百合若大臣とは? わかりやすく解説

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百合若大臣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/10 16:07 UTC 版)

百合若大臣(ゆりわかだいじん)は、百合若という名の武者にまつわる復讐譚。これを題材にした幸若舞、それを読み物として流布させた版本(「舞の本」)、人形を使った説経操り浄瑠璃(室町後期〜江戸時代)などがあり、日本各地、特に大分県壱岐に伝説として伝わる。


注釈

  1. ^ ふつうは関東の深谷ではなく、九州とつながる。また鉄弓で有名だが、ここでは木の枝の弓にみえる。
  2. ^ 説経正本の落丁の部分は、幸若舞の慶長14年本で補われる。
  3. ^ 鷹の名は「青陽」となっている
  4. ^ 長谷寺。
  5. ^ 説経正本には、父親が「四条公満」で、百合若の元服名は「公行(きんゆき)」と見える[22]
  6. ^ 入江は、この妻を顕頼(あきより)の娘「朝日姫」だとする[23]。また、松村の『御曹司島渡』研究では、「春日姫」だとするが[24]、これは大分の百合若伝説に見られる名。
  7. ^ 伝承によっては「ムグリ」とも訓じる。むくりこくりも参照。
  8. ^ 福岡県。
  9. ^ 大分県。
  10. ^ 富来の抜粋(16頁)には見えないが、[19]「八尺五寸」は原文に見える[18]
  11. ^ 後段(第3段)で、この島は壱岐の浦より以北とあるので、地理的に考えると博多湾の玄界島ではありえず、玄界灘の島ととるべきとの考察がある[25]
  12. ^ 「御台所(みだいどころ)」は妻。入江は「ごだいところ」と訓じている[27]
  13. ^ あるいは門脇の翁の甥である忠太の娘[27]
  14. ^ 幸若舞では、御台所の身代わりとなって「まんなうが池に柴漬(ふしづけ)にされた(簀巻きにして沈められた)娘の名は明らかでないが、豊後における伝承では「萬壽姫」とされており、萬壽寺縁起に語られる[28]
  15. ^ 入江は幸若舞でも萬寿姫であるとしている[27]
  16. ^ 入江は「首を切って引きまわしました」と解釈する[29]。原文の「首をば七日七夜に引き首」は[30]、異本では「挽首」[31]
  17. ^ 蒙古(ムグリ)とも[17]
  18. ^ 上述したとおり、萬壽姫については萬壽寺縁起に語られる[28]
  19. ^ 盒(ゆり)。
  20. ^ 壱岐の「百合若説経」(折口信夫の発表文)
  21. ^ この系統の伝説では、「木の葉がくれ」という小鬼の助勢で鬼退治を果たした事になっているものもある[要出典]
  22. ^ 壱岐の「百合若説経」(後藤正足の所蔵本)
  23. ^ 異本では、裏切者は「しきびのたよ」という船頭、百合若の妻は「乙姫」、その得物は「千人張の弓」とする[37][38]
  24. ^ 封内風土記』巻2(および同じ系列の『奥羽観蹟聞老志』巻5、『封内名蹟志』巻6)。
  25. ^ 『奥羽観蹟聞老志』:読み下すと「郷説いわく、由利若夫人、海曲文房具を欠くと想い、鷹の翼に小硯を締めて空に放つ。鷹は重みに耐えず、墜ちて死に、後人が此の山の畦に葬り、寺を建てた」と記される。
  26. ^ 『封内風土記』によれば、この寺は天文2年(1533年)、白円和尚により中興された[44]
  27. ^ 昔はそこは海の島だったとする。
  28. ^ アラキ説は宣教師が用いたのがユリシスのラテン語形である「ウリクセス」ならば、それは百合若の古い形である「百合草」に極めて近い、という指摘もおこなっている

