ブルーラグーン 〜恋の目覚め〜
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| ブルーラグーン 〜恋の目覚め〜 | |
|---|---|
| Blue Lagoon: The Awakening | |
| 監督 | ミカエル・サロモン ジェイク・ニューサム |
| 脚本 | マット・ヘラー ヘザー・ラットマン |
| 原作 | ヘンリー・ドヴィア・スタックプール 『The Blue Lagoon』 |
| 製作 | カイル・クラーク ネリー・ヌギエル |
| 製作総指揮 | クレイグ・ザダン ニール・メロン ジュディス・ヴェルノ |
| 出演者 | ブレントン・スウェイツ インディアナ・エヴァンス デニス・リチャーズ クリストファー・アトキンズ |
| 音楽 | トゥリー・アダムズ |
| 撮影 | デニス・ルノア ロイ・ワグナー |
| 編集 | ジョシュ・ビール |
| 製作会社 | ピースアウト・プロダクション シルバー・スクリーン・ピクチャーズ ソニー・ピクチャーズ テレビジョン ストーリー・ライン・エンターティンメント |
| 配給 | ライフタイム |
| 公開 | |
| 上映時間 | 89分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 英語 |
『ブルーラグーン 〜恋の目覚め〜』(ブルーラグーン こいのめざめ、原題:Blue Lagoon: The Awakening)は、2012年に製作されたアメリカ合衆国のテレビ映画。2012年6月16日にアメリカのテレビ局ライフタイムで初放送された。1980年公開の『青い珊瑚礁』の現代版リメイクであるが、話の展開は大胆にアレンジされている。日本ではビデオスルー作品としてリリースされた。
概要
本作は『青い珊瑚礁』(1980年)と同様にヘンリー・ドヴィア・スタックプールの小説『The Blue Lagoon』を原作としているが、舞台は1800年代のヴィクトリア朝から2012年の現代に変えられた。また、『青い珊瑚礁』と続編『ブルーラグーン』の主人公たちが太平洋で遭難したのに対し、こちらはカリブ海の島に漂着する。
「無人島生活を送る2人が惹かれあい、セックスで結ばれる」ことと、「遭難した子供を親が探し続けている」という点だけがオリジナルと同じで、それ以外の部分は大きく変更された。原作と過去の映画化作品は、数ヵ月に及ぶセックスの果てに少女が妊娠し、島で出産するが、本作は2人が無人島で子供を作らないまま文明社会に帰るハッピーエンドで終わっている[注 1]。
ストーリー
高校生の“エマ”ことエマリン・ロビンソンとディーン・マクマレンが通う学校は、恵まれない子たちの学校建設について学ぶため、教師クリスチャンセンの引率でトリニダード島へ修学旅行に向かう。島での夜、一部の学生たちはボートパーティーに興じていた。海上を巡回中の地元警察が馬鹿騒ぎをする学生たちに警告を発した時、エマは誤ってボートから転落し、それに気づいたディーンも海に飛び込む。ボートに繋がっていた救命用ボートに2人は乗るが、面倒ごとに巻き込まれないようにとディーンはロープを切り離し、その間にパトロール艇に誘導されたボートは遠ざかってしまう。
水平線の向こうに見える無人島に辿りついた2人は、性格が正反対だったことから最初は上手く嚙み合わなかったが、徐々に互いを助け合うようになって行く。エマの両親バーバラとフィル、ディーンの父ジャックは子供らの捜索を続けるよう地元警察に訴えるものの、半月も過ぎた頃に生存を絶望視したトリニダート政府は捜索活動を打ち切る。
島の砂浜で人骨が見つかり、自分たちもこのまま死ぬのだと取り乱すエマを、ディーンはキスで落ち着かせる。2人は激情のまま全裸になってセックスを始め、やがてディーンが彼女の中で果てると、エマは「すごく気持ち良かった」と感動を口にして泣いた。エマとディーンの親は独自に子供を探し続けるが手がかりは得られず、ジャックは「充分に最善は尽くした。残念だが諦め時かも知れない」とバーバラに話す。その間もディーンたちは海で魚を捕り、ジャングルで果物を集め、そしてセックスをする毎日を過ごした。何回目かの性行為を終えた直後にエマは、自分のセックスは合格点かと妙なことを彼に訊く。初体験の相手はディーンだったのだ。驚いたディーンは初めての相手になれて嬉しいと告げた。エマは初心者の自分はもっと勉強をする必要があると囁き、先ほど行為を終えたばかりの2人は再び身体を重ねて愛し合う。
