指輪
『国家』(プラトン)第2巻 羊飼いギュゲスは、穴の中に偶然見つけた屍体から、黄金の指輪を抜き取った。指輪の玉受けを手の内側に回すとギュゲスの姿は消え、外側に回すと姿は現れた。ギュゲスは指輪の力を使って王妃と通じ、王を殺して王権を我が物とした。
『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』(トールキン)第1部「旅の仲間」2 昔、デアゴルが川底から金の指輪を見つけ出したが、仲間のスメアゴルがデアゴルを絞め殺して指輪を奪った。指輪をはめると姿が見えなくなることをスメアゴルは知り、さまざまな悪事を働いた。彼は喉を鳴らす音から「ゴクリ」と呼ばれ、洞穴に1人住んだ。自らその所有者を選ぶ魔力を持つ指輪は、やがてゴクリを捨て、ホビット族のビルボ、次いで彼の甥フロドにとりついた。
*世界を支配する力を与える指輪→〔宝〕9aの『ニーベルングの指環』(ワーグナー)。
『ソロモンの指環』(ローレンツ)6「ソロモンの指環」 ソロモン王は魔法の指環のおかげで、けものや鳥や魚や地を這うものどもと、語り合うことができたという。しかし1羽のナイチンゲールが、「王様の999人のお妃のうちの1人が、若い男を愛しています」と告げた時、ソロモンは怒りのあまり指環を投げ捨て、動物の世界に対する彼の心は、閉ざされてしまった。
★1c.眠りをさます指輪。
『ルスランとリュドミラ』(プーシキン)第5~6歌 騎士ルスランが、さらわれた花嫁リュドミラを捜して魔法使いの住処(すみか)まで来る。魔法使いチェルノモールはリュドミラを眠らせておいて、ルスランと戦う。ルスランはチェルノモールを倒して(*→〔髪〕1)捕らえるが、リュドミラの眠りはさめない。洞窟の老人(*→〔老婆〕3c)がルスランに指環を与え、ルスランが指環でリュドミラの額にふれると、彼女は目覚める。
『ゲスタ・ロマノルム』10 ウェスパニアヌス王が遠国へ行き、美女を妃として一子をもうけた。王が子を連れて自国へ帰ろうとすると、妃は「わたしを置いて行くのなら、自殺します」と言う。王は職人に「回想の指輪」と「忘却の指輪」を造らせ、自分は「回想の指輪」をはめ、妃には「忘却の指輪」をはめさせる。妃は指輪をはめると、すぐに王の愛を忘れ始めた。王は帰国し、妃のもとへ戻らぬまま、安らかに一生を終えた。
『愛の指輪』(星新一『おせっかいな神々』) なかなか結婚にふみきれぬ恋人を持つ青年が、それをはめた2人は必ず結婚するという、一対の愛の指輪を手に入れ(*→〔二つの宝〕4)、その1つを恋人に贈る。しかし恋人からの手紙には、「後見人の伯母が結婚を許してくれない。独身の伯母は意地悪く、指輪も取り上げられた」と書いてあった。青年は驚くが、自分にも独身の伯父がいたことを思い出す。愛の指輪は見事な効果をあげる。
*若返りの指輪→〔若返り〕2の『ペンタメローネ』(バジーレ)第4日第1話。
★2a.愛のしるしとして、男から女へ・女から男へ、贈られる指輪。
『ヴェニスの商人』(シェイクスピア)第3~5幕 ポーシャは、バッサーニオの妻となるしるしに指輪を渡し、「もしもこの指輪をなくしたら、それはあなたの愛がなくなった証拠」と言う。後、ポーシャは男装して法学博士となりバッサーニオを救うが、その返礼に指輪を要求し、バッサーニオは相手がポーシャとは気づかず、やむなく指輪を与える。ポーシャは女の姿に戻り、バッサーニオが指輪を手放したことを責め、からかう。
『七賢人物語』「妃の語る第七の物語」 王が気に入りの騎士と狩りに行く。王は、かつて妃に愛の証しとして贈った指輪が、騎士の指にはまっているのを見る。騎士は病気と称して先に帰り、秘密の通路を抜けて妃の所へ行き、指輪を返す。狩りから戻った王は「指輪はどこだ」と妃に迫り、妃は指輪を見せる。王は「邪推をしてすまなかった」と妃に詫びる。
*→〔魚の腹〕1の『シャクンタラー』(カーリダーサ)第5~6幕。
*愛のしるしとして贈られる装身具→〔装身具〕1bの『三銃士』(デュマ)。
★2b.男が指輪を二つに折り、半分を自分が持ち、半分を女に渡す。
『熊の皮をきた男』(グリム)KHM101 熊の皮を着た若者が、美しい娘と婚約する。しかし若者は、あと3年間、熊の皮を着続けねばならないので、いったん娘と別れる。若者は指輪を2つに折り、自分の名前を書いた半分を娘に渡して、娘の名前を書いた半分を自分が持つ。3年が過ぎ、若者は熊の皮を脱いで立派な軍人の姿となり、娘に会いに行く。2人の指輪がぴったり合ったので、娘は、目の前の軍人がかつての熊男だったことを知る。
