アートミックとは? わかりやすく解説

アートミック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/07 22:48 UTC 版)

有限会社 アートミックARTMIC)は、1978年から1997年まで東京都内に存在したアニメの企画を主な事業内容とした日本の企業。社名は、ART-Modern Ideologist for Creationの頭字語である。

略歴

タツノコプロなどでプロデューサーを務めていた鈴木敏充が、独立後の1978年に設立。1980年に社名を「ウィズコオポレイション」とするが、翌年にはアートミックに戻す。なお、本社は1995年12月時点で東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目28番3号に所在していた(この時点で、アートミック本社が入居していた「ジャルダン吉祥寺」は、2020年3月現在においても現存している)。

SF、メカ物を中心に企画・制作・デザイン・プロデュースなど多方面で活動し、玩具やガレージキット、広告モデルなど立体製作にも関わった。柿沼秀樹荒牧伸志らのメカニック(変形ロボット、パワードスーツ)や園田健一の活発な少女キャラクターを売りに、1980年代後半のOVA興隆期を牽引。特に『メガゾーン23』はアニメとして当時記録的な販売成績を残し、「メカと美少女」というOVA市場の流行を決定付けた。

しかし1990年代は新たなヒット作に恵まれず、バブル崩壊以降の資金繰りの悪化、OVA『ガルフォース・ザ・レボリューション』の営業的失敗で1997年に倒産。アニメ事業は少ないながらも最後まで黒字だったが投資の失敗、鈴木ほかスタッフの交際費(遊興費)による負債に耐えきれず、黒字ゆえ通常の倒産手続きに移行できす、鈴木は表舞台から隠遁した。手掛けた作品の版権の多くは、AICに引き取られた。