2ヵ月半ほど経つとエマは吐き気に見舞われる。セックスでは避妊をしていないため、ディーンは妊娠を疑うが、エマは否定した。だがその会話の中で、お互いにいつか子供を作りたいと思っていたことが分かる。遭難から100日も過ぎた頃、2人は島の上空を通りかかった観光ヘリコプターに救助された。家族や友人、マスコミに迎えられて帰国した2人は、元の生活に逆戻りして気まずい関係になる。エマはプロムのパーティーに参加し、外で雨に打たれているディーンを見つける。エマの恋心に気付いていた友人リジーは、ディーンの所へ行くよう彼女を後押しし、エマはディーンと抱き合って情熱的なキスをした。ディーンは「こんなものより、もっと酷い雨も体験したよ」と笑いながら、2人は土砂降りの雨の中でダンスを踊って絆を深める。
キャスト
- エマリン・ロビンソン - インディアナ・エヴァンス[1]
- ディーン・マクマレン - ブレントン・スウェイツ[1]
- バーバラ・ロビンソン - デニス・リチャーズ[1]
- フィル・ロビンソン - フランク・ジョン・ヒューズ[1]
- ジャック・マクレン - パトリック・セント・エスプリト[1]
- クリスチャンセン - クリストファー・アトキンズ[1]
- リジー - アリックス・エリザベス・ギター[1]
- ヘレン - ヘイリー・キヨコ[1]
- ジュード - エイミー・カレロ[1]
- トーマス校長 - マーカス・ジアマッティ[2]
スタッフ
- 監督 - ミカエル・サロモン[1]、ジェイク・ニューサム[1]
- 原作 - ヘンリー・ドヴィア・スタックプール[1] 『The Blue Lagoon』
- 製作 - カイル・クラーク[3]、ネリー・ヌギエル[3]
- 製作総指揮 - クレイグ・ゼイダン[1]、ニール・メロン[1]、ジュディス・ヴェルノ[1]
- 脚本 - マット・ヘラー[1]、ヘザー・ラットマン[1]
- 撮影 - デニス・ルノア[1]、ロイ・ワグナー[2]
- 編集 - ジョシュ・ビール[3]
- 音楽 - トゥリー・アダムズ[3]
- 美術 - アンソニー・メディナ[3]
- 衣装デザイン - サルバドール・ペレス・ジュニア[2]
- 特殊効果 - アルバート・ランヌッティ[2]
- 視覚効果 - ブラッド・バリンジャー[2]、マイケル・カプラン[2]
企画
2004年3月、ケーブルテレビ局の最新情報を配信するニュースサイトのThe Futon Criticは、ソニー・ピクチャーズ テレビジョンとストーリー・ライン・エンターティンメントのクレイグ・ザダン、ニール・メロンが、1980年公開の『青い珊瑚礁』をTVムービーとしてリメイクする企画が進行中という速報を出した。シャノン・ブラッドリーが脚本を執筆し、主人公2人の壮大な冒険とラブストーリーに焦点を当てた現代的なアプローチになると書かれており、1980年版にあった性の目覚めは排除されるという[4]。
続報は長らく途絶えていたが、7年後の2011年に企画が動き出し、アメリカのケーブルテレビ局ライフタイムが『青い珊瑚礁』の現代版リメイクの製作を承認。2012年2月からカリブ海のプエルトリコで撮影を目指し、既にキャスティングが始まっていると報じられた[5]。
製作
2012年2月6日、『青い珊瑚礁』リブート版の主人公役にオーストラリア人のインディアナ・エヴァンスとブレントン・スウェイツが決定し、製作をソニー・ピクチャーズが担当することが報道された。2人は以前にもオーストラリアで放送されたメロドラマ『ホーム・アンド・アウェー』(1988年)で共演歴があった[6]。原作小説と1980年のオリジナル版は、熱帯の島に取り残された2人の幼い子供が第二次性徴によって初潮と精通を迎え、やがてセックスの悦びを知る“思春期の男女の性の目覚め”を描いたものだった。本作に出演するスウェイツは当時22歳、エヴァンスは21歳で、最初からセックスの知識を持つ17-18歳の現代の高校生役を演じることになった[7]。
製作は映画監督のエリック・ブロスと撮影監督のデニス・ルノアによって、カリフォルニアで始まった。ハワイのマウイ島で撮影がスタートすると、監督はミカエル・サロモン、カメラマンはロイ・ワグナーに交代し、製作初期の監督を務めたブロスはジェイク・ニューサムの偽名でクレジットされている[7]。
