帝国国策遂行方針
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:58 UTC 版)
この間、日本の国策は対米開戦へと大きく傾斜していた。8月16日、海軍側から陸軍側へ「帝国国策遂行方針」と呼ばれる新たな国策案が提示された。その骨子は「戦争を決意することなく戦争準備を進め、この間外交を行い、外交打開の途なきに於いては実力を発動」するというというもので、海軍の狙いは臨戦態勢を整えることにあった。 しかし、ここで海軍と陸軍の開戦プロセスの違いが表面化する。海軍の戦争準備は、おもに艦隊の編成を戦時編成に切り替えることであり、「戦争決意」がなくとも柔軟に対応できた。それに対し陸軍の戦争準備は、内地で大量の兵士を動員して、大陸へ海上輸送することであり、「戦争決意」なしに本格的な戦争準備はできないというのが陸軍側の論理であった。こうして陸軍側(おもに参謀本部)は「戦争決意」を明記した修正案(「帝国国策遂行要領」と呼ばれる)を提示し、海軍側との折衝を重ねることとなる。海軍側は戦争決意に強硬に反対していたが、結局、「戦争を辞せざる決意」との文言で妥協が成立し、戦争決意の時期は10月上旬となった(8月30日成立の「帝国国策遂行要領」陸海軍案の案文は「対英米戦争を辞せざる決意の下に、概ね十月下旬を目途とし戦争準備を完整す」「外交交渉により十月上旬に至るも尚我が要求を貫徹し得ざる場合に於ては、直ちに対米開戦を決意す」)。 要は「『戦争準備だけは完成して開戦・避戦は最後の瞬間に決定すればよい』と考える海軍と、『開戦決意を明定しなければ戦争準備が進められない』との立場に立つ陸軍が、机上で作文した」のが実態であったが、のちの日本の国策を著しく制限することになった。
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