主なスタッフ

鈴木敏充
代表取締役。タツノコプロ時代は『ヤッターマン』・『とびだせ!マシーン飛竜』などのプロデュースを手がける。企画・プロデュースの他にアニメ作品の原作や脚本、ノベライズを手がけた。最もその異才ぶりを示したのはイラストレーターとしてであり、今井科学の専務取締役と親族関係〔伯父または叔父と甥の間柄〕であることから依頼を受けた『超時空要塞マクロス』や自社企画作品『銀河の鷲 メガロ・ザマック』・『機甲虫隊ビートラス』・『機甲創世記モスピーダ』のプラモデルのパッケージアートでその実力を知らしめた。イラストレーターとしては日本国内以上に日本国外で高く評価されていた様で、日本国外の模型メーカーなどから専属としての招聘があった際はかなり高額の成果報酬保証〔ギャランティー〕を提示されたという逸話がある。
本名は鈴木敏道。アートミック倒産後の活動については不明だが、彼の実子〔息子〕なる者のTwitter上の実父死亡告知[1]によれば、「(2020年を遡り)ここ数年は絵描きとして収入を得ていたようです。」[2]との発言があり、2020年1月末に他界したと報告され、後述の宮尾岳のTwitterによれば、2020年初頭に死去したという[3]
柿沼秀樹
メカニックデザイナー、脚本家、小説家。メカデザイナーとしての代表作は『機甲創世記モスピーダ』の敵・インビット側メカデザインや当時渡米していた荒牧に代わり、担当した『メガゾーン23』のクリンナップなど。これらの仕事の後、徐々に脚本や小説の執筆といった著述方面へとメインの仕事をシフトしていった。原作や脚本を担当した『ガルフォース』と『デトネイター・オーガン』では自らメカデザインも兼任している。
現在は自身が代表の企画会社ダーツに所属。『ジャンクフォース』シリーズなどを小説やコミックで送り出す一方、雑誌や書籍の編集および記事の執筆でも辣腕を振るっている。
荒牧伸志
メカニックデザイナー、演出家。『機甲創世記モスピーダ』のライドアーマーや『メガゾーン23』シリーズのガーランド、『バブルガムクライシス』のモトスレイブといったバイクモチーフの可変メカのデザインを手掛けた。他のメカデザイン担当作品としては『機甲虫隊ビートラス』などが挙げられる。『メタルスキンパニック MADOX-01』で監督(クレジットは「原案・監督」および「メカニックデザイン」)を手がけて以降演出方面でも活躍し、『メガゾーン23 PartIII』でも監督を務めた。
現在ではメカデザインのほかフルCGアニメ『APPLESEED』とその続編『EX MACHINA』の監督を務めている。
園田健一
デザイナー。大阪での同人活動後、上京して一時期所属。『ガルフォース』や『バブルガムクライシス』といったアートミックを代表する作品でキャラクターとメカ、両方のデザインワークに携わった。
監督兼デザイナーとして手がけた『ライディング・ビーン』は、漫画家としての園田を代表する作品のひとつ『GUNSMITH CATS』の事実上のベースとなった。
夢野れい
デザイナー。園田健一の同人仲間で、その縁から入社。漫画家としても活動していた。『メガゾーン23 PartIII』では物語中でしばしば登場するアミューズメント施設「サイコランド」などのデザインを手がけているが、作品が展開されていたのと同じ時期に漫画単行本『サイコランド』が出版されている。
山根公利
メカニックデザイナー。初めて履歴書を提出して入社している[4][要ページ番号]。珍しい所では自身が関わっていない『機甲創世記モスピーダ』が後年に映像ソフト化された際の版権イラスト原画を描いている。
現在はフリーとして活躍。
小泉聰
雑誌編集デザイン。『アートミック・デザインワークス』など、バンダイ発行のものを中心に自社作品のムックで編集を担当。この他トニーたけざきの漫画『A.D.POLICE 25:00』にも編集者として携わっている。『バブルガム・クラッシュ!』ではプロデューサーを務めた。
企画会社ダーツを経て現在フリー、吉祥寺怪人(きっしょうじ かいと)名義で作品企画や雑誌・書籍の編集に携わっている。
村上豊
ロゴデザイン・彩色設計・セルワークなど。『機甲創世記モスピーダ』のアイキャッチや『メガゾーン23』の宣伝などで使われた、キャラクターシルエットを生かしたスタイリッシュなロゴも村上の手による。
アートミック倒産後は1998年4月17日に有限会社エム・クリエイトを設立し[5]、個人でアートミックの負債を返済した。2005年6月29日、病没。享年58歳[6]。その後、エム・クリエイトは2代目社長が引き継いだが、2019年5月31日をもって解散している[7]
窪田正義
『モスピーダ』や『メガゾーン23』(PartI)でメカ・スーパーバイザーとして携わった後に独立。他には『マクロス』のプラモデルをバンダイが再発売した際に同梱されたリーフレット(模型制作の簡単なアドバイスなどが記述されたもの。挿絵は園田健一が担当)を手がけた。現在は六月十三のペンネームでアニメやゲームのプランナー・プロデューサーとして活動中。代表作『卒業 〜Graduation〜』、『センチメンタルグラフティ』など。
宮尾岳
『機甲虫隊ビートラス』のキャラクターデザインや『モスピーダ』の版権イラスト、『メガゾーン23』(PartI)のメカニックデザインおよびイメージボードなどを手がけた後に独立。やまとから発売された「1/15完全変形ガーランド ファクトリーカラー」は、宮尾が第1作展開当時に描いたガーランドのロールアウト直後をイメージした彩色イラストのカラーリングをモチーフとした商品である。
窪田の関わったメディアミックス作品『魔物ハンター妖子』のキャラクターデザインなどを経て、現在は漫画家として活躍。
宮尾の描いた『メガゾーン23』のイメージボードは、アートミック倒産後にそのほとんどがYahoo!オークションに出品されてしまい、散逸した。
中西明
『モスピーダ』に関わった後、独立。少年キャプテン誌で来留間慎一のペンネームで漫画家としてデビューし、アクションを機軸とした作品を発表。現在は主に秋恭摩名義で、アニメ・特撮作品のデザインワークなどでも活躍している。

主な作品

テレビアニメ

アニメ映画

OVA

ゲームソフト

  • ヘルファイアーS』(デザイン)※PCエンジン用ソフト
  • 『ステラアサルト』(メカニックデザイン)※SEGA スーパー32X対応ソフト
  • ガンバード』(アニメーション製作)※彩京のシューティングゲーム

特撮テレビドラマ

工業品

関連項目

脚注

  1. ^ @aymsn62884537の2020年9月10日のツイート”. Twitter. a yms (@aymsn62884537) (2020年9月10日). 2022年9月25日閲覧。
  2. ^ @aymsn62884537の2020年9月13日のツイート”. Twitter. a yms (@aymsn62884537) (2020年9月13日). 2022年9月26日閲覧。
  3. ^ @GAKUJIRAの2020年9月5日のツイート2020年9月7日閲覧。
  4. ^ 『アートミック・デザインワークス』(バンダイ刊)より。
  5. ^ エム・クリエイトについて”. エム・クリエイト. エム・クリエイト. 2020年9月7日閲覧。
  6. ^ 関係各位”. エム・クリエイト 日記. エム・クリエイト (2005年6月30日). 2020年9月7日閲覧。
  7. ^ 長い間ありがとうございました”. エム・クリエイト 日記. エム・クリエイト (2019年6月17日). 2020年9月7日閲覧。




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