麻生美代子 麻生美代子の概要

麻生美代子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 10:25 UTC 版)

あそう みよこ
麻生 美代子
麻生美代子(1962年)
プロフィール
本名 左近允 美代(さこんじょう みよ)[1][2]
性別 女性
出生地 日本東京府北豊島郡滝野川町田端
(現在の東京都北区田端[1][2][3]
出身地 日本・東京府東京市下谷区御徒町
(現在の東京都台東区徒町)[1][2][3]
生年月日 (1926-04-07) 1926年4月7日
没年月日 (2018-08-25) 2018年8月25日(92歳没)
血液型 A型[4]
職業 声優女優
事務所 東京俳優生活協同組合(最終所属)[5]
配偶者 左近允洋[1][2][6]( - 2008年)
公称サイズ(時期不明)[4]
身長 / 体重 150 cm / 40 kg
スリーサイズ 85 - 70 - 86 cm
靴のサイズ 22.5 cm
活動
活動期間 1949年 - 2018年
ジャンル アニメゲーム吹き替えテレビドラマ映画舞台
デビュー作 ウルトラ婆さん
魔法使いサリー』アニメのデビュー作
声優テンプレート | プロジェクト | カテゴリ

生涯

生い立ち

東京府北豊島郡滝野川町田端(現在の東京都北区田端)生まれ[8]東京市下谷区御徒町(現在の東京都台東区徒町)育ち[1][2][3]。旧海軍にて艦船・航空機の位置確認のための天体観測に従事[6]1945年東京大空襲で被災[3]。母の実家のある千葉県に疎開し、肺病を患って2年くらい療養に専念[3][9]

キャリア

その後、文化学院[10]に入学し、友人から新児童劇団に誘われて学生時代から演劇を志す[9]。1947年、新児童劇団入団[11]小堀誠に師事していた時期もあった[11]。大人向けの演劇に興味がわいて、1956年7月、劇団葦に入団し[12]、芝居を続けながら、収入を得るためにラジオドラマなどに出演し[9]、主に舞台女優や声優として活動。1963年4月に劇団葦を退団し、同年8月に劇団新劇場に入団[12]。その後、江崎プロダクション[13]を経て、最後は東京俳優生活協同組合に所属していた[14]

一時は新聞社に勤めており、新聞記者として取材をしていた[3][9]。民間放送が始まった頃にTBSのアナウンサー1期生の入社試験を受けて合格したが、身体検査で以前の肺の病を理由に落選した[3][9]

アニメ『サザエさん』では磯野フネ役を1969年10月5日の放送開始から2015年9月27日まで演じており、母性を感じさせる優しく落ち着いた声で、長年「日本のお母さん」として多くのファンに親しまれた[15]

2006年には市川準監督の実写映画『あおげば尊し』にて、加藤武の妻にしてテリー伊藤の母親役を演じた[16]

2009年6月、急病(のちに腸閉塞と発表)のため短期間休業。そのため、『サザエさん』のフネ役は1週分(6月14日放送分)を谷育子、『和風総本家』のナレーションは1か月ほどを池田昌子が代役を担当した。『サザエさん』では、本編冒頭に麻生の休業と谷による代役を伝えるテロップが流された[16]

晩年・死去

2012年、第6回声優アワード「功労賞」を受賞[17]

2015年、約46年間演じた『サザエさん』のフネ役を同年9月27日放送分をもって卒業。麻生の年齢を考慮しての交代で、後任は寺内よりえとなった[18][19]

ナレーションを務めている『和風総本家』はフネ役降板後も続投していたが[20]、2017年8月24日放送分からは島本須美と分担して担当となり、2018年3月22日の放送回をもって卒業。同年3月20日に行われたこの番組のナレーション収録が、生前最後の仕事となった[15]

2018年8月25日午前7時23分、老衰のため死去[5][7]。満92歳没(享年93)。訃報は翌月3日に発表された[5]。所属事務所の理事長・朝田孝二によれば、死去する前日の夜に睡眠時間が長くなったことから、朝田や親族などが集まり付き添う中で静かに息を引き取ったといい、「最期はまるで笑っているかのようだった」と語っている[21]

麻生の死去を受けて、2018年9月6日放送の『和風総本家』では番組の最後に追悼VTRが流れ、麻生の生前の写真と「ニッポンっていいな〜和風総本家のお時間です」というナレーション共に、「麻生さん ありがとうございました ご冥福をお祈りします」という追悼メッセージが流れた[22]。フネ役を演じた『サザエさん』でも、9月9日の放送で追悼のテロップが流れた[23]

