ファイター_(ダンジョンズ&ドラゴンズ)とは? わかりやすく解説

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ファイター (ダンジョンズ&ドラゴンズ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/06 15:38 UTC 版)

ファイターは、ファンタジーロールプレイングゲームダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)に登場するキャラクタークラスの一つ[1]

ファイターは、D&D最初期から存在するクラスであり、オリジナル版での呼び名は「ファイティング・マン(Fighting Man)」であった。スキルや戦術を駆使し、武器を重視して戦う万能の戦士である。一般的かつ幅の広いクラスであり、個々のファイターには、冒険者、元兵士、ボディガード、盗賊、剣の達人など、様々な背景やスタイルがある。

歴史

Original Dungeons & Dragons

「ファイティング・マン」は、『Original Dungeons & Dragons[注 1]』における3つのクラスのうちの1つであり、他の2つのクラスはマジック・ユーザー[注 2]クレリックであった[2][3][4]

パラディン」はファイティング・マンのサブクラスとして、『Supplement I: Greyhawk』(1975)に登場した[5]

Dungeons & Dragons Basic set

D&D Basic set[注 3]』では、使用可能なキャラクタークラスに「ファイター」が登場した。

Advanced Dungeons & Dragons第1版

「ファイター」は、オリジナルの『プレイヤーズハンドブック(『PHB』)』で使用できる標準的なクラスの1つであり[6]、5つのコア・クラスの1つとして紹介されていた[7]。第1版『Advanced Dungeons & Dragons[注 4]』において、ファイターは物理的な戦闘に最も適したクラスであり、他の能力を持たないという弱点でバランスがとられていた。ファイターは通常、知力、判断力、魅力を高めても大きな恩恵は無く、筋力、敏捷力、耐久力を上げることで、戦闘力を高めることができた。高いヒット・ポイント(HP)、強力な鎧を装備できる、そしてTHAC0[注 5]の低下が最速であることも、戦闘において強みだった。よく使われるオプションルールとして、ファイターは武器を専門化することで、命中とダメージにさらなるボーナスを得るというのもある。

『PHB』では、ファイターのヒット・ダイスはd10に増加した[8]

Advanced Dungeons & Dragons第2版

「ファイター」は「ウォーリアー」グループの一つとして[注 6]、第2版『PHB』で使用可能な標準クラスの1つである[6]。第2版『PHB』には、伝説上の有名なファイターの例をいくつか挙げている。ヘーラクレースペルセウスハイアワサベーオウルフジークフリートクー・フーリン、リトル・ジョン[注 7]トリスタンシンドバッドなどである[9]。この本には、偉大な将軍や戦士の名前も多く挙げられている。エル・シッドハンニバルアレクサンダー大王カール大帝スパルタクスリチャード獅子心王ベリサリウスなどである[9]

『The Complete Fighter's Handbook』には、ファイターといくつかのサブクラスが詳述されている[6]。この本は、このクラスの特殊能力の欠如を補う試みがなされた。スワッシュバックラー[注 8]、グラジエーター、ノーブルウォーリアーといった様々なキットを提供することに加え、ハンドブックではプレイヤーがウォーリアーの戦闘能力をカスタマイズできる、いくつかのスキルを紹介した。新ルールには、グループ武器の習熟度、継続的な特殊化、素手戦闘の追加ルール、4つの異なる戦闘スタイル(シングルウェポン、ツーウェポン、ウェポン&シールド、ツーハンドウェポン)が導入された。

Dungeons & Dragons第3版

D&D第3版[注 9]』では、ファイターの能力のほとんどが「combat feats(ファイターがbonus featsとして選択可能なもの)」となり、そのメカニズムが大きく変更された[10]。これにより、ファイターは単純な攻撃よりも、専門化した様々な戦闘技術を選択できるようになった。

アイコニック・キャラクター[注 10]は、ヒューマンの男「Regdar」である[11]

Dungeons & Dragons第3.5版

『D&D3.5版』では、ファイターは第3版と比べて大きな見直しは行われなかった。主な変更点は、「Greater Weapon Focus」と「Greater Weapon Specialization」(どちらも選択した武器による攻撃力を上げる)の特技がファイター専用になったことである。3.5版では、ファイターの主要な(そして唯一の)クラス特徴である、特技ツリーの深みを増すことに重点が置かれた。

2006年の『Player's Handbook II』では、ファイターが使用できる特技の数が大幅に増加し、武器特化能力と同様に高レベルのファイターのみが使用できる能力が多数追加された。

Dungeons & Dragons第4版

「ファイター」は『D&D第4版』のコア・クラスであり、他のクラスと同様に新たなパワー・システムを採用し、「武勇」のパワー源を持つ[注 11]。ファイターの役割は防御役であり[注 12]、高いHP、優れた防御能力、他のパーティ・メンバーを敵から守る能力を持つ。もう1つの防御役である「パラディン」とは異なり、ファイターは味方を回復することができず、遠隔戦闘能力も制限されるが、与ダメージ能力と移動力のコントロールに長ける。

