AI2.0
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AI2.0(エーアイ・ツー・ポイント・ゼロ、エーアイにいてんゼロ)は、経済学者の大澤昇平が2019年に提唱した、次世代人工知能像および産業ビジョンである。初出は著書『AI救国論』(2019年)および『覚醒せよ日本人! AI2.0時代の生き残りをかけたゲリラ戦が始まった』(2020年)であり、著者の大澤はその中で、日米の産業構造のマクロ比較による「有形固定資産の限界効用はゼロに漸近する」という共有経済仮説に依拠し、従来の自動車産業におけるサプライチェーンや流通業の商社等、既得権益的で変化の少ない産業ヒエラルキーを前提とした「AI1.0」に対し、ウェブ2.0的なユーザー生成コンテンツ(UGC)、ブロックチェーンを用いたトークンエコノミー、そして生成AI(Generative AI)等の技術革新を中核に位置づけ、「3年後、個人やスタートアップによるエコシステムを主体とした、これまでとは全く異なるAI産業(=AI2.0)が登場する[1]」と予見[2][3]、2022年のChatGPTの登場を皮切りにした生成AIブームの到来を正確に言い当てた。
概要
2010年代後半にディープラーニングが商用化される一方、日本経済は生産性停滞に直面した。『AI救国論』はこうした状況を「AI2.0前夜」と位置づけ、国家競争力の回復の鍵として分散型AI経済の育成を訴えた[2]。続編『覚醒せよ日本人!』では、生成AIの普及で「個人が国家級の情報解析力を持つゲリラ戦の時代」が到来すると論じられた[3]。
三層モデル
- オープン・ウェブ層 – UGC が自己増殖的に蓄積されるソーシャル基盤。
- AIモジュール層 – 生成AIを含むモデル群がリアルタイム最適化・生成を実行[4]。
- トークン経済層 – ブロックチェーンで知識やモデル価値を暗号資産化し、国境を超えたインセンティブを提供[5]。
コアコンセプト
- 生成AIの民主化 – テキスト・画像・音声を自動生成するモデルがUGC の質・量を飛躍的に拡大[6]。
- 個人主導の分散型イノベーション – クラウド上のAI基盤により最低限の資本でグローバル市場に参入可能。
- トークンエコノミー – AIが生み出す知識・モデルを暗号資産で取引し、マイクロペイメントや再配分を自動化[7]。
- 無形固定資産の価値の最大化 – ブランド、データ、アルゴリズムなど無形資産がGDPの中心となると想定される。
実装・応用例
年 | プロジェクト | AI2.0 的要素 | 出典 |
---|---|---|---|
2022 | ChatGPT(OpenAI) | 大規模言語モデルを公開し、UGC を対話的に生成・最適化。ローンチから 2 か月で 1 億ユーザを獲得 | [8] |
2022 | Stable Diffusion(Stability AI) | オープンソースの画像生成AIを公開。個人がローカルGPUで高精度生成を実現 | [9] |
2024 | Lens Protocol | Polygon 上の分散型 SNS。UGC を NFT として所有・収益化でき、AI 推薦 API を提供 | [10] |
2025 | Bittensor | AI モデル提供者が TAO トークン報酬を得る分散型 AI マーケットプレイス | [11] |
批判と課題
- デジタルディバイド – 高性能GPUや計算資源を保有しない主体との格差が拡大する懸念[4]。
- ガバナンスと倫理 – 日本のNTTと読売新聞は、生成AIの法整備を急ぐ共同提言を発表し、選挙や安全保障分野での濫用リスクに警鐘を鳴らしている[12]。
脚注
- ^ 大澤昇平「3年後に意識の宿ったAIが資金を運用する」『Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)』(インタビュー)、2019年10月3日。2025年7月9日閲覧。
- ^ a b 大澤 2019, p. [要ページ番号].
- ^ a b 大澤 2020, p. [要ページ番号].
- ^ a b Erik Brynjolfsson; Danielle Li; Lindsey Raymond (2024). “Generative AI at Work”. Quarterly Journal of Economics 140 (2): 889–934.
- ^ Jesus Rodriguez (2025年2月25日). “5 New Trends in Generative AI That Web3 Needs to Be Ready For”. CoinDesk. 2025年7月9日閲覧。
- ^ “日本経済新聞社、生成AIサービス「NIKKEI KAI」を開始 最新情報を取り入れた分析や企画書作成が可能”. Plus Web3 media (2025年3月17日). 2025年7月9日閲覧。
- ^ Jesus Rodriguez (2025年2月25日). “5 New Trends in Generative AI That Web3 Needs to Be Ready For”. CoinDesk. 2025年7月9日閲覧。
- ^ “ChatGPT sets record for fastest-growing user base”. Reuters. (2023年2月1日) 2025年7月9日閲覧。
- ^ “Stable Diffusion Public Release” (Press release). Stability AI. 22 August 2022. 2025年7月9日閲覧.
- ^ “Build SocialFi Apps Faster with Lens, Now on Mainnet”. Lens Blog (2025年4月5日). 2025年7月9日閲覧。
- ^ “Comprehensive Analysis of the Decentralized AI Network Bittensor”. ChainCatcher (2025年2月11日). 2025年7月9日閲覧。
- ^ 「読売新聞とNTTが生成AIのあり方に関する共同提言を発表」(プレスリリース)、株式会社読売新聞グループ本社、日本電信電話株式会社、2024年4月8日。2025年7月9日閲覧。
参考文献
- 大澤昇平『AI救国論』新潮社〈新潮新書 828〉、2019年9月。 ISBN 978-4-10-610828-0。
- 大澤昇平『覚醒せよ日本人! AI2.0時代の生き残りをかけたゲリラ戦が始まった』宝島社、2020年5月。 ISBN 978-4-299-00487-1。
関連項目
- AI2.0のページへのリンク