近接効果 (二次電子)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 21:21 UTC 版)
「極端紫外線リソグラフィ」の記事における「近接効果 (二次電子)」の解説
PMMAのような絶縁材料においては、低エネルギー電子がはるか遠くへ移動しうる(数ナノメートルでありうる)ことが認識されてきている。例えば、10nm未満の厚さのSiO2において、ごくわずかな電子散乱が予想されている。これは、イオン化ポテンシャル以下に、唯一のエネルギー損メカニズムが主としてフォノンとポーラロンによってあるという事実による。ポーラロン効果が高分子と共有結合物質よりもイオン結晶の中においてより強く現れることに注意しなければならない 実際のところ、ポーラロン跳躍は20nm以上離れて拡大する。 ~20nmのワーストケースの拡散を~10nmの期待されるEUVツールの解像度に加えれば、現実的に有効な解像度がよくても~30 nmであることが予想され、それは現行のダブルパターニングリソグラフィを使用した最先端の液浸リソグラフィに匹敵する。20nmの電子範囲がばらつきに応じた10%のみの限界寸法であることを可能にすることは、そのまま200nmを下回るリソグラフィへの挑戦となる。 物質10 eV 電子の非弾性平均自由行程*水 10 nm DNA 5 nm PMMA 5 nm SiO2 7 nm (*) 平均では,10eVのエネルギーを持つ電子はエネルギーを失う前に物質内のこの距離を移動する。 物質<3 eV 電子の減衰長ペンタセン 7.5 ± 1.0 nm ペリレン 80 ± 8.0 nm IBMのFederほかによる古典的な実験において、PMMAレジスト上のエルビウム層はX線に晒される。エルビウム層はX線を強く吸光し、低エネルギーの二次電子を生成する。吸光されないX線はPMMAを貫通し続け、そこでごく軽く吸光される。溶剤中のエルビウム層および後のPMMA現像の除去に際して、レジスト除去速度は、膜の残りの部分では一層緩やかである一方で、PMMA膜の表面から40nmにおいて促進されることが判明した。促進率は二次電子の照射によるものであり、一方で抑制率はX線の吸光によるものである。この事例においては40nmの最大二次電子照射範囲であるとわかった。 村田はまた、X線照射の間Si基板からPMMAの層に放出された92eVのオージェ電子の影響を計算した。PMMAの照射範囲は50nmであった。 MITとウィスコンシン大学のCarterらがより最近行った実験においては、電子を発生するX線吸収体はPMMAレジストの表面でなくむしろ直下であった。この場合、PMMAの分解促進は基板上からおよそ50nmで開始される。 この二次電子範囲の意味は50nmオーダー以下の距離における「近接効果」の出現である。形状がこの範囲以下に減少するとともに、これは照射許容値を劇的に縮小する。たとえ形状が今までどおりこの範囲以下に印刷することができても、解像度はエネルギー分布の不確定性によって影響を受ける。上記の実験的に決定された範囲の差(40nm対50nm)は、この根本的なばらつきの表れである。二次電子照射を不鮮明効果と見なすことができる。不鮮明は一般的に、光学的のみのイメージ・シミュレーションに含まれていない。 近接効果はまた、レジストの上面から去り、およそ数十ナノメーター離れた距離に戻る光電子と二次電子によって明らかである。これは(真空中で)水平方向には拡散しているが垂直方向において正に帯電した表面に引きつけられる、表面上の空間電荷雲を形成する放射電子の観点から理解される 二次電子近接効果は、40-60eVのエネルギー範囲にある放射電子を持つ走査プローブ端を使うことで、スタンフォード大学によって最近実証された。線量感度は照射中心から25nmより遠いところで実証された。50nm範囲の照射幅以下では、低エネルギーの(EUVにより生じた)電子分布は線幅分布に影響することが示されている。これは従来の光学リソグラフィには見られない新しい効果である。 減衰長が1.18nmの平均の長さであるにもかかわらず、~1.35eVまでの低エネルギー電子がSio2内部で~15nmまで移動することを示すため、光電子放出顕微鏡(Photoelectron emission microscopy:PEEM)のデータが用いられた。
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