村上 信彦とは? わかりやすく解説

村上信彦(むらかみ・のぶひこ)


村上信彦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/25 22:39 UTC 版)

1956年

村上 信彦(むらかみ のぶひこ、1909年明治42年)3月30日 - 1983年昭和58年)10月31日)は、日本作家女性史研究家、医事評論家。

経歴

大衆作家村上浪六の三男として東京市下谷に生れる。「父浪六が手をつけようとした女中を救い出して父と義絶、その少女と結婚」したとされているが、このエピソードは彼の小説『音高く流れぬ』に登場するフィクションである。本小説は確かに村上本人とその周辺人物がモデルとなっており、村上の妻は女中として村上家に勤めていたが、エピソード自体は創作である。作中では女中に手を付けようとしたのも父ではなく叔父であり、主人公に父母はいない。村上が後年、彼の日記をもとに執筆したドキュメント小説『黒助の日記』にもこのエピソードはない。

府立五中を経て早稲田第一高等学院中退、出版社・興風館に勤務の後、1943年(昭和18年)より、文学、服装史、女性史の研究と著作に従事する。柳田國男の女性への見方を批判した『高群逸枝と柳田国男』で毎日出版文化賞受賞。『大正女性史』を未完のまま死去[1]

浅沼稲次郎を刺殺した山口二矢は姉の子(甥)に当たる[2]

1953年から1961年のあいだ、吾妻 新(あづま しん)の筆名で、SM雑誌『奇譚クラブ』にサディストとして小説・評論を寄稿[3]

著訳書

小説

  • 『音高く流れぬ』全四部(興風館) 1940 - 1941
  • 『出版屋庄平』(教文館) 1943、のち改題『出版屋庄平の悲劇』
  • 「青線区域」(『日刊スポーツ』にて1952年12月より連載)
  • 「感情教育」全11回(『奇譚クラブ』1953年11月号 - 1954年9月号に連載)
  • 「夜光島」全7回(『奇譚クラブ』1954年10月号 - 1955年4月号に連載)
  • 『霧のなかの歌』全四部(三一書房) 1961
  • 『娘は荒地で』(大和書房) 1965
  • 『黒助の日記』全三巻 (偕成社) 1977

評論等

女性史

  • 『女について - 反女性論的考察』(興風館) 1947
  • 『標的者 - 憑かれた精神の考察』(西荻書店) 1948
  • 『ゆがめられた性』(大日本雄弁会講談社) 1954
  • 『あたらしい幸福 - その生き方・考えかた』(青春出版社) 1955
  • 『服装の歴史』全3巻(理論社) 1955 - 1956、のち講談社文庫
  • 『流行 - 古さと新しさ』(講談社) 1957
  • 『女性 - どう生きてきたか』(青春出版社) 1957
  • 『女の風俗史』(ダヴィッド社) 1957
  • 『日本人の服装』(講談社) 1958
  • 『紺の制服 - バス女子車掌たち』(三一書房) 1959
  • 『あぐらをかく娘たち - 戦後女性風俗史』(中央公論社) 1963
  • 『いのちと医学の間』(大和書房) 1966
  • 『明治女性史』上・中前・中後・下(理論社) 1969 - 1972、のち講談社文庫
  • 『近代日本の恋愛観』(理論社) 1974
  • 高群逸枝柳田国男』(大和書房) 1977
  • 『大正・根岸の空』(青蛙房) 1977
  • 『日本の婦人問題』(岩波新書) 1978
  • 『近代史のおんな』(大和書房) 1980
  • 『大正女性史 上巻』(理論社) 1982
  • 『大正期の職業婦人』(ドメス出版) 1983

医事評論

  • 『胃ガン・腸ガン・喉頭ガン・食道ガン・舌ガン』(細川書房) 1970
  • 『肝臓ガン・肺ガン・膵臓ガン・腎臓ガン』(細川書房) 1970
  • 『ガンのワクチン治療』(細川書房) 1970
  • 『蓮見ワクチン病症別療法 4 子宮ガン・乳ガン・膀胱ガン・前立腺ガン・直腸ガン』(細川書房) 1971

翻訳

  • 『悲惨の涯』(シエロツエウスキ、和見正夫名義、興風館) 1940
  • 『芸術と生涯』(ベリル・ベッカー、淡海堂) 1943
  • 『被虐の家』(キドロトシュトツク、吾妻新名義、亜風社) 1953
  • 『恐怖に憑かれて - ある女性神経症患者の精神分析』(L・フリーマン、太平出版社) 1975
  • 『アリスの人生学校』(ピエール・マッコルラン、吾妻新名義、学研プラス) 2002

論文

脚注

  1. ^ 日本人名大辞典
  2. ^ 沢木耕太郎『テロルの決算』、「村上浪六」『近代文学研究叢書』
  3. ^ 「村上信彦の『奇譚クラブ』における匿名テキストを解読する:戦後の民主的平等論者の分身について」『立命館文学』第647号, 2016年



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