次期ウクライナ大統領選挙
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2025/10/23 16:11 UTC 版)
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本稿では、2024年3月または4月に行われる予定であったウクライナ大統領選挙（うくらいなだいとうりょうせんきょ）について記述する。
ウクライナでは2024年3月または4月にウクライナ大統領選挙が行われる予定であった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻の影響で2022年2月24日よりウクライナ国内に戒厳令が発令されており、ウクライナの法律では戒厳令発令中の選挙が認められていないため、選挙は実施されなかった[1][2][3][4][5][6]。
戒厳令は、本格的な侵攻以降、議会の承認を得て90日ごとに延長されており、直近（2025年7月現在）では、16回目となる2025年11月5日まで延長されている[7]。
2025年1月のインタビューで、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーは、「2期目を目指すことは現在の目標でも焦点でもないが、その決断は戦争の帰趨次第だ」と述べた[8]。同年9月25日には、戦争終結後は再出馬しない「用意がある」と述べた[9]。
背景
大統領選挙の延期
ウクライナの法律である「戒厳令に関する法的体制について」の第19条では、戒厳令下における大統領選挙、議会選挙、地方選挙を禁止している[10]。また、第10条では、ウクライナ大統領、議会、閣僚会議の権限は戒厳令下でも終了しないものとしている[11][12]。ウクライナ憲法第108条では、「ウクライナ大統領は、新たに選出されたウクライナ大統領が就任するまで、その権限を行使する」と規定されており、ウォロディミル・ゼレンスキー現大統領は、本来の任期満了日である2024年5月20日以降も、次期大統領が就任するまで合法的に大統領職にとどまることが憲法により認められている[13]。
ウクライナでは、大統領選挙が法的に禁止されていることに加え、ロシアの侵攻が続く中、与野党の政治家双方が、治安と避難民への懸念を理由に、2024年の選挙実施の実現可能性に疑問を呈していた[2][13]。ロシアは2024年10月現在、ウクライナ領土の18%を支配しており、約1,400万人のウクライナ人が国外または国内の避難民となっている[2][10][13][14]。
投票に関する課題としては、ロシアの爆撃による有権者への危険と投票方法の混乱の可能性、ウクライナのロシア占領地域の市民が投票できないこと、兵士が投票したり立候補したりできないこと、投票所のインフラが損なわれていること、数百万人の避難民の有権者を反映するように有権者名簿が更新されていないこと、戒厳令による国家権力の拡大と権利の制限により選挙運動が制限され、野党候補者の公正な競争が妨げられること、資金不足、など様々なものが挙げられる[10][13][15][16]。
2023年10月にKIISが発表した世論調査によると、ウクライナ国民の81%が戦争が終わるまで選挙の実施を望んでいないと回答しており、200以上の市民社会団体、NGO、人権団体が戦時中の選挙に正式に反対している[15][17]。2023年11月、ゼレンスキー大統領は、欧州連帯党のオレクシー・ゴンチャレンコ議員がゼレンスキー大統領が2024年3月31日に選挙を実施することを決定したと主張したことに対し、「今は選挙を行う適切な時期ではない」と述べた[18]。11月後半、ウクライナ最高議会（ヴェルホフナ・ラーダ）に代表を送る全政党は、戒厳令解除まで国政選挙の実施を延期することに合意する文書に署名し、戒厳令解除後6ヶ月以内に実施される戦後初の選挙を規制する特別法の策定に取り組むことに合意した[19][20]。
大統領選挙の延期はロシア政府関係者から批判された。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領報道官のドミトリー・ペスコフ氏は、この延期によってゼレンスキー氏の正式な正統性が失われたと主張した。ロシアは2024年に独自の大統領選挙を実施しているが、国際監視団からは前例のないレベルの不正行為と不規則性があったと批判されている[21][22]。
2025年2月26日、同様の決議案が前回否決された後、ウクライナ最高会議（ヴェルホフナ・ラーダ）は戒厳令中に選挙を実施すべきではないことを再確認する決議を可決し、また、ロシア・ウクライナ戦争の終結後に大統領選挙を実施することを誓約した[23][24]。
2025年3月6日、野党政治家のペトロ・ポロシェンコとユリア・ティモシェンコは、アメリカ代表と協議を行ったことを確認した後、依然として戦時中の選挙の実施に反対することを確認した[25]。
選挙制度
ウクライナの大統領は任期5年であり、二回投票制で選出される。第1回投票で過半数を獲得した候補者がいない場合、3週間後に第2回投票が行われる[26]。 ウクライナ憲法第103条によると、大統領の任期満了前に大統領の権限が終了した場合は、現職大統領の任期終了後90日以内に選挙を実施しなければならない。
憲法では大統領の任期は最長2期までと定められているが、2025年10月現在、大統領を2期務めたのはレオニード・クチマのみである[27]。
候補者
出馬の意向を表明した人物
| 名前 | 出生 | 政党 | 経歴 | 出典 | |
|---|---|---|---|---|---|
 オレクシイ・アレストビッチ |
1975年8月3日 (50) | 無所属 | ウクライナ大統領府顧問（2020～2023年） ウクライナに関する三者コンタクト・グループ議長（2020～2022年） |
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 ペトロ・ポロシェンコ |
1965年9月26日 (60) | 欧州連帯 | 人民副首相（1998～2007年、2012～2014年、2019年～現在） ウクライナ大統領（2014～2019年） 貿易経済発展大臣（2012年） 外務大臣（2009～2010年） |
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出馬が予想される人物
| 名前 | 出生 | 政党 | 経歴 | コメント | |
|---|---|---|---|---|---|
 ヴァレリー・ザルジニー |
1973年7月8日 (52) ジトーミル州 |
無所属 | 駐英国大使（2024年～現在）
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政界進出については未だ明らかにしていないが、頻繁に議論されており、世論調査では有力候補の一人としてランクインしている。 | |
 ウォロディミル・ゼレンスキー |
1978年1月25日 (47) ドニプロペトロウシク州 |
国民の僕 | ウクライナ大統領 (2019～現在) | 戦争終結後、再出馬しない「用意」があると示唆した | |
世論調査
関連項目
参考文献
- ^ “Zelensky’s First Term Is Almost Up. No One’s Sure What Happens Next.” (英語). The New York Times (2023年10月5日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ a b c “Ukraine's Zelenskiy ponders idea of 2024 election during war” (英語) (2023年11月4日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ Yurii Kliuchkovskyi and Volodymyr Venher (2022年7月). “Organisation and holding of elections in post-war Ukraine. Prerequisites and challenges”. Council of Europe. 2025年10月24日閲覧。
