若返り
若返り
★1a.草・花・果実・薬などを、飲んだり食べたりして若返る。
『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻3-18 オケアノスの彼方の大陸に「不帰の郷」があり、「快楽川」が流れている。そのほとりの木の実を食べた者は、もろもろの欲望を捨て、少しずつ若返る。老人が壮年、青年、少年へと回帰し、やがて胎児となって消滅するのである〔*→〔逆さまの世界〕1bの『逆まわりの世界』(ディック)に類似〕。
『ギルガメシュ叙事詩』 不死を求めて旅をするギルガメシュは、不死者ウトナピシュテムから海底の若返りの草のことを教えられる。ギルガメシュは深淵にもぐって若返りの草を手に入れるが、故郷ウルクへ帰る途中、水浴をしている間に、蛇が来てその草を食べてしまう。
『今古奇観』第8話「灌園叟晩逢仙女」 崔玄微という老人が、広い庭に多くの草花を植えて楽しんでいたが、花の精からもらった花びらを食べて30代に若返り、後には神仙の道を得て仙界へ去った。
『七草草紙』(御伽草子) 楚国の大しうは、百歳に及ぶ老父母に、帝釈天の教えによって春の七草を与え、20歳ほどに若返らせた。
『ファウスト』(ゲーテ)第1部 初老の学者ファウスト(*50歳代と考えられる)は、悪魔メフィストフェレスの用意した若返りの薬を飲み、30年若返る。美しい青年の姿となったファウストは、街角で見かけた10代の処女マルガレーテ(グレートヒェン)を誘惑して、関係を持つ。
『桃太郎昔語(ももたろうむかしがたり)』 昔々のこと。爺は山へ草刈りに、婆は川へ洗濯に行った。川に流れて来た桃を食べると、爺と婆は若夫婦に変じて、2人の間に元気な赤ん坊(=桃太郎)が生まれた〔*江戸時代の桃太郎の物語は、若返った婆が桃太郎を産む、という形が多い〕。
『若返りの水』(昔話) 山へ炭焼きに行った爺が、岩陰の清水を飲み、若者になって家に帰った。婆が羨んで清水へ行くが、うんと若返ろうと欲張って飲みすぎ、赤ん坊になってしまった(山梨県西八代郡)。
『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」 若く美貌のアシュヴィン双神が、老チャヴァナ聖仙とともに湖水に入る。しばらくして3人は湖から出て来るが、老チャヴァナ聖仙はすっかり若返って美青年となっており、アシュヴィン双神との見分けがつかないくらいだった→〔三者択一〕4。
『万葉集』巻13 3259歌 「・・・月読(つくよみ)の持てる変若水(をちみづ)い取り来て君にまつりて変若(をち)えてしかも〔*月の神が持っている若返りの水を取って来て、我が君に差し上げ、若返っていただきたい〕」とあるように、月の神は若返りの水を持つ、との俗信があった。
*お月様とお日様が、変若水(しじみず)を人間に与えようとする→〔死の起源〕1の『月と不死』(ネフスキー)。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第9章 魔女メディアが牡羊を八つ裂きにして煮、子羊に若返らせる。「同様にして老ペリアス王を若返らせる」とのメディアの言葉に、王の娘らは欺かれ、ペリアス王を細々に切り裂いて煮る。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第1日第10話 王様がだまされて老婆と共寝するが、明かりをつけてその正体を見、怒って老婆を庭へ放り出す。朝、通りかかりの7人の妖精が、老婆を15歳ほどの美女に変身させる。王様はその美女が昨夜の老婆とは知らず、花嫁にする→〔真似〕2。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第4日第1話 ミネコ老人は魔法の石を指輪にはめ、それに願って18歳の若者になり、王女と結婚する。しかし魔術師に指輪を奪われ、ミネコは老人にもどる。2匹の鼠が魔術師の指をかじって指輪を取り返し、ミネコは前以上の美男子になる。
八百比丘尼の伝説 18歳の娘が人魚の肉を食べ、死ねない身体になって、百歳になると18歳に戻ることを繰り返す。娘は尼になって「白比丘尼」と呼ばれたが、後に若狭の国へ行き8百年以上も生きたので、「八百比丘尼」とも呼ばれた(石川県輪島市縄又町)。また、結婚して夫とともに老いるが、夫が死ぬと娘時代に若返ることを繰り返した、ともいう(福井県小浜市)。
