英文学関連業績
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福田昇八は、16世紀の英国詩人エドマンド・スペンサーの詩の翻訳研究と日本の英語教育改善の両面で顕著な功績を挙げている。翻訳面では、長編寓意叙事詩『妖精の女王』 (和田勇一監修・熊本大学スペンサー研究会訳)の翻訳・出版において、会員中唯一のスペンサー専門家として中心的に活躍した。これは1969年に出版され、「我が国の西洋文学に関心をもつ者にとっては驚嘆すべき事件」(平井正穂当時東京大学教授)として迎えられ、1969年度日本翻訳家協会翻訳出版文化賞ほかを受賞した。『妖精の女王』の完訳は非英語圏の他国に先んじた業績として国際的にも注目されている。その後も改訳の仕事を続け、1994年に『妖精の女王』改訳版(文庫版2004年)を出版、2007年には、スペンサーの短詩をまとめた改訳版『スペンサー詩集』を出版し、スペンサー詩の日本語全訳を完成させた。これらの共同散文訳と並行して、単独でスペンサー詩の韻文訳に携わり、韻文訳『スペンサー詩集』を2000年に出版した。また、2014年出版の『英詩のこころ』(岩波ジュニア新書)ではチョーサー以降の英米の名詩を七五調訳によって紹介している。ライフワークとして長年にわたって福田が取り組んできた『妖精の女王』の単独での韻文訳は、2016年に『韻文訳 妖精の女王』と題して出版された。福田の韻文訳は原詩の行の音節数を七五調に置き換え、原詩の行の長さと韻律の響きを忠実に反映させている。原詩の意味を伝えるばかりでなく、音楽的リズムで読者を楽しませる日本語への訳出は翻訳史上の道標として注目される。 翻訳の仕事と並行して、スペンサー詩の数秘構造を調査して独創的見解を国際誌に発表した。学会活動では、1980年に日本スペンサー協会を組織し、以来会長として運営にあたり、2册の論集を編集出版した。また、福田自身も項目を執筆している『スペンサー百科辞典』(The Spenser Encyclopedia)の編集主幹A. C. ハミルトンを熊本大学に招聘して日本のスペンサー研究者との交流を図り、その縁でロングマンの『妖精の女王』第2版(Edmund Spenser: The Faerie Queene 2001年)には2名の日本人学者(山下浩・鈴木紀之)が校訂した本文が採用された。これは『妖精の女王』研究の新たな標準テクストになると評されている。同書収載の福田による120人余の登場人物の動静を明らかにしたリストは、スペンサー研究の基本文献になっている。
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