャールズ・エグゼビアの居場所について質問するように指示した。だがそのとき、ワンダは背後から弓矢で射ぬかれた。

矢を放ったのはワンダに激昂するホークアイだった。ホークアイはさらにもう一度矢を向けようとするが、その瞬間彼の肉体は消滅させられる。再びワンダが暴走を始めようとしたそのとき、レイラ・ミラーによって現実の記憶を取り戻したマグニートーが現れ、世界を弄んだ上に自分の名を騙ったクイックシルバーに激怒し、絶命させてしまう。クイックシルバーの亡骸を抱えたワンダはマグニートーに「私たちはただのフリークよ!それがミュータントよ!あなたが望んだ世界は皆を不幸にしただけ!それなら…ミュータントなんていなくなればいい…」と言い、そしてまたも世界は真っ白になった。

M-デイ[編集]

目が眩むような閃光がおさまると世界は外観上は元通りになり、ピーター・パーカーがベッドで目覚めると側にメリー・ジェーンが居た。アベンジャーズはその夜何が起こったかを理解するために集まるが、一部の者達を除いて多くの者が再び記憶を失っていた。話し合いの最中そこにドクター・ストレンジが現れ、「世界は元に戻っていない」と言う。そこに、破壊された旧アベンジャーズマンションより侵入警報が発せられる。アベンジャーズが見た物は、壁に矢で張り付けられたホークアイのコスチュームと弓矢であった。戦死したはずのホークアイは復活したのか?

同じ頃、恵まれし子供らの学園でエマ・フロストたちが目覚め、学園のミュータントたちのほとんどがその能力を失っていることに気づく。さらに、エマがセレブラでスキャンしたところ、世界中に数百万いたはずのミュータントの大部分が同じように能力を失くしていることが判明する。すぐにX-メンはジェノーシャへ飛んだが、そこに居たのは能力を失くしたマグニートーだけで、ワンダもクイックシルバーの姿も見えなかった。

この日起こったミュータント能力消失現象は、後に「M-デイ」と呼ばれることとなる。また、この日ミュータントから消え去ったパワーが原因で引き起こされた騒動がニューアベンジャーズの「コレクティブ編」で描かれることになった。

ディシメーション[編集]

2005年末、「ハウス・オブ・M」でミュータント能力を失ったヒーロー・ヴィランたちのその後を描く『ディシメーション』が出版された。

タイ・イン[編集]

『ハウス・オブ・M』は以下のコミックとストーリーの繋がりがある。

コレクテッド・エディション[編集]

トレード・ペーパーバック[編集]

タイトル 収録作品 発行日 ISBN
House of M: Excalibur - Prelude Excalibur #11-14 2005年8月 978-0785118121
House of M House of M #1-8; The Pulse: House of M Special 2006年2月 978-0785117216
House of M: Incredible Hulk Incredible Hulk #83-87 2006年2月 978-0785118343
House of M: Fantastic Four / Iron Man Fantastic Four: House of M #1-3; Iron Man: House of M #1-3 2006年7月 978-0785119234
House of M: Uncanny X-Men Uncanny X-Men #462-465; first half of Secrets of the House of M 2006年1月 978-0785116639
House of M: Mutopia X Mutopia X #1-5 2006年2月 978-0785118114
House of M: New X-Men New X-Men: Academy X #16-19; second half of Secrets of the House of M 2006年2月 978-0785119418
House of M: Spider-Man Spider-Man: House of M #1-5 2006年3月 978-0785117537
House of M: World of M, Featuring Wolverine Wolverine #33-35; Captain America #10; Black Panther #7; Pulse #10 2006年3月 978-0785119227
House of M: Avengers House of M: Avengers #1-5 2008年7月 978-0785127505
House of M: Civil War Civil War: House of M #1-5 2009年5月 978-0785133803
House of M: Masters of Evil House of M: Masters of Evil #1-5 2010年2月 978-0785141662

ハードカバー[編集]

タイトル 収録作品 発行日 ISBN
House of M, Vol 1 House of M #1-8; The Pulse: House of M Special 2008年1月 978-0785124665
House of M, Vol 2: Spider-Man, Fantastic Four, and X-Men Spider-Man: House of M #1-5; New Thunderbolts #11; Fantastic Four: House of M #1-3; Black Panther #7; Uncanny X-Men #462-465 2009年12月 978-0785138815
House of M, Vol 3: Wolverine, Iron Man, and Hulk Wolverine #33-35; Iron Man: House of M #1-3; Incredible Hulk #83-87; Hulk: Broken Worlds #1; Captain America #10; Pulse #10; Cable & Deadpool #17 2010年2月 978-0785138822
House of M, Vol 4: No More Mutants Mutopia X #1-5; New X-Men #16-19; Exiles #69-71; House of M: The Day After; Giant-Size Ms. Marvel #1 2010年1月 978-0785138839

日本語版[編集]

ヴィレッジブックスより発売されている。

タイトル 収録作品 訳者 発行日 ISBN
X-MEN/アベンジャーズ ハウス・オブ・M House of M #1-8; The Pulse: House of M Special 石川裕人
御代しおり
2010年10月 978-4863322837

スペイン王室とのトラブル[編集]

2005年に発売の『The Pulse: House of M Special』の表紙として当初発表されたイラスト(Mike Mayhew作画)は、スペイン王室が著作権を所有するスペイン国王フアン・カルロス1世の写真を模写してマグニートーに書き換えたものであったため、スペイン王室の法務担当者よりマーベルに抗議が入り[3]、実際の表紙は白いスーツを着たマグニートーに差し替えられた。

ただし、スペイン国王に酷似したマグニートーの礼服自体は『ハウス・オブ・M』本編でそのまま使用されており、2011年にカプコンより発売となったゲーム『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』ではマグニートーのアレンジコスチュームとしてスペイン国王風衣装がダウンロード販売されると発表。しかし、スペインのマスコミによって自国国王に酷似した衣装のゲーム内で使用されることが報道され問題化したため[4]、マグニートーのアレンジコスチュームの販売は中止となった[5]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ House of M Boffo at 233K”. icv2.com (2005年7月25日). 2008年4月21日閲覧。
  2. ^ Top 300 Comics Actual–November 2005”. icv2.com (2005年12月19日). 2008年4月21日閲覧。
  3. ^ House of M vs. The House of Spain !!!(UncannyXmen.Net、2005年4月22日)
  4. ^ Magneto's DLC costume in Ultimate Marvel vs. Capcom 3 inspired by King of Spain(EventHubs.com、2011年11月26日)
  5. ^ ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3「ダウンロードコンテンツ」(カプコン公式サイト、2012年3月2日閲覧)

外部リンク[編集]