プラッタ
プラッタとは、ハードディスクドライブ(HDD)に内蔵されている円盤状の部品のことである。HDDでデータを保持する部品であり、たいては一つのHDDにつき複数枚のプラッタが収められている。
プラッタはアルミなどを原料とする金属製の円盤であり、表面に磁性体が塗布されている。その磁性体の磁化状態を信号として読み取ったり、あるいは書き換えたりすることによって、HDDのデータの読み出しや記録が行われている。ちなみにHDDでデータの読み書きを行う部分はヘッドと呼ばれており、ヘッドをプラッタの任意の位置まで移動させる機構はアクセスアームと呼ばれる。
HDDの記憶容量は、プラッタ1枚の容量とプラッタの枚数をかけた値となる。このため同じ60GBのハードディスクでも、20GBのプラッタが3枚収納されている場合と、30GBのプラッタが2枚収納されている場合がある。プラッタの記録密度を増やせば、同じ記憶容量をより少ない枚数のプラッタによって実現できるため、よりコストパフォーマンスが高くなる。
プラッタ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/09 00:18 UTC 版)
プラッタ(Platter)とは、ハードディスクドライブやフロッピーディスクと呼ばれる磁気ディスク装置の、平滑な円盤状の記録用部品のことである。
概要
2010年現在では、プラッタを用いたほとんどの記録装置ではプラッタの両面を記録面としており、1枚から4枚程度のプラッタを持った標準的なものはその2倍の2面から8面程度の記録面とその同数の読み書きヘッド/アームを持っている。過去には何十枚ものプラッタを備えてその片面だけを記録面とする製品も存在したが、現在、片面だけを記録面とする形式が存在するかは不明である。円盤の材質はアルミニウム製のものが多いがガラス製やセラミック製もある。これらはいずれも非磁性であり表面に記録用の磁気塗膜が塗られた状態で高い精度の平滑性と表面硬度、高速回転による振動を抑制できる高い剛性、耐衝撃性を備えたものである。こういった磁気記録装置の多くでは小型化が求められるため、ほとんどの装置ではプラッタがドーナッツ状になっていてその中央の穴に駆動モータが位置するようになっている[1]。3.5インチやそれより小さい一般的なHDDではトラッキング処理は記録面ごとに行うためにプラッタ数が増えても読み書き性能に変化はない。
ハードディスクドライブについてはハードディスクドライブを、フロッピーディスクについてはフロッピーディスクを、磁気ディスクについては磁気ディスクを参照のこと。
製造
アルミニウム製プラッタ
一般にA5086系のアルミニウム合金が用いられる。この合金は、表面欠陥の元となるケイ素(Si)と鉄(Fe)の成分を抑制した純度99.94% - 99.99%のアルミニウムに、めっき性を良くするために銅(Cu)と亜鉛(Zn)が加えられたものである。このアルミニウム合金は脱ガス・フィルタ処理が行われてから鋳造され、均質化熱処理と熱間圧延の後に、精密な板厚制御冷間圧延が行われて、板状のコイルとなる。
素材であるアルミニウム・コイルはリコイルによって曲がりが直されてから打ち抜き加工されてドーナッツ状のブランク材となる。ブランク材は積み付け鈍焼によってひずみが直される。この段階でブランク材の表面平坦度は4μm以下になっている。内径と外径が切削加工によって端面処理され表裏2枚の表面がSiCを砥粒とするPVA砥石を備えた両面研削盤で研削加工されて洗浄後、アルミニウム・サブストレートになる。
アルミニウム・サブストレートは洗浄、エッチング処理、ジンケート処理の後にNiPの無電解めっきが施され、再びさらに精密に表面が研削加工される。研削後の洗浄が終わった段階で平滑度は数オングストローム以下となる。
裏打ち層、中間層、磁性体層、保護層、潤滑層などがスパッタ処理などによって表面に塗布され、検査を終えてプラッタの完成となる[1]。
脚注
- ^ a b 社団法人 日本アルミニウム協会編、『現場で生かす金属材料シリーズ アルミニウム』、工業調査会、2007年5月1日初版1刷発行、ISBN 9784769321880 P.138-P.141
参考文献
関連項目
プラッタ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 01:36 UTC 版)
「ハードディスクドライブ」の記事における「プラッタ」の解説