『プレイヤーズ・ハンドブック』には、攻撃重視の「Great Weapon Fighter」と、防御重視の「Guardian Fighter」の2種類のビルドが紹介されている。『武勇の書(Martial Power)』では、さらに2つのビルドが紹介されている。2つの軽武器を使用する「Tempest Fighter」と、斧とハンマーを使用し、一時的なHPという形で回復力が大幅に強化された「Battlerager Fighter」である[12]。ファイターの攻撃パワーは一般的に武器をベースとし、攻撃ロールに筋力を使用するが、敏捷力、判断力、耐久力の恩恵を受けるパワーも多い。ファイターの攻撃の中には、アックス、スピア、ライトブレードなど、特定のグループの武器で使用すると追加効果が得られるものもある。

Dungeons & Dragons Essentials

エッセンシャルズ・ルールブック『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ 墜ちた地の勇者(Heroes of the Fallen Lands)』では、ファイターの別バージョンとして、「ナイト」と「スレイヤー」の2種類が紹介されていた。ナイトは防御に重点を置き、スレイヤーは攻撃と防御の両方に重点を置く。

Dungeons & Dragons第5版

「ファイター」は、『D&D第5版』の『PHB』にコア・クラスとして含まれている[13]。プレイヤーは3レベル時、ファイターのサブクラス「戦士の類型」から1つを選ぶことができる。シンプルなパワーに重点を置いた「チャンピオン」、「戦技」という武器の威力を高める独自リソースを持つ「バトル・マスター」、一部の呪文が使用可能になる「エルドリッチ・ナイト」である[14]

後に出版されたソースブックでは、追加のサブクラスを与えることで、ファイターというクラスを拡張している。『ソード・コースト・冒険者ガイド(Sword Coast Adventurer's Guide)』 (2015)では、「パープル・ドラゴン・ナイト」が追加され、味方の支援とサポートに重点が置かれている。『ザナサーの百科全書(Xanathar's Guide to Everything)』(2017)では、魔法を込めた弓術を使う「アーケイン・アーチャー」、騎乗戦闘や味方の防御、敵との交戦のためのマーキングなどに重点を置いた「キャヴァリアー」、回復力、素早い攻撃、社交的な交流に重点を置く「サムライ」が追加された。『Explorer's Guide to Wildemount』(2020)には「Echo Knight」が追加された。『ターシャの万物釜(Tasha's Cauldron of Everything)』(2020)では、「サイ・ウォーリア―」と「ルーンナイト」が追加された[15]

ノンプレイヤーキャラクター

第3版には「ウォリアー」という、ファイターを簡略・弱体化したものがあり、町のガードマンなどのノンプレイヤーキャラクターとして使用することを想定している。

評価

スコット・テイラーは、Black Gateにおいて「確かに、多くのゲーマーはファイターから始まる。ファイターは基本的に "簡単"であり、新規プレイヤーのクラスだ。武器を振ってダイス運を祈るだけでいいからだ。呪文を覚える必要も、祈祷書や聖印も、盗賊道具も必要ない。ただ鎧を着て、剣を持って行くだけだ。お分かりだろうが、私は本当にそれが好きなのだ!」と語っている[16]

Screen Rantは、ファイターを第5版の12コア・クラスの中で、2番目に強力なクラスと評価した[17]

The Gamerは、『ザナサーの百科全書』に登場する32の新キャラクター・オプションの中で、第5版のファイターのサブクラス「サムライ」を「13の素晴らしいサブクラス」の1つとして紹介している[18]

FiveThirtyEightのGus Wezerekによる第5版のレポートでは、2017年8月15日から9月15日までに、プレイヤーがD&D Beyondで作成したキャラクター10万人あたりのクラスと種族の組み合わせの内、ファイターが合計13,906人と最も多く作成されたと報告した。種族の組み合わせではヒューマン(4,888)が最も多く、次いでドワーフ(2,009)、そしてドラゴンボーン(1,335)の順だった。Wezerekは、「5年前に『D&D』をプレイし始めたとき、このゲームで最も人気のある組み合わせである、"ヒューマンのファイター"を選ぶことはなかっただろう。私の最初のキャラクターは、アルビノのドラゴンボーンのソーサラーだった。でも最近は、この組み合わせのシンプルさが理解できるようになった。」と語っている[19]

