パリス
パリスが3柱の女神に「誰が最も美しいか」を判定するよう求められたというエピソードは「パリスの審判」と呼ばれ、古典絵画の画題として好まれた。
「パリス」は英語では「Paris」と表記するが、これはフランスの首都パリ(Paris)の英語名と同音同綴である。都市名「パリ」は「パリス」の名に因んだ名称というわけではないが、どちらもギリシア語の「Πάρις(田舎者)」に語源が求められるという点で共通している。
「パリス」の概要
「パリス」とは、ギリシア神話に登場する、男性の名前である。パリスは、トロイアの王であるプリアモスと、女王ヘカベの息子として生まれた(王子である)とされる。出産にあたって忌まわしい予兆が見られたため、パリスは生後まもなく捨て子となるが、後に王子として再び迎え入れられる。パリスという名称は、捨て子となり羊飼いに拾われてから付けられた名である。王子として生まれた当初はアレクサンドロスと命名されたと伝わる。
「パリスの審判」と「トロイア戦争」
「パリスの審判」は、羊飼いをしていたパリスのもとにギリシア神話の三美神(ヘラ、アテナ、アフロディーテ)が現れ、誰が最も美しいかを決めるよう求めた、という話である。女神たちは、自らを選ばせるために、それぞれパリスに対して賄賂を持ちかけたという。ヘラは「君主の座」を、アテナは「戦争の勝利」を、アフロディーテは「最も美しい女性」を提示した。パリスは「最も美しい女性」を求め、アフロディーテを最も美しい女神として選んだ。
パリスがアフロディーテから褒美として賜るはずの「最も美しい女性」は、ヘレネであったが、ヘレネはすでに人妻(スパルタ王の妃)となっていた。アフロディーテは、パリスがヘレネを強引に奪って妻とするように仕向ける。
パリスはヘレネを誘拐してトロイアに連れ帰ってしまう。ヘレネを奪われた夫のスパルタ王や、ヘレネを思慕していた周辺国の英雄たちは、ヘレネを奪い返すべくトロイアに攻め込んだ。こうしてトロイア戦争が勃発した。
要するにパリスは、トロイア王家に生まれ、トロイア戦争を引き起こし、そしてトロイアを滅亡に導いたことになる。
人名としての「パリス」
「パリス」は西欧の人名としても用いられる。神話に登場する「パリス」は男性であるが、人名としての「パリス」は男性名にも女性名にも用いられることがある。代表例としてはパリス・ヒルトン(Paris Hilton)が挙げられる・
アメリカには「パリス(Paris)」という地名も各地にある。
「パリスヒルトン」とは
「パリス・ヒルトン(Paris Hilton)」は、ニューヨーク出身の女優であり実業家である。ホテル業の世界的ブランドであるヒルトンホテルの創業家の一族であり、いわゆるセレブリティ、セレブタレントである。パリス・ヒルトン10代の頃から映画を中心とした複数作品に出演し、2003年にリアリティー番組「シンプル・ライフ」に出演したことで、知名度が高まった。自由奔放な生活を送り、それが世界に発信される機会が多い。歌手やDJとしても成功しており、実業家としてファッションブランドの展開なども行っている。
パリス【Paris】
パリス
パリス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 22:33 UTC 版)
パリス(古希: Πάρις, Paris)は、ギリシア神話の英雄である。
イーリオス(トロイア)王プリアモスとヘカベーの息子[1]。出生時の名前アレクサンドロスでも知られる。兄にイーリオスの英雄ヘクトール、姉に悲劇の予言者カッサンドラーを持つ。「パリスの審判」により、イーリオスに戦乱(ひいては滅亡)をもたらしたことで知られる。
神話
誕生
アレクサンドロス(後のパリス)を産むとき、ヘカベーは、自分が燃える木を生み出し、それが燃え広がってイーリオスが焼け落ちるという夢を見た[1]。ヘカベーが夢占い師にこの夢のことを告げると、彼は「この子は災厄の種になる」として、殺すことを勧めた[1]。そこで、プリアモスは家来に、アレクサンドロスを連行して殺すように命じた。家来は殺すにしのびず、イーデー山に捨てた。捨てられたアレクサンドロスは、熊の母乳により生き延び、羊飼いに拾われ、彼にパリスと命名されて育てられた[1]。
パリスの生存を王宮は知らず、パリス追悼のための競技会をプリアモスが後に開催する。
パリスの審判
成長したパリスはニュンペーのオイノーネーを妻とし[1]、イーデー山で羊飼いをしていた。後にプリアモスの子であることが明らかとなって、王宮に迎えられた。
ある日イーデー山にいたパリスのもとにヘーラー、アテーナー、アプロディーテーがやってきて、誰が一番美しいか判定させようとした(パリスの審判)。
パリスはこの世で一番美しい女を妻として与えると約束したアプロディーテーを、最も美しいとした[1]。
ヘレネー誘拐
アプロディーテーはパリスに、船を作ってスパルタに赴き、ヘレネーをさらって妻にするようにと命じた。パリスは言われたとおりに実行し、オイノーネーを捨ててヘレネーを妻にした。そこでヘレネーの夫メネラーオス、メネラーオスの兄アガメムノーンらは、ヘレネーを取り返すべく、ギリシア中の英雄を募ってイーリオスに攻め寄せた。これらの英雄のほとんどはヘレネーに結婚を申し込んだ男たちだった。ヘレネーの父テュンダレオースは、彼らの中の誰を結婚相手に選んでも、それ以外の男たちの恨みを買う恐れがあるため、あらかじめ「誰が選ばれるにしても、その男が困難な状況に陥った場合には、全員がその男を助ける」という約束をさせていたのである[2]。
