民衆扇動罪とは? わかりやすく解説

民衆扇動罪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 08:55 UTC 版)

民衆扇動罪(みんしゅうせんどうざい、: Volksverhetzung)とは、ドイツ刑法典130条に定められている罪。特定の民族宗教などの集団に対する憎悪をかき立てて、暴力を誘発するような行為を禁止する規制で[1]ヘイトスピーチ[注釈 1]ホロコースト否定・ナチス支配の賛美などに対する罪[3]。ドイツ刑法典の「公共の秩序に対する罪」の章に含まれ、その保護法益は「公共の平穏」とするのが定説だが、「人間の尊厳」とする学説もある[4]


注釈

  1. ^ ドイツにおけるヘイトスピーチの規制については、刑法185条の(集団)侮辱罪もある[2]
  2. ^ 2022年現在、最終改正は2020年改正・2021年発行である[5][6]
  3. ^ ドイツ基本法5条は、第1項で意見表明の自由を保障し、第2項で一般法律による制約を認めている。これに対し刑法130条4項は、特定の意見を考慮する性格上、一般法律に該当するか疑問があり、意見表明の自由を保障する基本法5条との整合性に疑義が唱えられていた[14]
  4. ^ 被害者は、侮辱罪などを根拠に相手を告訴しなくてはならなかったが、告訴するには、それらが「自分」に向けられ「自分が傷ついた」事を証明しなくてはならず、ハードルが高かった[1]
  5. ^ へ―トラーは1952年の上級審で有罪となっている[18]
  6. ^ 民衆扇動罪は、反ユダヤ主義に対抗するために成立したが、保護対象をユダヤ人に限定すると汚名特権になりかねないという批判から「住民の一部」という表現に落ち着いた[19]
  7. ^ 1995年にデッケルトには民衆扇動罪により5年の禁固刑の判決が下された[21]

出典

  1. ^ a b c d 武井彩佳 2021, p. 187-188.
  2. ^ 櫻庭総 2012, p. 19-20.
  3. ^ a b 鈴木秀美 2016, p. 1365-1366.
  4. ^ 鈴木秀美 2016, p. 1348-1350.
  5. ^ "Paragraf 130. Volksverhetzung". Strafgesetzbuch für das Deutsche Reich vom 15. Mai 1871 / lexetius.com. 2021年7月7日閲覧
  6. ^ Jürgen Schäfer, Stephan Anstötz In: Münchener Kommentar zum StGB. 4. Auflage 2021, StGB § 130 Rn. 19.
  7. ^ a b c d 毛利透 2014, p. 222.
  8. ^ a b 鈴木秀美 2016, p. 1343-1344.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 鈴木秀美 2016, p. 1338-1343.
  10. ^ a b c 鈴木秀美 2016, p. 1350-1352.
  11. ^ 鈴木秀美 2016, p. 1352-1353.
  12. ^ a b c 武井彩佳 2021, p. 198-200.
  13. ^ a b c d e 武井彩佳 2021, p. 189-190.
  14. ^ 鈴木秀美 2016, p. 1Ⅰ359-1363.
  15. ^ 鈴木秀美 2016, p. 1359-1363.
  16. ^ 鈴木秀美 2016, p. 1364-1365.
  17. ^ a b 櫻庭総 2012, p. 21.
  18. ^ 鈴木秀美 2016, p. 1367.
  19. ^ a b c d 櫻庭総 2012, p. 21-23.
  20. ^ a b 櫻庭総 2012, p. 23-24.
  21. ^ "Holocaust-Lüge: NPD-Mann muss in Haft". Hessische/Niedersächsische Allgemeine. 3 February 2012. 2022年4月4日閲覧
    "Deckert-Urteil: „Richtige Konsequenzen gezogen"". Focus. 17 (1995). 9 September 1995. 2020年9月27日閲覧
    "Ex-NPD-Chef Deckert in Untersuchungshaft: Nach erstem Hafturteil neue Ermittlungen". Neues Deutschland. 10 November 1995. 2022年4月4日閲覧
    "Rechtsextremist Günter Deckert: Erst Gefängnis, dann Jurastudium". Spiegel Online. 30 April 2001. 2022年4月1日閲覧
  22. ^ 櫻庭総 2012, p. 24-25.
  23. ^ a b c d e 鈴木秀美 2016, p. 1344-1348.


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