千羽鶴 (小説)
(波千鳥 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/18 06:25 UTC 版)
『千羽鶴』(せんばづる)は、川端康成の長編小説。川端の戦後の代表作の一つで、芸術院賞を受賞した作品である[1][2]。亡き不倫相手の成長した息子と会い、愛した人の面影を宿すその青年に惹かれた夫人の愛と死を軸に、美しく妖艶な夫人を志野茶碗の精のように回想する青年が、夫人の娘とも契る物語[3]。匂うような官能的な夫人の肉感に象徴される形見の志野茶碗の名器の感触と幻想から生まれる超現実な美的世界と、俗悪に堕した茶の湯の世界の生々しい人間関係が重なり合って描かれている[3][4]。
- ^ a b 「あとがき」(『川端康成全集第15巻 千羽鶴・山の音』新潮社、1953年2月)。独影自命 1970, pp. 258–273に所収
- ^ a b c d e f 「解題」(小説12 1980, pp. 543)
- ^ a b c d e f 山本健吉「解説」(千羽鶴文庫 1989, pp. 282–287)
- ^ a b c d e f 「解説」(『日本の文学38 川端康成集』中央公論社、1964年3月)。作家論 1974, pp. 84–102、三島32巻 2003, pp. 658–674
- ^ 「作品年表――昭和24年(1949)から昭和26年(1951)」(雑纂2 1983, pp. 546–553)
- ^ 「著書目録 一 単行本――86」(雑纂2 1983, p. 604)
- ^ 「作品年表――昭和28年(1953)から昭和29年(1954)」(雑纂2 1983, pp. 555–560)
- ^ a b c d 郡司勝義「解題」(千羽鶴文庫 1989, pp. 288–292)
- ^ 「翻訳書目録――千羽鶴」(雑纂2 1983, pp. 662–665)
- ^ a b 「『ただ一つの日本の笛』を吹く」(保昌 1964, pp. 65–73)
- ^ a b c 川端秀子「川端康成「波千鳥』未完の秘話」(朝日新聞夕刊 1978年8月28日号)。千羽鶴文庫 1989, p. 291
- ^ 川端康成「名作『千羽鶴』の映画化を語る会」(婦人倶楽部 1952年12月号)。梅澤 1998, p. 52に抜粋掲載
- ^ 川端康成(武田勝彦との対談)「川端康成氏へ聞く…」(國文學 1970年2月号)。梅澤 1998, p. 52に抜粋掲載
- ^ 「第七章 豊饒の季節――通奏低音〈魔界〉 第七節 贖罪と浄化の旅『波千鳥』」(森本・下 2014, pp. 94–110)
- ^ 「第七章 豊饒の季節――通奏低音〈魔界〉 第五節 夢魔の跳梁『千羽鶴』」(森本・下 2014, pp. 52–77)
- ^ 林房雄・北原武夫・中村好夫「創作合評―川端康成―」(群像 1949年11月号)。森本・下 2014, p. 55に抜粋掲載
- ^ 「美への耽溺―『千羽鶴』から『眠れる美女』まで―」(川嶋 1969)
- ^ a b c d e f 梅澤 1998
- ^ “九重町 - 川端康成文学碑”. 九重町公式サイト. 2015年3月10日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)96頁
- ^ 志村三代子「川端康成原作映画事典――12『千羽鶴』」(川端康成スタディーズ 2016, pp. 237–238)
- ^ a b 志村三代子「川端康成原作映画事典――32『千羽鶴』」(川端康成スタディーズ 2016, p. 254)
- ^ 恒川茂樹「川端康成〈転生〉作品年表【引用・オマージュ篇】」(転生 2022, pp. 261–267)
波千鳥
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 07:38 UTC 版)
続編『波千鳥』の作品背景としては、1952年(昭和27年)10月に、続きを書きたいと考えていた川端の元へ、当時大分県在住の画家・高田力蔵が偶然、大分県の案内役をかって出て、諸所をめぐる旅の機会が与えられたことが大きいという。 しかし作品の核心が迫ってきた最終段階で取材ノートが紛失し、中断を余儀なくされた。当初この事件は旅行中に鞄ごと紛失したことになっていたが、川端没後の6年経った1978年(昭和53年)、実は東京の仕事部屋として使っていた旅館で、執筆中のほんのわずか席を立った合間に、盗難にあったものだったことが、川端夫人により公表された。 これは川端がいつも世話になっていた旅館に迷惑が及ぶのを慮って、川端が秘密にしたのだという。盗まれた取材ノートには、「写生」がつぶさに記されてあったため、9回目以降の執筆を不可能にし、断念させるほどであった。 未完に終ってしまった続編『波千鳥』は、川端の構想の中では、結婚した菊治とゆき子はうまく行かなくなり離婚し、文子が鉱山の売店で働いているところに菊治がやってきて、2人が再会するところで結末を迎えることになっていたという。川端はその部分について、〈あそこの山の中で心中させることを考えていたんです〉とも述べている。
※この「波千鳥」の解説は、「千羽鶴 (小説)」の解説の一部です。
「波千鳥」を含む「千羽鶴 (小説)」の記事については、「千羽鶴 (小説)」の概要を参照ください。
- 波千鳥のページへのリンク