2012年5月15日の『ハリウッド・リポーター』は、ライフタイムが『青い珊瑚礁』の現代版リメイクの放送日を、6月16日に決定したことを報道した。ここで「成績優秀なエマと、怠け者のディーンが船外に転落して無人島に漂着し、お互いを頼りながら生き延びようとする」といったあらすじが公開され、旧作でブルック・シールズと共演したクリストファー・アトキンズも出演していることが発表された[8]。また、ライフタイムはこの時のプレスリリースで、本作の主演はデニス・リチャーズと明記している[9]。
ディーン役のスウェイツは2012年6月のインタビューの中で、「今どきの若い子たちは『ゴシップガール』や『ヴァンパイア・ダイアリーズ』を知っていても、1980年の『青い珊瑚礁』は観たことがありません。僕もこの仕事が決まるまで、原作や昔の映画のことは正直よく知りませんでした」と話した。リブート版にはオリジナル版の主役であるアトキンズも出演していたことから、スウェイツはアトキンズと一緒に予習のために『青い珊瑚礁』を鑑賞した。しかしミラ・ジョヴォヴィッチが主演の続編の方は、「残念ながら最後まで観る気にならなかった」と言い、一部だけ観たという。スウェイツは「今回は“青い珊瑚礁”という同じタイトルの映画に、ジャングルで過ごす少年少女が出てくる設定が共通しているだけで、以前の映画とは違うよ。ジャングルと都会の対比を描くために、約半分ほどはロサンゼルスで撮影しているんだ。1980年の映画版とは全く違います」と語った[10]。
スウェイツと共に主演を務めるエヴァンスは、11歳の頃からオーストラリアの子供向け番組で仕事をしていた女優で、本作は初めてのアメリカ映画となった。「主役を演じられて、これ以上の素敵な仕事は考えられません。アメリカ流の英語の台詞で喋れたことは本当に素晴らしい体験で、撮影もとても楽しかったんです。(映画の)ほぼ全てのシーンに出演したのも初めてのことでした」とインタビューで話している[11]。
評価
『ブルーラグーン 〜恋の目覚め〜』は賛否両論の評価を受けたが、1980年の公開時に批評家たちから酷評されたオリジナル版に比べると、好意的な映画評が多かった。IMDbでは10点満点中5.3点と、やや平均を上回る高得点で[12]、レビュー収集サイトのMetacriticでは、5人の評論家レビューに基づいて51/100の得点を与えられ、「賛否両論か、あるいは平均的」な評価になっている[13]。
『ニューヨーク・ポスト』の女性コラムニスト、リンダ・シュターシは、30年以上前に映画ジャーナリストの女性ジャネット・マスリンが『青い珊瑚礁』について述べた批評を引用しながら、「テレビでよく放送されているあの映画は、半端なく酷いので最後まで観ることが出来なかった」と書いた。シュターシは「2人の初めてのセックスの後に2匹の亀の交尾場面が続く恥ずかしいオリジナル版と違い、ここではエマとディーンの“目覚め”が上品に描かれ、感情の昂ぶり以外はほとんど何も描かれません。映画開始から43分後、彼らは大自然の呼び声に屈して、遂に生殖行為に及びます。私がおかしいのかも知れませんが、この馬鹿げた1分1秒をとても楽しみました」と評価した[14]。
『ニューヨーク・タイムズ』のマイク・ヘイルは、『青い珊瑚礁』でアカデミー賞にノミネートされたネストール・アルメンドロスの輝かしい撮影技術が欠けていると指摘しつつも、どちらも実年齢が20代前半のエヴァンとスウェイツが、「オリジナル版『青い珊瑚礁』でまだ10代だった2人の主人公よりも演技が優れている」と誉めた[15]。
批判的な評としては、『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』紙の記者ロブ・オーウェンが、特にセクシーとはいえないセックス場面で、木の枝や大きな葉が彼らの下半身を隠すカメラワークに制作者の弱腰が伺えると書いた。また、土砂降りの中で2人の恋人がダンスを踊るラストシーンについても「現実ではこんなことを誰もしないだろうが、低品質のロマンティック映画では観客の気を引くためによく使われる手法だ」と続け、ブルック・シールズがこの映画に出演していないのは、馬鹿げた現代版リメイクから遠ざかろうとした結果だろうと酷評した[16]。
オランダの映画批評サイト『ムービー・メーター』には、「高校生の主人公たちがあまりにも世俗的過ぎて、オリジナル版のテーマである文明社会から解放された自然人に成長するまでのドラマに至らない。避妊具を売っていない無人島で2ヵ月間も、毎日のようにセックスをしているのに、不思議なことに妊娠しない。要するにそれほど素晴らしくもない映画の、さらに出来の悪いコピーだ。オリジナル版に比べて新しい要素が全くない」と辛辣に書かれている[17]。
脚注
注釈
