オクルス

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パンテオンのオクラス(頂上の明るい部分)

オクルス(oculus、複数形は oculi)は、元々はラテン語で「眼」を意味し、ローマパンテオンドーム頂上部にある円形の開口部(天窓)の名前として使われ[1][2]、似たような形状の丸い窓や開口部を指すのに使われる。眼窓あるいは円形窓とも。

パンテオンのオクルスは単なる開口部なので外気が入ってくるし、雨が降ればそれが床を濡らし、排水路を通って排水されるようになっている。右の図ではオクルスから入ってきた日光がドームの内面を照らしている。このように明るく丸い形状が目に似ていることから、このように呼ばれている。

16世紀以降、古典建築の特徴である円形窓は、フランス語の oeil de boeuf(牛の目)という名称で呼ばれることが多くなった。そのような円形窓や卵形窓は、建物の主要な窓の配置と競合することなく、ファサードにおける中二階の存在を示している。ドーマーに円形窓を設置する様式はフランス古典建築の特徴で、17世紀に始まった。構造上の理由から、船の舷窓にも円形窓がよく使われている。

考古学では、オクルスは西ヨーロッパ先史時代の芸術品に見られる模様の一種を指す。一対の円形または螺旋形であり、目を表していると解釈されることが多く、土器や陶器、像、巨石記念物によく見られる。オクルス模様は、神や女神が注意深く見つめていることを表しているとされ、特に新石器時代の遺物によく見られる。

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脚注[編集]

  1. ^ イタリアルネサンスでドーム建築が復活した際、単なる開口部だったオクルスが採光の機能も兼ねたクーポラ(ドーム頂上の小ドームまたは尖塔)になった。
  2. ^ 五十嵐太郎、‎東北大学五十嵐太郎研究室、‎市川紘司『窓から建築を考える』彰国社、2014、112頁。