脚注

注釈

  1. ^ 1974年に発売された、D&Dの最も古いルール。今日の目からは非常に簡素で曖昧なもので、後にいくつものサプリメントで補完されていった。
  2. ^ 後に「メイジ」等と呼び名が変わっていく。今日では「ウィザード」に相当する。
  3. ^ 『OD&D』にルールが追加されていく内まとまりが無くなってきたため、改めて整理された簡素で入門的なルール。現在では『Classic D&D』とも呼ばれる。より複雑で上級者向けの『AD&D』と、2つの路線での展開が続いた。
  4. ^ 『OD&D』にルールが追加されていく内まとまりが無くなってきたため、改めて整理されたより複雑で上級者向けなルール。より簡素で入門的な『D&D Basic set』と、2つの路線での展開が続いた。
  5. ^ 「To Hit Armor Class 0」の略。アーマー・クラス(AC)0の相手に攻撃を当てる数値を弾き出すためのもの。かつてのD&DではACは低いほうが良く、クラス毎の基本THAC0から相手のACを減算して、命中に必要な数値を出していた。レベルアップなどで、基本THAC0は徐々に低下させることができた。第3版以降では、ACは高いほうがいいように変更され、THAC0も撤廃された。
  6. ^ 全てのキャラクタークラスは、「ウォーリアー」「プリースト」「ローグ」「ウィザード」という、4つの「グループクラス」に属している。同じグループ内のクラスは、似たような性能を持つ。
  7. ^ ロビン・フッド伝説における、ロビンの片腕的存在。「ちびのジョン」という呼び名に反した、怪力の大男。
  8. ^ この名のキットには、ウォーリアー版とシーフ版の2つのタイプがある。後の版では、ローグのサブクラスとなっている。
  9. ^ D&Dの権利を有していたTSRWizards of the Coastに買収された後、『AD&D第2版』を基に作られた。大幅な変更が多数あり、実質『AD&D第3版』であったが、これ以降は単に『D&D第~版』とだけ呼ばれるようになった。
  10. ^ 第3版から導入された、各クラスを象徴するキャラクター群。イラストやテキストの説明で繰り返し登場する。
  11. ^ 第4版では、データや選択ルールが肥大化した第3版からスリム化を図り、大幅な変更がされている。これまでの呪文を含めたクラス毎の能力は「パワー」というものにまとめられ、『PHB』記載のクラスは、「武勇」「秘術」「信仰」のいずれかのパワー源を持つ。
  12. ^ 第4版の全てのクラスは、「撃破役」「防御役」「制御役」「指揮役」の、いずれかの役割に属している。

出典

  1. ^ Livingstone, Ian (1982). en:Dicing with Dragons, An Introduction to Role-Playing Games (Revised ed.). Routledge. ISBN 0-7100-9466-3 
  2. ^ Gary Gygax, and Dave Arneson. Dungeons & Dragons (3-Volume Set) (TSR, 1974)
  3. ^ Tresca, Michael J. (2010), The Evolution of Fantasy Role-Playing Games, McFarland, p. 62, ISBN 978-0786458950, https://books.google.com/books?id=8H8bzqj6S4sC&pg=PA62 
  4. ^ Shannon Appelcline (2014). Designers & Dragons: The '70s. en:Evil Hat Productions. ISBN 978-1-61317-075-5 
  5. ^ Gary Gygax and Robert Kuntz. Supplement I: Greyhawk (TSR, 1975)
  6. ^ a b c Schick, Lawrence (1991). Heroic Worlds: A History and Guide to Role-Playing Games. Prometheus Books. ISBN 0-87975-653-5 
  7. ^ Ewalt, David M. (2013). Of Dice and Men: The Story of Dungeons & Dragons and the People Who Play It. Scribner. ISBN 978-1-4516-4052-6 
  8. ^ Turnbull, Don (December 1978 – January 1979). “Open Box: Players Handbook”. White Dwarf (Games Workshop) (10): 17. 
  9. ^ a b Cook, David (1989). en:Player's Handbook. TSR. ISBN 0-88038-716-5 
  10. ^ Advanced Dungeons & Dragons, 3rd Edition at GamesFirst! Retrieved on December 3, 2008.
  11. ^ Witwer, Michael; Newman, Kyle; Witwer, Sam (2018). Dungeons & Dragons Art & Arcana: A Visual History. Ten Speed Press. p. 299, 327, 341. ISBN 9780399580949 
  12. ^ Down for maintenance!”. Archive.wizards.com. 2014年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月3日閲覧。
  13. ^ Keeping it Classy”. Dnd.wizards.com (2014年7月28日). 2019年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月21日閲覧。
  14. ^ Modifying Classes”. Dnd.wizards.com (2015年4月6日). 2016年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月16日閲覧。
  15. ^ Turney, Alexandria (2020年11月5日). “All 30 D&D Subclasses In Tasha's Cauldron Of Everything” (英語). ScreenRant. 2020年11月6日閲覧。
  16. ^ Taylor, Scott (2011年5月4日). “Art of the Genre: The Fighter – Black Gate”. 2025年7月17日閲覧。
  17. ^ Dungeons And Dragons: Ranking All Of The Base Classes, From Least To Most Powerful” (英語). ScreenRant (2019年2月14日). 2019年11月26日閲覧。
  18. ^ 10 Awesome Subclasses From Xanathar's Guide To Everything (D&D Expansion)” (英語). TheGamer (2019年8月7日). 2019年11月26日閲覧。
  19. ^ Wezerek, Gus (2017年10月12日). “Is Your D&D Character Rare?” (英語). FiveThirtyEight. 2019年11月26日閲覧。

外部リンク




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