データを記録する円板部分を「プラッタ」と呼び、プラッタの各面のことを「サーフェス」と呼ぶ。プラッタは主にアルミニウム若しくはガラスで製造されているが、近年では平滑性の高さや強度の面からガラス製プラッタが採用されている。通常、ハードディスクドライブは1枚以上のプラッタで構成されていて、それぞれのプラッタの両面または片面にデータが記録される。プラッタの数は少ない方が軽量で、故障に対する信頼性が高いことから、1枚当たりの記録密度を高くすることは性能向上のひとつの手段である。ガラス製プラッタはHOYAによって発明され、ガラス製の3.5インチハードディスク・プラッタを使った世界初の製品は、2000年にIBMから発売されたIBM Deskstar DTLA-307020である。 広く普及しているCSS (Contact Start Stop) 方式を採用したものは、ディスク停止時には磁気ヘッドとプラッタは接触している。磁性体の層の上にはライナーと呼ばれる潤滑被膜が形成されていて、回転速度が低いうちはライナーの上をヘッドが滑る。回転速度が上がるにつれてプラッタ表面近傍の粘性空気が磁気ヘッドに対し気流となり、磁気ヘッドが揚力を発生して極わずかに浮き上がる(浮上開始原理を「地面効果に因るもの」とする誤記が書籍やウェブサイトに散見されるが、浮上後に大きく効果が生じるのであり、浮上開始、すなわちヘッドを持ち上げ始めることにはほとんど寄与していない)。一旦浮上した磁気ヘッドはディスクとの間に気流をはらむため地面効果が働きプラッタへの接触を抑制する。ライナーが劣化すると摩擦によりヘッドが損傷し、ヘッドクラッシュという現象を起こす。一般に、密閉式のハードディスクドライブは準消耗品的な扱いを受ける場合が多く、ライナーの寿命がハードディスクドライブそのものの寿命となる。 これに対し、Load/unload方式を採用したHDDでは停止時にプラッタの外側のランプと呼ばれる退避位置にヘッドを退避させていて、プラッタの回転速度が規定の速度に安定した段階でプラッタ上へ移動させる機構となっている。 Load/Unload方式、別名ランプロード方式と呼ばれる、この方法はディスクが動作していない時にヘッドがプラッタに接触しない状態になるため、比較的高い耐衝撃性を持つ。一般的にCSS方式を採用した古いSeagate製のHDDなどはプラッタが回転することによって発生する上昇気流によってロック機構が外れるように設計されているが、ランプロード方式は、ヘッド根本を磁石やプラスチック製でできたロック機構で停止時にヘッドが脱出しないようにしているが、まれに強い衝撃を加えるとヘッドがプラッタの方に脱出し、プラッタを傷つけ物理障害となりうる。 古い時代(1980年代)のハードディスクドライブは、停止命令を送ると(NECのPC-9800シリーズでは「STOP」キーを押すと)ヘッドをプラッタから引き上げ、退避位置に移動させるようになっていた。しかし、部品点数削減と停止命令を送らないOS(代表的にはMS-DOS)の普及などといった理由から、ヘッドがプラッタ上に置かれたままで停止するCSS方式が採用されるようになった。これに伴い、「はりつき」と呼ばれる現象が発生するようになった。これは、鏡のようになめらかな面を持つ2つの物体が接触した状態で時間が経過した場合などに発生する現象で、ハードディスクドライブが起動しなくなる深刻な障害として現れる。回復させるために、電源を入れながら(水が入ったバケツから水をこぼさずに振り回すが如く)筐体に遠心力を与えたり、クッションに包んでハードディスクドライブを床に落として衝撃を与えたり、筐体を分解してディスクを手で強制的に回転させたりというような、さまざまな民間療法が考案された。後にプラッターの一部に凹凸を付けた領域(シッピング・ゾーン)を設け、停止時にヘッドをそこへ移動させる方式が採用されて「はりつき」の問題は解消された。今日のOSはハードディスクドライブに停止命令を送るようになり、特に耐衝撃性能が要求される携帯機器向けのハードディスクドライブではヘッドを退避領域に戻す機構(ドロップ・センサー機能)が再び採用されている。 プラッタに埃などの異物が付着するとヘッドを損傷する原因となるため、プラッタとヘッドの周辺は密閉されている。開封するには特殊な工具を必要としたり、「開封後は保証対象外」と書かれた封印が貼られている場合が多い。ただし、完全密閉されているわけではなく、温度変化に伴う筐体内の気圧変化を開放するため、埃フィルタを備えた圧抜き開口部が設けられている。ヘッドに働く揚力の大小は空気密度(すなわち気圧)の影響を受けることから、ヘッドとプラッタサーフェスの距離を安定に保つためには筐体内の気圧が大きく変化してはならないためである。一方、高地などの気圧が低い環境下ではヘッドに発生する揚力が小さくなり、ヘッドがぶつかりやすくなるため、それぞれの製品には使用環境の気圧(高度)に関する仕様もある。但しヘリウムなどを充填した大容量HDDは、埃フィルタを備えた圧抜き開口部は設けられず、工業的に可能な範囲で密閉されている。 プラッタは様々な表面処理技術によって進化している。
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