- ^ “PACE President Tiny Kox: It is up to the Government, Parliament and the people of Ukraine to decide when and how to conduct elections” (英語). Council of Europe Office in Ukraine (2023年5月17日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Ukraine legislature extends martial law and general mobilization through November” (英語). Jurist (2023年7月28日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Ukrainian Parliament extends martial law and general mobilisation” (英語). Ukrainska Pravda (2024年5月8日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ 「Ukrainian parliament extends martial law and mobilisation until 5 November」『Ukrainska Pravda』2025年7月15日。2025年10月24日閲覧。
- ^ 「Zelenskyy to decide on second term based on war's outcome」『Ukrainska Pravda』2025年1月2日。2025年10月24日閲覧。
- ^ Eruygur, Burç (2025年9月25日). “Zelenskyy says he is ready to leave office after end of Russia-Ukraine war”. Anadolu Agency. 2025年10月24日閲覧。
- ^ a b c “Wartime Elections in Ukraine Are Impossible” (英語). Foreign Policy (2023年7月11日). 2023年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年10月24日閲覧。
- ^ “Five years of Zelenskyyʼs presidency will expire in May 2024. Some analysts and enemies say he will lose legitimacy. Itʼs true? — No, this is an unconstitutional delusion. Babelʼs legal and anti-fake analysis” (英語). babel.ua (2024年2月26日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Про правовий режим воєнного стану [On the legal regime of martial law]”. Act of . § 10, § 19.
- ^ a b c d Abdurasulov, Abdujalil「Ukraine war: Fierce row erupts over 2024 election」『BBC News』2023年11月25日。2025年10月24日閲覧。
- ^ “War in Ukraine” (英語). Global Conflict Tracker (2025年9月15日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ a b Oz, Katerji (2023年11月17日). “Zelensky Is Following Ukrainian Law in Postponing Elections”. Foreign Policy. 2023年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年10月24日閲覧。
- ^ “Zelensky's term would have expired this month, but he's staying. Russia wants to use it” (英語). The Kyiv Independent (2024年5月6日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Press releases and reports - When elections should be held, attitudes towards online voting and attitudes towards possible restrictions on citizens' rights: results of a telephone survey conducted on September 30-October 11, 2023” (英語). Kyiv International Institute of Sociology (2023年10月30日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “«Вибори не на часі» – Зеленський прокоментував заяви про можливість виборів у 2024 році” (ウクライナ語). Радіо Свобода. (2023年11月6日)
- ^ “Ukraine's political parties agree on carrying out elections only after the war”. ウクライナ・プラウダ (2023年11月30日). 2023年11月30日閲覧。
- ^ “Conclusions of the ninth Jean Monnet dialogue” (ウクライナ語). Verkhovna Rada (2023年11月12日). 2023年12月3日閲覧。
- ^ “Meduza breaks down the evidence pointing to the most fraudulent elections in modern Russian history” (英語). Meduza (2024年3月20日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Kremlin claims Zelenskyy's fate is "sealed"” (英語). Ukrainska Pravda (2024年4月29日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Проект Постанови про Заяву Верховної Ради України про підтримку демократії в Україні в умовах агресії російської федерації” (ウクライナ語). Verkhovna Rada (2025年2月24日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Про Заяву Верховної Ради України про підтримку демократії в Україні в умовах агресії російської федерації [On the Statement of the Verkhovna Rada of Ukraine on Support for Democracy in Ukraine in the Face of Aggression by the Russian Federation]” (ウクライナ語). Verkhovna Rada (2025年2月26日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Ukraine opposition leaders confirm talks with US but deny plotting to oust Zelenskyy” (英語). The Guardian (2025年3月6日). 2025年10月24日閲覧。
- ^ “Electoral system for the president: Ukraine” (英語). IDEA. 2025年10月24日閲覧。
- ^ “From Kravchuk to Zelenskyy: Analysis of New Year's Addresses by Ukrainian Presidents” (英語). Vox Ukraine (2025年1月2日). 2025年10月24日閲覧。
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