無関心 (ヴァトーの絵画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/07 02:59 UTC 版)
| フランス語: L'Indifférent 英語: L'Indifférent |
|
| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1716年 |
| 素材 | 板上に油彩 |
| 寸法 | 25.5 cm × 19 cm (10.0 in × 7.5 in) |
| 所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『無関心』(むかんしん、仏: L'Indifférent、英: L'Indifférent)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが1716年に板上に油彩で制作した絵画である。作品は1869年に当時の所有者であったルイ・ラ・カーズから寄贈されて以来[1]、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[1][2][3][4]。なお、画面は、拙い修復のために損傷を受けている[3]。
作品
ヴァトーはわずか36歳で結核のために世を去った[5]が、その天才的な感性によって18世紀ロココ絵画の創始者となった画家である。『無関心』という本作の題名はヴァトー自身の命名ではないものの、最も洗練された愛の手管に長じていながら、愛に溺れることのないロココ的美学を物語る[2]。
どこか夢のような詩情をたたえた風景の中に、洒落た身なりの若い伊達男が描かれている[2]。輝くような絹の襞が、彼のポーズに適切な、魅力的な光沢を与えている[3]。彼は今まさに踊りを始めようとしている[2][3]が、ヴァトーはいつも行動の始まりを描写することに惹かれていた[3]。
片脚を前に出し、両手を広げた彼のポーズは、踊り始める前のバレエのポーズを正確に再現しているという。この軽やかさは、若者の恋に浮き立つ気分を反映しているのかもしれない。しかし、それはけっして生々しいものではなく、どこか現実と遊離した遊戯的気分が漂っている。本作は、『気まぐれな恋人』とも呼ばれる[2]。
この絵画は、同じくルーヴル美術館に所蔵される『ラ・フィネット』 (「機知に富んだ」という意味) と同じサイズの対作品となっている[2]。『ラ・フィネット』中の少女は、楽器を弾くのを止めて鑑賞者の方を振り向いたところが描かれており、やや物憂げなその表情は恋を待ち受けているようでもある[2]。ちなみに『ラ・フィネット』は「音楽」の、本作『無関心』は「舞踊」の擬人像である。恋愛の象徴である舞踊と音楽は、ヴァトーの作品では常に需要な主題であった[4]。そして、両作品に見られるような、現実と夢想が微妙なバランスを保つ詩的な世界は、ヴァトーが創造した独自のものである[2]。
なお、本作と『ラ・フィネット』の油彩表面は18世紀から傷み始めていたとされ、そのため国王ルイ16世が購入を取りやめたというエピソードが伝えられている。それでも19世紀の文学者ゴンクール兄弟や詩人ポール・クローデルを強く魅了し、称賛された[4]。
脚注
参考文献
- 坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館VI フランス芸術の華』、日本放送出版協会、1986年刊行 ISBN 4-14-008426-X
- ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
- 『週刊西洋絵画の巨匠 45 ヴァトー』、小学館、2010年刊行
外部リンク
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