トロイア戦争
こうしてトロイア戦争の引き金となった パリスであったが、当人は飄々としている始末で、『イーリアス』では軍勢の先頭に立ち「誰でもいいから俺と勝負しろ」と宣言したにも拘らず、喜び勇んで飛び出してきたメネラーオスを見るや怖気づき逃げ出す醜態を晒している。これをヘクトールに責められ、ヘレネーと奪った財宝を懸けてメネラーオスとの一騎打ちに挑んだものの敗北し、寸前のところでアプロディーテーに救われている。 ヘクトールの死後はアポローンの助力のもと、弓でアキレウスを討ち取った[1]が、トロイア陥落の間際、ヘーラクレースの矢を持つピロクテーテースに射られ瀕死の重傷を負う[1]。この傷を治せるのは、昔捨てたオイノーネーだけだったため、パリスはイーデー山に行き、オイノーネーにすがるが拒絶され、イーリオスに戻って死亡した[3]。オイノーネーは後悔し、薬を持ってパリスを追うが、すでに死んでしまった後だったので、自殺して果てたという[3]。
系図
脚注
パリス
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「ヴィルトゥス (漫画)」の記事における「パリス」の解説
ガムラ配下の剣闘士で、「エーゲ海の黒豹」の異名を取る花形闘士。ナルシストでホモセクシュアル。神尾心に好意を持つ。
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パリス
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「ボブ・ウェルチ (ミュージシャン)」の記事における「パリス」の解説
詳細は「パリス (バンド)」を参照 1975年、ウェルチは元ジェスロ・タルのグレン・コーニック(ベース)と、元ナッズ(トッド・ラングレンの初期のバンド)のトム・ムーニー(ドラム)とのスリーピースバンド、パリスを結成し、キャピトル・レコードからアルバム『パリス・デビュー!!』(1976年)をリリース。ドラムをハント・セールスに替えアルバム『パリス・セカンド - ビッグ・タウン2061』(1976年)をリリースした。この後、仮称『パリス3』の製作にかかるが、セールスが顔面麻痺を病み、更にコーニックが音楽業界から身を引き、食品会社のマネージャーになったため、ウェルチはほとんど一人で『パリス3』の製作を進めることになる。
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パリス
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「アトランティス大陸」と敵対する、女ばかりが住む「ムー大陸」における唯一の男性。最初、ジャスティンを女と思い込んでさらうが、その後バージルにその道に目覚めさせられ、最後は天使ドジエルとカップルになる。
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パリス
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「グイン・サーガの登場人物一覧」の記事における「パリス」の解説
シルヴィア付きの武官。寡黙だが剣の腕はいい。女官たちからは気味悪がられていたがシルヴィアには忠実で、どんな理不尽な命令でも従う。グインの失踪後はシルヴィアの愛人となった。グインがパロから帰還した後に、ハゾスによって拘束され拷問を受けたが、それでもパリスはシルヴィアを弁護し続けた。
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パリス
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アテネの病院で働く看護婦。言葉も声も発することができず口が利けない。その影響か終盤まで魔法を使うことができない。なおギリシア神話のパリスと同名だが、そちらに結びつく要素は特に伺えない。
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パリス
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河神ケブレーンの娘のニュンペーたちはイーデー山に足繁く通っていた。その中の1人オイノーネーは予言と薬草の魔術による治癒の力を持っていた。オイノーネーはイーデー山で羊飼いをしていたパリスの妻だった。誰も(パリス自身さえ)知らなかったが、実はパリスはトロイア王プリアモスの王子だった。生まれた時、トロイアに壊滅的な未来をもたらすと予言され、聖なる斜面に捨てられた。赤ん坊を託された善良な羊飼いが赤ん坊を埋めに戻った時、牝熊(アルカイック時代の女神アルテミスの象徴)から乳を授かっていた。羊飼いは赤ん坊を家に連れて帰り、妻に育てさせ、パリスは成長したのだった。 ペーレウスとテティスの結婚式で、不和の女神エリスが投げ込んだ「最も美しい女神に」と書いた不和のリンゴにより、3女神(アテーナー、ヘーラー、アプロディーテー)が争い、審判を受けるためイーデー山に赴いた。山腹の聖なる泉で、パリスの審判が行われた。青年に成長したパリスは最も美しい女神にアプロディーテーを選んだ。アプロディーテーは褒美にヘレネーを花嫁として与え、選ばれなかった他の2女神はトロイアを怨んだ。それがトロイア戦争を引き起こした。