- ^ 妊娠の可能性を示唆する場面はある。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r “ブルーラグーン 〜恋の目覚め〜”. allcinema. 2025年10月25日閲覧。
- ^ a b c d e f “Blue Lagoon: The Awakening Full cast & crew”. IMDb. 2025年10月25日閲覧。
- ^ a b c d e “ブルーラグーン 〜恋の目覚め〜”. 映画.com. 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Breaking news”. The Futon Critic (2004年3月29日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Lifetime Greenlights 'Blue Lagoon' Remake”. Deadline.com (2011年12月9日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Lifetime's 'Blue Lagoon' Reboot Casts Leads”. Deadline.com (2012年2月6日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ a b “Blue Lagoon: The Awakening Trivia”. IMDb. 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Lifetime’s ‘Blue Lagoon’ TV Movie to Premiere in June”. Deadline.com (2012年2月6日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Breaking news”. The Futon Critic (2012年5月15日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Back to ‘Blue Lagoon’: Rising Heartthrob Brenton Thwaites on Remaking an Erotic Camp Classic (Video)”. ハリウッド・リポーター (2012年6月15日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Indiana Evans and Brenton Thwaites on Blue Lagoon: The Awakening”. TEEN VOGUE (2012年6月14日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Blue Lagoon: The Awakening Ratings”. IMDb. 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Blue Lagoon: The Awakening”. Metacritic. 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Different shade of ‘Blue’”. ニューヨーク・ポスト (2012年6月14日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Smile! It’s Time for a Guilty Plunge Into Summer TV”. ニューヨーク・タイムズ (2012年6月15日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “'Let It Shine' puts new sheen on two old familiar tales”. ピッツバーグ・ポスト・ガゼット (2012年6月15日). 2025年10月25日閲覧。
- ^ “Blue Lagoon: The Awakening (2012)”. ムービー・メーター (2021年11月19日). 2025年10月25日閲覧。
外部リンク
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