『竹取物語』 翁が竹中からかぐや姫を見つけ、姫は3ヵ月で成人して、多くの男が求婚に来る。その時、翁は70歳過ぎだった。翁が20余年かぐや姫を養った頃、姫は「私はまもなく月へ帰る」と告げるが、その年、翁は50歳ほどだった〔*『竹取物語』の記述をそのまま読めば、翁は1年に1歳ずつ若返ったことになる〕。
『毘沙門の本地』(御伽草子) 天竺瞿婁(くる)国の千載王が90歳、妃が60歳の時、申し子をして天大玉姫を得た。姫が生まれると王は20歳、妃は17~18歳ほどに若返った。乳母も50歳から17~18歳ほどになり、その他、民百姓にいたるまで、姫を拝んだ人は皆若返った。
*薊子訓と対座した老人たちは、鬚も髪も黒くなった→〔白髪〕2cの『神仙伝』巻5「薊子訓」。
『だまされた女』(マン) 50歳の未亡人ロザーリエは閉経期を迎え、自分がもはや女でなくなったことを寂しく思う。彼女は、24歳の青年ケンと知り合い、胸をときめかせる。ある日、ロザーリエは思いがけず出血を見て、「再び生理が始まった。私の身体に奇蹟が起こったのだ」と歓喜する。彼女はケンと逢い引きの約束をするが、その直後に大量出血で倒れる。ロザーリエは子宮癌に侵されていたのだった〔*→〔盗作・代作〕3の『再春』(松本清張)は、女性作家がこの小説を知らなかったため、盗作問題を起こす物語〕。
*これとは逆の設定で、病気だと思ったら妊娠だった、という物語がある→〔妊娠〕5aの『カズイスチカ』(森鴎外)。
★6.老人が若者から若さをもらうが、反省して再び老人にもどる。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 ヤヤーティ王は聖仙シュクラに呪われ、老人になってしまった。王は5人の息子たちに、「わしの老年を引き受けてくれ」と頼む。4人は断るが、末子が父の老いを引き受けて、自分の若さを父に与える。若返った王は、虎のようにたくましくなり、2人の妃と愛の営みを千年以上も楽しんだ。しかしある時、王は人の欲望に限りのないことに気づき、若さを末子に返した。王は断食の行をおこない、妃たちとともに昇天した。
『未来ドロボウ』(藤子・F・不二雄) 病気で余命6ヵ月の金持ち老人が、貧しさゆえ高校進学を断念した少年と、心を交換する。老人の心は、若い身体を得て生き生きと、光り輝く毎日を送る。しかしやがて老人は、「若いということは想像以上にすばらしい。すばらしすぎる。世界中の富をもってきてもつりあわないだろう。この取り引きは不公平だった」と考え直し、未来を、正当な持ち主である少年に返す。
*老富豪の脳が、貧乏青年の若い肉体を味わう→〔憑依〕7の『ぬすまれた味』(小松左京)。
★7.若返り無用論。
『這う男』(ドイル) 老学者が若返ろうとして失敗する事件があった(*→〔猿〕7c)。ホームズは、若返りには否定的な考えを持っていた。彼は言う。「若返りが可能になれば、好色で世俗的な人間だけが、生命を長らえるだろう。崇高な人間は、より高いあの世へ行くことを嫌がらないからだ。この愛すべき世界は、生きる価値のない者ばかりの、汚水溜になってしまう」。
若返り
若返り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/01/05 11:45 UTC 版)
のちにスカニヤーはアシュヴィン双神に横恋慕された。しかしスカニヤーは心を動かされなかった。そこでアシュヴィン双神は、「チヤヴァナを若返らせてあげるから、その後で誰を夫とするかを選べ」と提案をした。2人が承諾すると、アシュヴィン双神はチヤヴァナを連れて泉に入って行った。するとチヤヴァナの肉体は若々しさを取り戻した。ところが泉から上がってきた3人の姿はあらゆる点でそっくりで、誰が夫なのかスカニヤーにはわからなかった。しかし意を決してスカニヤーが選んだのは見事にチヤヴァナだった。 若返ったチヤヴァナは大喜びした。彼はアシュヴィン双神がソーマ供犠にあずかっていないことを知っていたので(これは神々から仲間として認められていないことを意味する)、返礼にソーマを与えようとした。しかしこれにインドラ神が猛反対した。インドラ神は「医者であるアシュヴィン双神は労働者であり、神よりも人間に近い彼らにソーマはふさわしくない」と主張し、さらにヴァジュラで攻撃しようとした。しかしチヤヴァナはインドラの腕を麻痺させ、さらに魔術と苦行の力によって大阿修羅マダを創造し、インドラに対抗させた。インドラはマダの恐ろしい顔を見て恐れをなし、アシュヴィン双神がソーマを得て、神々の仲間となることを認めた。
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