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パリス
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アンリの父ラウールの妹の息子。初登場は「樹海の虜」。ラウールの弟で探検家であるアランと共に行方不明(古代マヤの世界にタイプスリップ)になったアンリを捜すべくユカタン半島に飛び、アネモネと共に古代マヤの世界に飛ばされてしまう。アンリを連れ戻すことに成功するが、彼の心はアネモネから離れていた。以前からアネモネに恋心を抱いており、アンリに寄りかかりがちだったが、アネモネと南インドの小さなカトリック教会で式を挙げる。
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パリス
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「シャルトル公爵の愉しみ」の記事における「パリス」の解説
ラウールの妹の子どもで、アンリの従弟。アテネーが生まれるまで長く一人っ子だったアンリにとって、弟のような存在。アンリが南米で行方不明になったときにはアネモネとともに捜索に赴き、その間の出来事をともに体験している。純情で誠実な性格だが、流されやすくレオポルディーネの強引な言動に押し切られて彼女の企みに加担しかけたこともあったが、本人はアンリの元婚約者であるアネモネを長年一途に慕っており、アンリの結婚に先駆けて想いを実らせている。
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パリス
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「Ruina 廃都の物語」の記事における「パリス」の解説
主人公の悪友にして兄貴分。罪人の遺児においては義理の兄。チンピラ気質の若者で、盗賊としてもそれなりの腕があることから、ピンガー商会に雇われ後ろ暗い仕事(ルートによっては裏稼業には手を染めず、その代わり楽して稼ぐためにしょうもない商売を目論んだりしている設定にもなる)に手を染めており、ネルからはしばしば「ダメ人間」呼ばわりされている。一方で妹のチュナをとても大切にしており、またお伽噺の様な大冒険に憧れていたところもあった。異変に際して彼女が眠ったまま目覚めなくなったことと実際の「大冒険」の現実に二重の意味で気落ちするが、なんとか治療の手がかりを掴むべく遺跡探索に乗り出す。
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パリス
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「神域のカンピオーネス」の記事における「パリス」の解説
トロイア王子であり、トロイア戦争の元凶の一人。権力・力・武勲に興味を持たない恋愛脳の持ち主で、エリスによって引き起こされた三女神の諍いでは、『見返り』として「世界一の美女を与える」と条件を出したアフロディーテを一番に選んだ。眩しいほどの美男子で弓矢の名手だが、ヘレネーと考えなしに駆け落ちして戦争を招いた挙句、従軍拒否や敵前逃亡するなど少々性格に難がある。しかし顔が良いだけのダメ男というわけではなく、長続きはしないがときどき人が変わったように英雄らしいパワーを発揮する。トロイアではヘクトールに次ぐ強さをもち、ギリシア軍のナンバーツーである大アイアスと互角の実力者である。
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「 パリス」の例文・使い方・用例・文例
- パリスが誘拐した、ゼウスとレーダーの美しい娘
- カマエシパリス属
- カパリス属の数多い植物の総称
- 一対の葉を持っているリパリス属のラン
- パリスグリーンという,緑色の有毒粉末
- パリスというギリシヤ神話でトロイ戦争の原因となったとされる人物
- トロイの美しい王子パリス(オーランド・ブルーム)とスパルタの王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)は恋に落ちる。
- パリスは,ヘレンを彼女の夫であるメネラウス王(ブランダン・グレッソン)から奪う。
- アキレスは,パリスのいとこブリセウス(ローズ・バーン)に出会うまでは,自分自身の名誉以外何も求めなかった。
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