盗み
『竹の木戸』(国木田独歩) 貧しい植木職人の女房お源は、隣家の軒下にある炭俵から、炭を時々盗んでいた。隣家では、炭の減り方が目立つので、お源を疑った。お源は亭主の磯吉に、「炭を買うお金もないのだから、もっと精を出して働いておくれ」と訴える。夜遅く、磯吉は上等の炭俵をかついで帰って来て、「友達に金を借りて、1俵買ったのだ」と言う。しかしそれは炭屋から盗んで来たものだった。お源は炭俵を脚継(あしつぎ)にして、土間の梁へ細引きをかけ、縊死した。
『一房の葡萄』(有島武郎) 小さい頃、「ぼく」は横浜の、西洋人ばかりが住む山の手の学校に通っていた。「ぼく」は、友だちのジムが持っている西洋絵の具が欲しくて、ある日、それを盗んでしまった。「ぼく」は皆につかまり、2階の先生の部屋へ連れて行かれた。先生は、西洋人の若い女の先生だった。泣いている「ぼく」に、先生は「明日も必ず学校へ来るんですよ」と言い、窓辺の葡萄蔓から1房の葡萄をもぎ取って、カバンの中に入れてくれた。先生のおかげで、「ぼく」とジムは仲直りすることができた。
『燈籠』(太宰治) 貧しい下駄屋の1人娘・24歳の「私(さき子)」は、5つ年下の商業学校の生徒・水野さんを好きになった。水野さんはお友達と海へ泳ぎに行く約束をしたが、ちっとも楽しそうでなかった。水野さんは孤児で、親戚に厄介になっているのだ。「私」は大丸の店で、男の海水着を万引きして、警察へ連れて行かれた。「私」のことが新聞に出て、近所の人が「私」の様子を覗(のぞ)こうと、家のまわりをうろつく日が続いた→〔ともし火〕6。
『間違ひ』(黒岩涙香) 新育府(にーようく)の服装店。客の紳士の筒袴(ズボン)の衣嚢(かくし)から、高価な絹紐の端が出ているので、店員が「万引きか?」と疑って調べる。紳士の服には、いたるところに衣嚢が仕掛けてあり、懐中時計・床の間の置物・馬の鞍など、さまざまな物が出てくる。その時、「奇芸座の座長」と名乗る男が駆け込み、「見物が待ちくたびれて、木戸銭を返せと騒いでるぞ」と、紳士を叱る。「さては出番前の手品師であったか」と、店員たちは平謝りして品物を返す。しかし手品の興行などはなく、彼らは2人組の万引き犯だった。
*万引きのふりをする→〔ゆすり〕1の『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』(河竹黙阿弥)3幕目「雪の下浜松屋の場」。
*毎年、万引きに来る女→〔女神〕2の『れいの女』(星新一)。
★3.盗癖。
『マーニー』(ヒッチコック) 美女マーニーには盗癖があった。彼女は会社に勤めては、金庫から大金を盗んで姿をくらました。これまでに5回盗みをはたらき、5万ドルを得た。マーニーは5歳の時に殺人を犯し、母親がその罪を引き受けた、という過去があった(*→〔恐怖症〕3)。幼いマーニーには事件の記憶が残らなかったが、彼女は何となく母親に負い目を感じていた。そのため、マーニーは大金を盗んで、母親に送金したり高価なプレゼントを贈ったりしていたのだった。
★4.死体を盗む。
『マタイによる福音書』第27~28章 イエスの処刑直後、弟子たちが死体を盗み出して「イエスは復活した」などと言いふらさぬよう、墓に番兵が配置された。しかしイエスの死体は墓から消えた。死体消失の報告を受けた祭司長たちは、多額の金を番兵に与え、「イエスの弟子たちが夜中にやって来て、我々(=番兵)が眠っている間に、死体を盗んで行った」と言わせた〔*他の福音書には、この話はない〕。
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