入れ目
『豹(ジャガー)の眼』(高垣眸) 怪人ジャガーは、インカ帝国の財宝の隠し場所を知ったが、その正当な相続者はモリー(日本人黒田大佐とインカ帝国最後の王女の間に生れた杜夫少年)だったので、ジャガーはモリーを殺そうとする。モリーは、少林寺拳法の達人張爺(チャンエー)や美少女錦華(きんか)と力を合わせて、ジャガーを捕らえる。ジャガーの右眼はガラスの義眼で、彼はその中に、財宝のありかを記した紙片を隠していた。
*テレビ映画版『豹(ジャガー)の眼』では、モリーはジンギスカンの子孫→〔三つの宝〕4。
『水晶の栓』(ルブラン) ドーブレックは、政界の疑獄事件に関わった人々のリストを手に入れ、それを用いて恐喝を繰り返し、代議士の地位を得た。リストを失えば身の破滅なので、ドーブレックはリストを小さく折りたたみ、ガラス製の義眼の中に隠しておく。その秘密を知ったルパンは、ドーブレックのサングラスをむしり取り、親指を彼の左目につっこんで、義眼をえぐり取った。
『義眼』(落語) 義眼の男が寝る前に義眼を外し、湯飲みの水に漬けておく。別の男が、暗闇の中で湯飲みの水を飲み、知らずに義眼を飲み込んでしまう。義眼は男の肛門に詰まり、そのため男は便通が止まって高熱が出たので、医者に診察を請う。医者は腹中鏡(ふくちゅうきょう)で男の肛門をのぞき、悲鳴をあげる。「向こうからも、誰かがこっちをのぞいている!」。
『針』(遠藤周作) 女子学生・幸子の見ている前で、老人と青年がお互いの片眼を賭けて勝負をする。タバコを、灰を落とさずにどれだけ長く吸えるかという勝負で、老人が負ける。青年は「約束だから」と言って、老人の左眼に針を突き刺す。幸子は悲鳴を上げる。実は老人の左眼は義眼で、これは幸子を驚かすために、老人が考えた悪趣味ないたずらだった。
『入れ目の景清』(落語) 病気で目のつぶれた勝五郎が、清水の観音様へ百日参りをする。百日目の夜、観音様が現れて、「昔、平家の悪七兵衛景清が、両眼をくり抜いて清水寺へ捧げた。その景清の目を貸してつかわす」とのお告げがある。勝五郎は目が見えるようになり、その上、景清のような豪傑になった気がしてくる。彼は力試しに、往来の人々を殴って歩く。巡査が来て「何をする。気が違ったか」。勝五郎「目が違った」。
『犬の目』(落語) 目を病んだ男が、医者の治療を受ける。医者は男の両目をくりぬいて洗浄するが、犬がその目を食べてしまう。しかたがないので、医者は犬の目を男の眼窩に入れる。男は「夜でも昼と同様によく見える」と喜ぶ。しかし困ったことに、電信柱を見ると小便がしたくなるのだった〔*小便をする時に片足を上げねばならない、というオチもある〕。
『ケルトの神話』(井村君江)「銀の腕のヌァザとブレス王」 ヌァザの城の門番は片目だった。医者が猫の片目を取って門番の眼窩に入れてやり、門番は両方の目が開いた。しかし困ったことに、夜になって人の目は眠るが、猫の目は起きて鼠をねらった。昼間は人の目は起きているが、猫の目は眠ってしまった。それでも門番は、「片目がないよりはましだ」と喜んだ。
『女人訓戒』(太宰治) 19世紀のフランスで、眼科医が盲目の女に手術を施して兎の目を入れた。その結果、女は猟夫を見ると逃げ出すようになった。これは、兎の目が女を兎にしたのではなく、女が兎の目を愛する余り、彼女の方から自らすすんで兎に同化したのである。女性には、このような肉体的倒錯が、非常にしばしば見受けられる→〔狐つき〕6。
『いじわるな妖精』(チェコの昔話) おじいさんが、いじわるな妖精たちによって、両目をくり抜かれた。若者ヤネチェクが妖精たちをこらしめ、1人の妖精がおじいさんの目を返す。しかしおじいさんは「これはわしの目ではない。見えるのはフクロウばかりじゃ」と言う。2人めの妖精はオオカミの目、3人めの妖精はカワカマスの目を返すので、ヤネチェクは怒る。3人めの妖精は泣いてあやまり、おじいさんの本物の目を返した。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「海の物語」第10話 月の住民(*→〔月〕1a)の目玉は、好きなように取り付け・取り外しができる。顔につけても掌につけても、視力は変わらない。目を失ったとか損傷した場合には、他の目玉を買ったり借りたりして使えばよい。目玉商売人も多い。緑色の目が流行したと思うと、たちまち黄色の目が主流になるという具合で、目まぐるしい。
「 入れ目」の例文・使い方・用例・文例
- 入れ目の意味のページへのリンク