ワンケル・レックスとは? わかりやすく解説

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ワンケル・レックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/27 07:03 UTC 版)

ロッキー博物館の外のワンケル・レックスのブロンズのキャスト。

ワンケル・レックスWankel Rex、標本番号 MOR 555)は、1988年にアメリカ合衆国モンタナ州チャールズ・M・ラッセル自然保護区英語版で発見されたティラノサウルスの個体。前肢がほぼ完全に保存された約18歳の亜成体であり、実骨標本は2019年から国立自然史博物館で展示されている[1]

発見

1988年、キャシー・ワンケルがアメリカ合衆国モンタナ州チャールズ・M・ラッセル自然保護区でワンケル・レックスを発見した。発掘作業は古生物学者ジャック・ホーナー率いるロッキー博物館英語版スミソニアン博物館の1つ)のチームがアメリカ陸軍工兵司令部の補佐を受けて行った。産出したワンケル・レックスには単離した頭骨をはじめ骨格の約85%が保存されており、前肢のような細かい構造もほぼ完全に保存されていた[1][2][3]

特徴

ワンケル・レックスは18歳で死亡した個体であり、完全には成長しきっていない[1]。全長は約11.6メートル、体重は5.8 - 10.8トン(平均8.3トン)と推定されている[4]。現在ではスースコッティなどに記録を抜かれているが、発見時点では最大のティラノサウルス標本であった[2]

また、ワンケル・レックスは化石化した骨の中に生体分子がまだ存在するかどうかを調べるために研究された最初の化石恐竜の骨格の一つでもある。当時博士号候補者であったメアリー・シュバイツァーは、ヘモグロビンを構成する鉄の生物学的形態であるヘムを発見し、2013年に発表した[5]

展示

実骨標本

ワンケル・レックスの実骨はモンタナ州ボーズマンのロッキー博物館に実骨標本が長く展示されていた。

ワンケル・レックスは工兵隊が所有しており、長年ロッキー博物館での展示を許可していた。2013年6月に工兵隊はスミソニアン博物館群の1つであるワシントンD.C.の国立自然史博物館に50年契約で貸し出した[1][6]。国立自然史博物館のワンケル・レックス標本は、2013年10月16日から、2014年春に博物館の恐竜ホールの展示が改装のために閉鎖されるまで展示された[6]。2019年に再び開館してからは常設展の目玉展示となった[1][6]。常設展示でのワンケル・レックスは、トリケラトプスハッチャーを捕食する姿勢で展示されている[7]

なお、ロッキー博物館にはマイケル・ホランドによる頭蓋骨の鋳造復元品が展示された[6]。また、ロッキー博物館には数多くのティラノサウルスの骨格が所蔵されており、ワンケル・レックスが移された後はペックズ・レックスが展示された[5]

レプリカ

ロイヤルオンタリオ博物館のワンケル・レックス。

レプリカはスコットランド博物館[3]オーストラリア化石鉱物博物館英語版カリフォルニア大学古生物学博物館英語版などに展示されている。また、ロッキー博物館の外にはビッグ・マイクと呼ばれるブロンズ製の標本が立っている[5]

日本では神流町恐竜センター群馬県[1]豊橋市自然史博物館愛知県[8]御船町恐竜博物館熊本県[9]でレプリカが常設展示されており、特に神流町恐竜センターのレプリカでは産状が再現されている[1]。また、2011年には福井県立恐竜博物館の企画展『新説 恐竜の成長』でも展示された[10]

出典

  1. ^ a b c d e f g ティラノサウルス産状骨格(解説)”. 神流町恐竜センター (2020年5月1日). 2020年12月26日閲覧。
  2. ^ a b Joseph Stromberg (2013年6月26日). “After 103 Years, the Natural History Museum Finally Gets Its Own Tyrannosaurus rex”. スミソニアン博物館. 2020年12月26日閲覧。
  3. ^ a b Tyrannosaurus rex”. スコットランド博物館. 2020年12月26日閲覧。
  4. ^ John R. Hutchinson; Karl T. Bates; Julia Molnar; Vivian Allen; Peter J. Makovicky (2011-10-12). “A Computational Analysis of Limb and Body Dimensions in Tyrannosaurus rex with Implications for Locomotion, Ontogeny, and Growth”. PLos ONE. doi:10.1371/journal.pone.0026037. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0026037. 
  5. ^ a b c Gail Schontzler (2013-06-28). Montana T. rex heading to Smithsonian. http://www.bozemandailychronicle.com/news/montana_state_university/article_b15faf46-df9e-11e2-acf9-001a4bcf887a.html 2020年12月26日閲覧。. 
  6. ^ a b c d J. Freedom du Lac (2013年6月27日). “T. rex dinosaur gets long-term lease at Smithsonian’s Natural History Museum”. ワシントン・ポスト. https://www.washingtonpost.com/local/tyrannosaurus-rex-gets-long-term-lease-at-smithsonians-natural-history-museum/2013/06/27/0ac970c8-de76-11e2-b797-cbd4cb13f9c6_story.html 2020年12月27日閲覧。 
  7. ^ “T. Rex Finds Dangerous Meal as Smithsonian Dinosaur Hall Reopens”. REUTERS. (2019年6月6日). https://jp.reuters.com/article/us-usa-dinosaurs/t-rex-finds-a-dangerous-meal-as-smithsonian-dinosaur-hall-reopens-idUSKCN1T71R3 2021年5月21日閲覧。 
  8. ^ ブラキオサウルスを大掃除 骨格標本は慎重に… 恐竜もきれいに 愛知・豊橋市自然史博物館. 朝日新聞社. (2018年12月23日). https://www.youtube.com/watch?v=jziIrxUh72k 2020年12月26日閲覧。 
  9. ^ ティラノサウルス 〜進化の謎に迫る〜”. 御船町恐竜博物館 (2018年). 2023年4月27日閲覧。
  10. ^ 特別展写真館”. 福井県立恐竜博物館. 2020年12月26日閲覧。


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