クライスリ圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/02 05:18 UTC 版)
圏論においてクライスリ圏(クライスリけん、英: Kleisli category)とは、『すべてのスタンダード構成は関手の随伴対から得られるか』という予想に対し、ハインリッヒ・クライスリが解答をするにあたって導入した圏である[1]。
概要
スタンダード構成(standard construction;余モナド)の概念はホモロジー代数の分野では早くから現れていたが、随伴概念の発見に伴い、すべてのモナドは関手の随伴対から得られるのではないかという予想がP.J.Hilton その他によって立てられていた[2]。これに対し二つ解答が寄せられたが、その解答者の一人であるハインリッヒ・クライスリは『Every standard construction is induced by a pair of adjoint functors(1965)』で、
- 定理
- 圏 L におけるスタンダード構成 (C,k,p) が与えられたとする。このとき、圏 K が存在し、さらに (C,k,p) を導き随伴を成す二つの共変関手 F : K → L と G : L → K が存在する。
を証明して解答したが、ここで新たに随伴対 (F,G) を構成するために必要となるドメインの圏 K はクライスリ圏(Kleisli category)と呼ばれるようになった。クライスリ圏については、イタリアの計算機科学者エウジニオ・モッジによる計算機科学のプログラム意味論における応用がモナドの理論として存在する。
定義
クライスリトリプル(Kleisli triple)
圏 C 上のクライスリトリプル(Kleisli triple)とは、関手 T : C → C、自然変換 η(ηA : A → T A for A ∈ Obj(C))、射 f : A → T B に対して射 f* : T A → T B を与える拡張演算子(extension operator) _* からなる三つ組 (T, η, _*)で、以下
- ηA* = 1T A
- f*・ηA = f ただし、f : A → T B
- g*・f* = (g*・f)* ただし、f : A → T B かつ g : B → T C
を満たすものを言う。
クライスリ圏(Kleisli category)
圏 C 上にクライスリトリプル(T, η, _*)が与えられているとき、クライスリ圏(Kleisli category)CT とは、対象、射、射の合成規則を以下のとおり定めたものを言う。
- CT の対象は、C の対象である
- CT において、対象 A から B への射の集まり HomCT(A,B) は、C における射の集まり HomC(A, T B) である
- CT において、射 f ∈ HomCT(A,B) と射 g ∈ HomCT(B,C) の合成射とは、g*・f : A → T C である
モナドのクライスリ圏
圏 C 上のモナド <T,η,μ> が与えられたとすると、クライスリトリプルの拡張演算子 _*はモナドを用いて定義することができる。具体的には、任意の射 f : X → T Y に対して、_* を
クライスリ圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 09:42 UTC 版)
圏 ℂ 上のモナド ( T , η , μ ) {\displaystyle (T,\eta ,\mu )} に対して、T のクライスリ圏 C T {\displaystyle \mathbb {C} _{T}} は C {\textstyle \mathbb {C} } と同一の対象を持ち、 C T ( x , y ) = C ( x , T y ) {\displaystyle \mathbb {C} _{T}(x,y)=\mathbb {C} (x,Ty)} によって定まる射を持つ圏である。このとき、 C T {\displaystyle \mathbb {C} _{T}} における射の合成は、 f : x → T y {\displaystyle f:x\to Ty} と g : y → T z {\displaystyle g:y\to Tz} に対して x → f T y → T g T 2 z → μ z T z {\textstyle x\xrightarrow {f} Ty\xrightarrow {Tg} T^{2}z\xrightarrow {\mu _{z}} Tz} で定まる。また、恒等射は η x : x → T x {\displaystyle \eta _{x}:x\to Tx} となる。 クライスリ圏 C T {\displaystyle \mathbb {C} _{T}} に対して、随伴となる関手 F T : C → C T {\textstyle F_{T}:\mathbb {C} \to \mathbb {C} _{T}} と U T : C T → C {\textstyle U_{T}:\mathbb {C} _{T}\to \mathbb {C} } は次のように定められる: F T ( x ) = x {\displaystyle F_{T}(x)=x} , F T ( f ) = η y ∘ f {\displaystyle F_{T}(f)=\eta _{y}\circ f} U T ( x ) = T x {\displaystyle U_{T}(x)=Tx} , U T ( f ) = μ y ∘ T f {\displaystyle U_{T}(f)=\mu _{y}\circ Tf} 定義から U T ∘ F T = T {\displaystyle U_{T}\circ F_{T}=T} であり、従って T {\displaystyle T} は F T {\displaystyle F_{T}} と U T {\displaystyle U_{T}} に伴うモナドである。 クライスリ圏とそれに伴う随伴は、任意の随伴 F ⊣ G : C ⇀ D {\displaystyle F\dashv G:\mathbb {C} \rightharpoonup \mathbb {D} } に対して K ∘ F T = F {\textstyle K\circ F_{T}=F} と G ∘ K = U T {\textstyle G\circ K=U_{T}} を満たす関手 K : C T → D {\displaystyle K:\mathbb {C} _{T}\to \mathbb {D} } がただ1つ存在するという性質を持つ。
※この「クライスリ圏」の解説は、「モナド (圏論)」の解説の一部です。
「クライスリ圏」を含む「モナド (圏論)」の記事については、「モナド (圏論)」の概要を参照ください。
- クライスリ圏のページへのリンク