出典

  1. ^ a b Araki 1983, pp. 204, 211
  2. ^ a b 坂井 2016, p. 44: 徳田和夫「『犬寺縁起絵巻』の成立-付・翻刻-」『学習院女子大学紀要』創刊号、1999年、50-51 頁
  3. ^ a b c 野村純一 野村純一著作集編集委員会(編)「北朔の百合若大臣(下の一)」『文学と口承文芸と』<野村純一作集 第8巻> 清文堂 2012 ISBN 9784792407100 pp.63-71.
  4. ^ Araki 1978, pp.2-3, note 8
  5. ^ 笹野 1943, pp. 306–309, 505–507 (ただし「百合若」のテキストではなく幸若舞の台本として最古・最善との考察)
  6. ^ Araki 1983, p. 210
  7. ^ Araki 1983, p. 211
  8. ^ 井之浦茉里「古浄瑠璃における冒頭・結尾表現」『人間文化創成科学論叢』第14巻、お茶の水大学、9-17頁、2011年https://hdl.handle.net/10083/51634 
  9. ^ 塩出貴美子「富美文庫蔵「ふしみときは」について」『文化財学報』第27巻、21頁、2009年http://repo.nara-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=AN0000711X-20090300-1004 
  10. ^ 国文学研究資料館. “舞の本”. 日本古典籍総合データベース. 2016年11月20日閲覧。(岩波書店『国書総目録』による)
  11. ^ 笹野 1943, pp. 297–305
  12. ^ 荒木, 池田 & 山本 1979 東洋文庫『幸若舞』1巻(平凡社)所収「百合若大臣」;慶長14年の慶応大学蔵本。
  13. ^ 麻原 & 北原 1994 岩波書店『舞の本』所収「百合若大臣」; 底本は寛永年間版(岡山大学付属図書館蔵の池田家文庫本)。
  14. ^ 横山 1968編「ゆりわか大じん」(日暮子太夫の説経正本)
  15. ^ a b c d 坪内逍遥「百合若伝説の本源」『文芸瑣談』、春陽堂、232-240頁、1907年(原著1906年)https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871774 
  16. ^ Araki 1983, p. 205
  17. ^ a b c d 井上 1998, 『南蛮幻想』
  18. ^ a b 麻原 & 北原 1994: 岩波の幸若舞(寛永本)のあらすじ
  19. ^ a b 富来 1997, pp. 15–21: 東洋文庫編の幸若舞(慶長14年本)の抜粋・注釈}
  20. ^ 入江 2008, pp. 24–26: 幸若舞のあらすじ
  21. ^ 金賛會 2002, pp. 71–72: 幸若舞のあらすじ
  22. ^ 横山 1968
  23. ^ 入江 2008, p. 24
  24. ^ a b 松村 2016, p. 108
  25. ^ 富来 1997, pp. 19–20
  26. ^ 金賛會 2002, p. 71、「大力の癖として…」(原文では「大力の癖やらん」)
  27. ^ a b c 入江 (2008), p. 25.
  28. ^ a b 恋田知子「お伽草子『まんじゆのまへ』試論」『藝文研究』第78巻、慶應義塾大学、29頁、2000年https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00072643-00780001-0024 
  29. ^ 入江 (2008), p. 26.
  30. ^ 富来 (1997), p. 21.
  31. ^ 麻原 & 北原 (1994).
  32. ^ a b c 金賛會 2002, p. 70: 大分の百合若伝説のあらすじ。『豊後伝説集』『雉城雑誌』7、荒木博之編『日本伝説体系』第十三巻・北九州(みずうみ書房)より
  33. ^ 入江 2008
  34. ^ 折口 1929
  35. ^ 入江 2008, pp. 27–28、壱岐の説経《其の1》
  36. ^ 入江 2008, pp. 27–28、説経《其の2》
  37. ^ 高野, 斑山 (1907), “壱岐の百合若伝説”, 早稲田文学 (14), https://books.google.co.jp/books?id=cIZEAQAAMAAJ 
  38. ^ 阿刀田 (1936), pp. 123–124.
  39. ^ 久保清; 橋浦泰雄「女島と百合若大臣」『五島民俗圖誌』一誠社、1934年、185-186頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1842335 
  40. ^ 『日本残酷物語 第一部』平凡社、1959年、p4
  41. ^ 楠瀬慶太, 浦谷拓, 木戸希, 田中由利子, 中村和博, 夏木大吾, 馬場多聞, 前川隆輔, 山内亮平『怡土・志摩の村を歩く』九州大学大学院比較社会文化研究院服部英雄研究室、2009年。doi:10.15017/1655044hdl:2324/1655044https://doi.org/10.15017/1655044 : 前田淑(2003)『百合若説話の世界』を引用。
  42. ^ a b 阿刀田 (1936), pp. 144–118.
  43. ^ a b c 板垣俊一「北越の百合若伝説(下)―地方における伝説の生成と変容」『県立新潟女子短期大学研究紀要』第31号、1-9頁、1994年https://hdl.handle.net/10623/17770 
  44. ^ 佐久間義和郷土誌漫筆』城、1883年、114頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9537460/66 「鷹硯寺」、「緑丸石」
  45. ^ 佐久間義和奥羽観蹟聞老志』 5巻、宮城県、1883年、62-63葉頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/993125/63 :「鷹硯寺」、「緑丸石」の項。
  46. ^ 井上 1998, 『南蛮幻想』、245-248頁 (松村 2026, p. 125, 注(1)に指定)
  47. ^ a b 久冨木原玲「日本古典文学における「海」・「海辺」・「海外」:古事記神話・源氏物語・大航海時代前後の作品をめぐって」『愛知県立大学大学院国際文化研究科論集(日本文化編)』第8巻、愛知県立大学大学院国際文化研究科、2017年3月、1-14頁、CRID 1390290699288742912doi:10.15088/00003156ISSN 1884-7536 
  48. ^ a b 坂井 2016, pp. 43–44
  49. ^ ドナルド・キーン『日本文学の歴史: 古代.中世篇, 第 6 巻 publisher=中央公論社』1995年、10, 344頁https://books.google.com/books?id=tqMPAAAAYAAJ 
  50. ^ 井本 2004, p. 128: 金関丈夫『木馬と石牛』(法政大学出版局)、211-226頁、1982年
  51. ^ a b c 井本 2004, p. 128
  52. ^ a b 松村 2016, p. 109
  53. ^ Araki 1983, pp. 209–210
  54. ^ 南方熊楠「西暦九世紀の支那書に載せたるシンダレラ物語」『南方随筆』、岡書院、71-73頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/981769/ 
  55. ^ 坂井 2016, pp. 42, 48
  56. ^ 松村 2016, pp. 107–126






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