学業期
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「オーギュスト・コント」の記事における「学業期」の解説
革命後、フランスは未だ初等教育が未整備であったため、コントは幼少期に近所の老人から読書算を学んだ。 1802年、国民公会が定めた「中央学校令」に基づき、全国各地に中等教育機関としてリセが設置された。1806年、コントは9歳に入ると寄宿生としてリセに入学することになる。当時のリセは軍隊式の寄宿生活を教育方針とし、文系教科として古典のラテン語、数学をはじめとする理系教科が設定された。コントは文理両教科で共に優秀な成績をおさめた。1812年にはエコール・ポリテクニック入学に必要な学力を修養していたが、年齢資格を満たしていなかったためしばらくリセに留まった後、1814年に同校に入学試験を受けて合格を果たした。コントはナポレオン体制の反動的支配と両親から離れてリセでの息苦しい軍隊教育を受ける中でカトリック信仰を捨てて、やがて共和主義者へとなっていく。 1814年はナポレオンがロシア遠征に失敗して諸国民戦争でプロイセンと連合軍に敗北、パリに帰還後に退位した。戦勝国はウィーン条約を締結して、フランス帝国の占領地域を分割し、フランスにブルボン朝を再興させることを承認した。 ちょうどこの年、コントは念願のエコール・ポリテクニックに入学を果たした。 エコール・ポリテクニックは理工科大学校とも訳されるが、性格的には防衛大学校に近く、学校教育のモットーは「祖国、科学、栄光のため」であり、多数の生徒がパリ防衛戦(1814年)(英語版)に参加し、帰らぬものとなった。エコール・ポリテクニックは1794年に数学者のガスパール・モンジュ、軍事学者であり陸軍大臣のラザール・カルノーの発案によって国民公会が設置した総合科学教育機関で、リセで優秀な成績を収めた生徒を対象とした高等教育の場であった。教授には数学者ジョゼフ・フーリエ、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ、電気学者のアンドレ=マリ・アンペール、化学者ペルトレが務めていた。コントはエコール・ポリテクニークで数学を専攻した。 当時、エコール・ポリテクニークはパリ防衛戦の影響から兵営ともなって軍事教練もおこなわれたが、コントは優秀な教授による日々の講義を楽しみ、啓蒙思想家の著作やフランス革命の記録、アメリカ独立に関する文献を読み漁り、フランス革命が旗印とした「自由・平等・友愛」の精神を柱とした学生生活を送っていた。 詳細は「リセ」および「エコール・ポリテクニック」を参照 しかし、歴史は急展開を見せる。1815年、流刑地のエルバ島を脱出して北上、パリを奪取したナポレオンは再び帝位についた(百日天下)。コントもフランスの勝利に期待を抱いていたが、ブリテン・プロイセン連合軍にワーテルローの戦いに敗北した。結局、ナポレオンは退位を宣言、フランスは王政復古を果たす。王党派であった両親と異なり革命に感化を受けたコントは王政復古に強い憤りと絶望を感じたという。コントは後輩のヴァラに宛てて、こう語った。 「如何に立派な精神が学校の生徒を支配しているか、君には判らないでしょう。僕たちの間には完全な団結があるのです。……。僕たちの真面目な行為には、非常に共和主義の感じがあるのです。……。これが学校全体の精神なのです。……。追伸。これからのジェネレーションは、私たちのジェネレーションに比べて、もっと愚かになるでしょう。そうなれば、もう希望はありません。わが祖国の自由は失われて、二度と戻ってこないでしょう。国王の専制が1789年の崇高な叛乱の以前の姿で復活するどころか、もっと恐ろしいことになるでしょう。憐れなフランスよ!自由な不幸の友よ!理性と人類のために!神よ!本校と同じ精神がフランス全土に普くあらんことを!」 17歳のコントは優秀な学生であったが、王政復古への憤りと軍隊式生活の窮屈さから急進的で反抗的な学生となっていた。自暴自棄な素行不良が見られた。たびたび娼館に出かけるといった件で叱責を受け営倉送りの処分を受けている。そのため教授陣から目を付けられ、復習教師とのトラブルが原因で退学に追い込まれてしまう。学業優秀なだけに卒業間際の退学処分はコントにとって極めて不本意なことで、コントの内面の中で社会に対する不信感が高まっていく。エコール・ポリテクニーク校退学はコントの人生の大きな転機となった。その後、コントの学友たちはエコール・ポリテクニークに復学していくが、コントは地元のモンペリエに帰郷してしまい、復学を選択しなかった。ここからコントの新しい挑戦が始まる。 詳細は「ナポレオン」、「ワーテルローの戦い」、および「フランス復古王政」を参照
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