本州中、南部、四国、九州、さらに台湾、中国に分布します。木材および葉から樟脳油を採取するために造林されています。木材の利用はむしろ主目的ではないでしょう。かって樟脳は衣服の防虫剤として広く用いられ、箪笥の臭いの主でした。近年の防虫剤は合成化学製品です。縁日で小さなセルロイド製の舟を売っていたことがありますが、その後部に小さな樟脳のかけらをつけて水に浮かすと生き物のように小さな舟が動いたのを記憶している人がいるのではないでしょうか。 ■木材 この木材のもっとも特徴的な性質は、強い樟脳の香りがあることです。この香りに防虫効果があるため、箪笥などの家具類に利用されて来ています。心材の色はどちらかといえば、不安定で、黄褐色、紅褐色、部分的に緑色を帯びた褐色などです。辺材は淡色ですが、心材との境ははっきりしません。年輪はかなりわかります。肌目は粗く、木理は交錯していることが多いです。また、幹の形が悪かったり、凸凹があるため、板にすると種々の美しい“もく”が出て来ます。気乾比重は0.41~0.52(平均値)~0.69で、やや軽軟ないし中庸で、仕上がりは中庸です。 ■用途 器具、家具、建築(社寺など)、楽器、箱、彫刻、ひきもの、木魚などがあります。美術の展覧会などへ行かれたとき、木材の彫刻の作品のおいてある部屋で、強い芳香に気が付かれることがあるでしょう。これはクスノキで作った作品が中にあるからです。最近でもときどき洋服箪笥などで、その扉を開けると樟脳の芳香のするもので出会うことがあります。これは内貼りにクスノキの板あるいは合板を貼っているものです。これによって、防虫効果を期待しているのでしょう。 |