*鏡を2つに割って、夫婦が半分ずつ持つ→〔鏡〕11の『今昔物語集』巻10-19。
『七羽のからす』(グリム)KHM25 烏に変じた7人の兄たち(*→〔呪い〕1)を救いに、末娘がガラス山まで行く。末娘は、烏たちの留守に、食事用の7つの小皿と盃から一口ずつ食べ、盃の1つに両親の指輪を入れる。烏たちが帰って来て指輪を見つけ、「これは、お父さんとお母さんの指輪だ。妹が来ているんだといいなあ。そうすりゃ、みんな救い出されるんだがなあ」と言う。それを聞いた妹が姿を見せると、たちまち烏たちは人間に戻った。
『ろばの皮』(ペロー) 農家の下女「ろばの皮」が、病臥する王子のために、ケーキを作る。「ろばの皮」はケーキの中に指輪を入れておき、それを見つけた王子は、「この指輪がぴったり合う人と結婚したい」と両親に言う→〔指〕9。
『魚と指輪』(イギリス昔話) 領主が息子の嫁を嫌い、指輪を海に投げこんで、「あの指輪を取って来て私に返すまでは、顔を見せるな」と命じ、追放する。嫁は、ある城の台所仕事をして働く。ある時、魚を料理していると、見覚えのある指輪が魚の腹から出て来る。その日はたまたま、夫とその父領主が客として城に来ていたので、嫁は彼らに指輪を示す。
『白蛇』(グリム)KHM17 妃の指輪がなくなり、家来の若者が疑われる。若者は動物の言葉がわかったので、鴨が指輪を呑みこんだことを知り、捜し出す。若者は他国へ旅をし、美しい王女の婿になるための難題に挑む。王が指輪を海に投げ入れて、「拾い上げよ」と命ずる。若者にかつて救われた魚たちが、指輪を持ってくる。他の難題も成し遂げて、若者は王女と結婚する。
『ドイツ伝説集』(グリム)240「女の砂州」 富裕を誇る女が、「私が貧困に苦しむ日など決して来ないであろう。この指輪を再び見ることのないのが確かなように」と豪語して、指輪を海に投げ捨てる。数日後、女中が鱈を買い腹を開くと指輪が出て来たので、女主人に見せる。女は、それが自分の捨てた指輪であると知って青ざめる。
『歴史』(ヘロドトス)巻3-40~42 幸運続きのポリュクラテスは、友人から「不幸も経験しておくのが御身のため」とすすめられ、大切な指輪を海に捨てる。しみじみ不幸の味をかみしめるポリュクラテスの所へ、5日後、漁師が魚を献上する。その腹を開いて見ると、捨てた指輪が出て来た。
『旧雑譬喩経』巻上-27a 母親が「私は物をなくすことがない」と、いつも言っていた。ある日、子供が母親の金の指輪を川へ投げ捨ててしまったが、それでも母親は「私は物をなくすことがない」と言った。何日か後、母親は客を食事に招き、召使を市場へやって魚を買わせる。その魚を調理すると、中から金の指輪が出てきた。母親は子供に「私は物をなくすことがない」と言った→〔因果応報〕2。
★6.指輪の自慢。
『指環』(川端康成) 貧しい法科大学生の「彼」が、翻訳の仕事を持って山の温泉場へ行く。湯船に11~12歳の少女がいて、突然左手を上げ、「あら! はずすのをすっかり忘れていたわ」と叫ぶ。少女は、左手の指環を見せたかったのだ。「彼」が「いい指環ですね」と声をかけると、少女は「蛋白石(オパール)よ」と言って、嬉しそうに「彼」に身を寄せて来た。
『金剛石(ダイヤモンド)の指環』(黒岩涙香) 「余」は妻に、高価な金剛石の指環を買い与えた。3ヵ月ほどすると、指環をはめた無名指(くすりゆび)が腫れてきて、妻は痛みを訴える。医師を迎えても指環を抜くことができず、妻は苦しんだあげく死んでしまう(これはカタレプシーという病で、仮死状態になっただけだった)。「余」は泣く泣く妻を埋葬したが、盗賊が死体を掘り起し、指環を奪おうと、妻の無名指を切り落とす。その痛みで妻は息を吹き返し、盗賊は驚いて逃げ去った。
指輪と同じ種類の言葉
Weblioに収録されているすべての辞書から指輪を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から指輪を検索
「指輪」に関係したコラム
-
世界のプラチナ(白金)の年間採掘量は200トン前後です。金の年間採掘産量が4000トンなので、プラチナは金の約20分の1の量しか採掘されていません。下の図は、プラチナの生産量をグラフに表したものです。
- >> 「指輪」を含む用語の索引
- 指輪のページへのリンク