グラハム・トーマス
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グラハム・トーマスは、バラの園芸品種の1つ。1983年にイギリスで、デヴィッド・C.H.オースチンによって作出された[1][2]。イングリッシュローズが世界的に人気になる火付け役となった品種である[2]。2009年の世界バラ会議で「栄誉の殿堂入りのバラ」に選出された[2]。品種名は、デヴィッド・オースチンの師で園芸研究家の同名の人物の名前[1][2]。デビッド・オースチンが不遇の時代からサポートしていた人物で、命名に際してトーマス自身がこのバラを選んでいる[2]。
返り咲き性・シュラブのイングリッシュローズ[1][注 1]。交配種は、実生×(チャールズ・オースチン×アイスバーグの実生 )[1][注 2]。イギリスでは樹高1.2m、株張り1.5mのシュラブに育つが、もっと温暖な日本では大型化するので、つるバラとして利用することもできる[4]。日本では、枝は3.5mまで伸びる[1]。山吹色の花をカップ咲きで、5-8輪の房咲きになって咲かせる[1][2]。花弁数は約60枚[1]。花径は7-10cm[1][2][3][5]。花はややうつむいて咲く[2]。花弁が強く、雨でも傷みにくい[6]。返り咲き性のバラではあるが、関東以西の平地では夏の花までで、秋以降の花数は少ない[2]。返り咲きの花の数自体が少ないと書く本もある[7]。花付きはとてもよいが、花もちは悪い[2]。細い枝にも花が付くが、花は結実しやすい[7]。香りの強さは中香から強香[2][7]。香りの質はティー系[7][4][6]。花枝は細く長いが堅く、株が大きくなるに連れて充実する[2]。葉は浅い緑色で、耐病性がある[1][6]。無農薬栽培でもうどん粉病は出にくいが、黒点病にはやや弱いと報告されている[7]。耐寒性があり、最低気温摂氏マイナス15度の地域でも耐えられる[4]。樹勢は強い[2]。強健種で、日照のよい環境 (西日の当たる場所や半日以上の日照がある場所)・水はけのよい土地を好むが、日照不足や半日陰でもよく生育する[1][4][7]。旺盛な生育力があり、シュートはまっすぐに伸びる[1]。生育中は枝を切り戻さない方がよい[5]。大株にまで育ててから夏剪定で枝先を切り戻すようにすると、よく返り咲くようになる[1]。作出国のイギリスでは、切り花、混植ボーダー、スタンダード仕立てに適当とされている[4]。日本では、フェンスやオベリスクに誘引して仕立てることもできるが、花茎が長いので用途には制約がある[2]。交配種としても重要で、後のイングリッシュローズの基礎を作った品種である[7]。
脚注
注
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l NHK出版 編『別冊NHK趣味の園芸 バラ大百科 選ぶ、育てる、咲かせる』日本放送出版協会、2006年4月20日、270頁。ISBN 978-4-14-645776-8。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 河合伸志『美しく育てやすいバラ銘花図鑑』日本文芸社、2019年3月20日、98頁。 ISBN 978-4-537-21667-7。
- ^ a b 主婦の友社 編『バラ図鑑820』主婦の友社、2019年4月30日、159頁。 ISBN 978-4-07-433816-0。
- ^ a b c d e 英国王立園芸協会 編、英国王立園芸協会日本支部 訳『バラ図鑑300』日本ヴォーグ社、1996年11月10日、73頁。 ISBN 4-529-02774-0。
- ^ a b 田村正隆『美しい花を咲かせるためのはじめてのバラの育て方』ナツメ社、1999年11月17日、68頁。 ISBN 4-8163-2700-2。
- ^ a b c 高橋和彦監修『はじめてのバラの育て方と庭づくり』池田書店、83頁。 ISBN 978-4-262-13619-6。
- ^ a b c d e f g 梶浦道成・小竹幸子 編『オーガニック・ローズ358』築地書店、2012年5月25日、191頁。 ISBN 978-4-8067-1439-2。
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