各層の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/29 17:02 UTC 版)
第I - VI層 脊髄後角にあたる。第I層:後角のもっとも背側、辺縁に位置する層。後側辺縁核とも呼ばれる。神経細胞体はまばらで、ワルダイエルの辺縁細胞と呼ばれる細胞が分布する。末梢の侵害受容器(痛覚の受容体)からの刺激を伝える軸索(主にAδ線維とC線維)がこの層の細胞に投射している。またリサウエル路はここを通っており、この軸索もこの層に投射する。痛覚を伝える脊髄視床路の通過経路のひとつである。 第II・III層:第I層の前方に位置する。第II層は小細胞の細胞体が密集しており、他の部分から明瞭に区別でき、ローランドの膠様質とも呼ばれる。第III層は第II層ほど密集していないが、細胞の形態は似ている。第I層が有髄の一次ニューロンからの投射を受けるのと異なり、第II層には侵害受容器、温度受容器、機械受容器(触覚などの圧情報を感知する)からの無髄線維が投射している。 第IV層:ニッスル小体を豊富に含む大きな細胞体が分布する。第I層、第V層とともに脊髄視床路を形成している。第III層と第IV層は後角固有核(固有感覚核)と呼ばれる場所に相当する。 第V・VI層:ともに内側、外側にさらに分けられる。第V層の外側は網様核とも呼ばれ、頸髄で発達している。第VI層は第四胸髄から第二腰髄までの髄節には見られない。ただしヒトでは、第V層と第VI層はほとんど細胞学的に変わらないため、第V - VI層と一括して扱われることもある。上述のように第V層は脊髄視床路を形成する。頸膨大の第VI層は中央基底核と呼ばれる。第VI層には脊髄小脳路の二次ニューロンの神経細胞体がある。 第VII - IX層 脊髄前角、側角(および後角の一部)にあたる。第VII層:後角との境界から前方に広がる広い部分に分布し、中間灰白質とも呼ばれる。特に頸膨大と腰膨大では前角の尖端まで分布し、その中に第VIII層と第IX層が島状に浮かぶかたちになる。逆に胸髄と仙髄では第VIII層が大きく、第VII層は前角の基部だけに分布する。この層では中間内側核、中間外側核、クラークの背核、オヌフ核が目立つ。中間内側核には内臓求心性神経の投射を受けて、内臓遠心性神経(自律神経)との間の介在ニューロンとしての役割があると考えられている。中間外側核は胸髄のみにあり、側角に分布している。ここに交感神経節前ニューロンの神経細胞体がある。クラークの背核は第八頸髄から第一腰髄までの第VII層内側寄りにある円形の目立つ核で、背側脊髄小脳路の二次ニューロンの神経細胞体がある。背核がある場所は、層分類としては第VII層とされるが、前角ではなく後角基部である。オヌフ核は第二から第四仙髄にあり、分布の場所も細胞の形も胸髄の中間外側核に似ているが、こちらは副交感神経の節前ニューロンの神経細胞体である。 第VIII層:頸膨大と腰膨大では前角の内側にわずかに分布するだけだが、それ以外の髄節では前角の前方に大きく広がっている。前庭脊髄路、内側縦束、橋網様体脊髄路、視蓋脊髄路といった下行路の一次ニューロンがここに投射している。 第IX層:体性運動ニューロンの細胞体からなる。胸髄では前角の腹内側にあるに過ぎないが、頸膨大と腰膨大では細胞数も多く大きな範囲を占める。大きな細胞体をもつ細胞と小さなそれのものがある。大きな細胞体の神経ははα運動ニューロンと呼ばれる。α運動ニューロンは皮質脊髄路の二次ニューロンで、前角の外側にあるものほど遠位の筋を、内側のものは近位の筋を支配している。また屈筋を支配する細胞は前角の背側に、伸筋を支配するものは腹側に存在する。小さな方はγ運動ニューロンであり、α運動ニューロンの間に散在している。γ運動ニューロンは筋紡錘の収縮を支配しており、筋緊張の維持に関わる。それ以外にも多くの介在ニューロンが存在しているが、有名なものにレンショウ細胞がある。1940年代初頭にバージー・レンショウ (Birdsey Renshaw) が発見し、α運動ニューロンの側副線維からの投射を受け、隣接する他の運動ニューロンに抑制的に働くという負のフィードバックの機能を持つ。この現象は反回抑制と呼ばれる。 第X層 中心管周囲の灰白質。
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