紙幣
★1a.紙幣のナンバーが記録されており、盗んだ金だとわかってしまう。
『蘇える金狼』(村川透) 朝倉哲也は、銀行の現金運搬人を襲って1億円を奪う。しかし紙幣のナンバーは、すべて銀行に記録が取ってあったので、そのままでは使えない。朝倉は闇の組織に接触し、1億円でヘロインを買う。後に彼はそのヘロインを売って、安全な紙幣を手に入れる。
*小判に刻印が打ってあり、盗んだ金だとわかってしまう→〔金貨〕7の『梅若礼三郎』(落語)。
★1b.同じナンバーの紙幣。
『ブラック・ジャック』(手塚治虫)「未知への挑戦」 UFOで地球を訪れた宇宙人の1人が負傷する。ブラック・ジャックが手術を引き受け、報酬20万ドルを要求する。宇宙人は地球の通貨を知らないので、ブラック・ジャックは見本として百ドル札1枚を渡す。やがてブラック・ジャックが受け取ったのは、同じナンバーの百ドル札2千枚だった。
『魔法の大金』(星新一『妄想銀行』) エヌ氏が悪魔を呼び出して「大金が欲しい」と願い、高額紙幣を1枚、見本として渡す。悪魔がそれに息を吹きかけると、1万枚もの紙幣の山ができあがる。エヌ氏は紙幣をカバンに詰め込んで、銀行へ預けに行く。窓口の行員が驚いて尋ねる。「どこで手にお入れになったのですか。どれもこれも同じ番号です・・・」。
★2.紙幣に目印がある。
『エーミールと探偵たち』(ケストナー) ベルリン行きの汽車の中で、少年エーミールが持つ高額紙幣を、山高帽の男が盗んだ。エーミールはベルリンで知り合った大勢の少年たちと一緒に、山高帽の男を追いかける。男は「これは自分の金だ」と言って、銀行に預金しようとする。その時、エーミールは思い出す。汽車の中では用心のため、紙幣にピンを刺して上着の裏にとめていたのだ。紙幣にはピンの穴があいており、山高帽の男はその場で逮捕された。
『三角館の恐怖』(江戸川乱歩) 蛭峰康造老人の手提げ金庫から小額の紙幣が盗まれることが、時々あった。そこで康造老人は、紙幣の隅にペンで小さなしるしをつけた。後に篠刑事が猿田執事に、5百円札を百円札に両替してくれるよう頼む。猿田執事から受け取った百円札を調べると、すべてしるしがついていた。
『西郷札(さつ)』(松本清張) 明治10年(1877)の西南戦争の折、薩軍が戦費調達のために、独自に紙幣(10円・5円・1円・50銭・20銭・10銭の6種)を印刷・発行し、これを西郷札と称した。薩軍敗北後、西郷札は紙くず同然になり、所有者は多大な損害をこうむった。明治12年、政府が西郷札を額面の7~8割で買い上げる、との情報があり、それを信じて西郷札を買い占めた人物がいた。しかし、政府買い上げの話は、まったくのデタラメだった。
★4.紙幣の束を燃やす。
『白痴』(ドストエフスキー) 地主トーツキーは、囲い女(もの)だったナスターシャに持参金をつけ、貧しい青年ガーニャに押しつけようとたくらむ。ガーニャは金目当てで結婚を承知するが、ナスターシャは拒否する。大金持ちのロゴージンが10万ルーブルの札束を持って現れ、ナスターシャに求婚する。彼女は求婚を受け入れると、10万ルーブルの包みを暖炉の火に投げ込み、「ガーニャ、暖炉に手を突っ込んで包みを取りだしたら、10万ルーブルはあなたのものよ」と言う。ガーニャはその場を動くことができず、卒倒する。ナスターシャはロゴージンとともに立ち去る(第1編)。
『若者たち』(森川時久) 早くに両親を失った佐藤家の5人兄妹(男4人と女1人)は、互いに励まし合い、時には大喧嘩をしながら、懸命に生きていた。中卒で、建設現場で働く長兄の太郎は、「世の中、金だ」と、いつも弟や妹たちに言い聞かせていた。大学生である三男の三郎は、金より大切なものがあることを訴え、千円札10枚が入った封筒をストーブの火で焼く。それを見て太郎は卒倒する〔*実は、10枚のうち1枚だけが紙幣で、あとの9枚は領収書などの紙切れだった〕。
『求職』(チェーホフ) 就職活動中の青年である「僕」は、鉄道会社を訪れ、応対してくれたオデコローノフという男の拳の中へ、紙幣を押し込んだ。彼は顔をほころばせ、「尽力しましょう」と約束する。しかしその現場を何人かに見られたので、彼は「職の方はお約束しましょう。だが、お礼は遠慮しますよ」と言って、拳を開き、「僕」に金を返した。しかしそれは、「僕」が押し込んだ25ルーブル札ではなくて、3ルーブル札だった。
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