雪解けからの後退
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 05:18 UTC 版)
「キューバの雪解け」の記事における「雪解けからの後退」の解説
2016年アメリカ合衆国大統領選挙でキューバへの経済制裁の継続を主張するドナルド・トランプが勝利した。ラウル・カストロはトランプが大統領に就任した後の最初の公式な反応で、「主権や独立に関して決して(アメリカに)妥協しない」考えを示している。 トランプは2017年6月16日に渡航規制の厳格化や商取引の規制など制裁を強化する対キューバ政策を発表し、規制強化を指示する文書に署名した。制裁を緩和したオバマ前政権の融和的な政策について「ひどく悪く、誤っている」と位置づけている。新たな措置により、ラウル・カストロの娘婿が最高経営者を務め、キューバ軍の支配下にある50社以上の複合企業GAESAとの金融取引が禁止される。同社はアメリカのホテルチェーン大手、マリオット・インターナショナルなど複数の外国企業との合弁事業に関わっており、国交正常化に伴うアメリカ人観光客増加の恩恵を受ける見込みだった。キューバ人エコノミストはキューバの外貨収入の40-60%をこのGAESA傘下の企業が稼いでいるとの見解を示している。アメリカ人の個人による観光目的でのキューバへの渡航は再び禁止され、教育関連団体や親族訪問目的での渡航のみに制限される。 ただし、公約を実現する姿を支持層に強調するのが狙いで、新政策は微修正に過ぎないとの見方が大勢を占めている。ハバナにあるアメリカ大使館は維持するほか、キューバとの外交関係は保つとしている。新たな制限はアメリカ合衆国財務省およびアメリカ合衆国商務省が立案する、適切な規制が施行された後にのみ有効となる。 トランプ政権は2017年11月8日、6月に表明したキューバに対する制裁強化策を9日から実施すると明らかにした。キューバ軍・情報機関と経済的に結びつきのある企業など180団体のリストを公表し、アメリカ企業に対し取引を禁止した。アメリカ人がキューバを訪問する場合はアメリカ企業の団体旅行に参加する必要があるが、旅行者は制裁リストに挙がったホテルやレストランなどの利用が禁止されることになる。 定期便を運航していたアメリカの航空会社の多くは2017年11月までにキューバへの運航を停止した。 トランプ政権はさらに2019年6月4日、アメリカ国民を対象にしたキューバへの渡航制限を強化すると発表した。人的交流などを目的とした団体での渡航や、クルーズ船や自家用ジェットの使用も禁止されることになった。これに対し、キューバの外務大臣ロドリゲスは「キューバの経済を窒息させ、国民の生活水準を損なうことで政治的譲歩を強制的に引き出す狙いがある」と反発した。アメリカ政府はベネズエラのマドゥロ政権や、同政権を支援するキューバへの制裁を強化するなどして圧力を強めている。 トランプ政権は2021年1月11日、キューバへのテロ支援国家再指定を発表した。オバマ前政権で副大統領を務めたジョー・バイデンの大統領就任を20日に控え、対キューバ融和路線に戻るのを妨害する狙いがあるとみられる。バイデンは大統領就任後、キューバ政策の見直しを進めていたが、同月7月にキューバで大規模な反政府デモとそれに対する弾圧が行われたことを受け、キューバを失敗国家であると非難し、強硬姿勢を打ち出している。
※この「雪解けからの後退」の解説は、「キューバの雪解け」の解説の一部です。
「雪解けからの後退」を含む「キューバの雪解け」の記事については、「キューバの雪解け」の概要を参照ください。
- 雪解けからの後退のページへのリンク