人物・エピソード

声種アルトからメゾソプラノ[14]

アニメ、洋画に多数出演していた[24]

日本女性らしい穏やかな声質[16]であることから、演じる役柄は高齢の女性かつ威厳のある役、中年以上の女性役を数多く演じていた[24][25]

多趣味でシャンソン油絵などをたしなみ、とくにスキューバダイビングは47歳から80歳まで続けたという[6][15][16][21]

ヘビースモーカーを自認していたが、死去の2年前からは禁酒・禁煙していた[26]。また、関係者によれば病気知らずで、最後の仕事を終えた2018年4月以降も元気に過ごしていたという[15]

父は師匠の元で表具師の修業をしていた時期もあった[3]。夫は音響監督左近允洋[1][2][6]2008年3月10日に死去し、同月14日放送の『徹子の部屋』ゲスト出演は夫の喪を秘しての出演だった。

鈴置洋孝プロデュースの舞台には常連として出演していた[3]。鈴置はみずからがプロデュースする舞台へ上がってもらうために、『煙が目にしみる』の台本を渡して出演を懇願したが、麻生が台本を最初に読んだ時の印象は「これのどこが面白いの?」だったという。また、2006年に死去した鈴置に過去の火葬場を舞台にした作品と重ねて「『煙が目にしみる』が現実になるなんて!! 冗談きつ過ぎるよ。何度つぶやいた事か。」と語っている。鈴置の死後は、鈴置と関係のあった人物の集まりから結成された演劇集団『鈴舟』にて「船頭」であった[27][28]

サザエさん』ではレギュラー声優陣のなかで最年長であったため、収録現場を取り仕切る役目を担っていた[29]。フネはおしとやかな性格だったが、麻生自身は朝田孝二が語るところの「明るく朗らかでチャーミングなおばあちゃん」で、サザエ役の加藤みどりは「何かあれば麻生さんに相談できて、頼りになる先輩」と語り、80歳を超えても声は健在で滑舌も良く、先輩として皆の目標になっていたという[15][21]

最晩年は、若い役者との交流が「元気の源」であり、月に2回ほど自宅に招いては手料理と酒を振る舞っていたという。このことを麻生は「役者じゃ食っていけない。それは私が一番知っている。だからご飯を食わせてやるんですよ。私はお母さんでしょうか。若い男たちと一緒にいると、若さを分けてもらえるようなかんじ。これが今の生き甲斐ですね」と語っていた[26]


注釈

  1. ^ 麻生の存命中に『サザエさん』で2009年6月14日放送分のみ磯野フネの代役をしていた。また、チーズフォンデュさん役は2023年11月3日放送分からは堀越真己に交代
  2. ^ 2009年6月放送回では一時的に池田昌子が代役をしていた。
  3. ^ 麻生みつ子」と誤表記。
  4. ^ 夫・左近允洋も音響監督として参加。
  5. ^ 魔女は麻生三代子と誤表記。

出典

  1. ^ a b c d e f 麻生 美代子 - CDJournal”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2020年1月25日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 麻生 美代子”. タワーレコード. 2020年1月25日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 「シリーズ人間No.1883 麻生美代子」『女性自身』2008年1月29日号、光文社、2008年1月、54-60頁。 
  4. ^ a b c 麻生 美代子”. 日本タレント名鑑. 2019年9月3日閲覧。
  5. ^ a b c d e 訃報 麻生 美代子”. 東京俳優生活協同組合. 2018年9月3日閲覧。
  6. ^ a b c d e “フネ役46年 麻生美代子とは イメージ違う実はヘビースモーカー”. Sponichi Annex. (2015年9月18日). オリジナルの2016年4月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160404151849/https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/09/18/kiji/K20150918011157090.html 2023年2月5日閲覧。 
  7. ^ a b “「サザエさん」元フネ役 麻生美代子さん 老衰で死去 92歳”. Sponichi ANNEX. スポーツニッポン新聞社. (2018年9月2日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/09/03/kiji/20180903s00041000180000c.html 2018年9月3日閲覧。 
  8. ^ 鈴舟 第3回公演『ベイビー・フェイス』での公演後の対談「美代子の部屋」における本人の発言より。
  9. ^ a b c d e 「極 声魂/麻生美代子」『声優アニメディア』2009年2月号、学研ホールディングス、2009年2月、102-103頁。 
  10. ^ 『日本タレント名鑑(1988年版)』VIPタイムズ社、1988年、276頁。 
  11. ^ a b 『タレント名鑑NO2』芸能春秋社、1963年、137頁。 
  12. ^ a b 『新劇便覧』テアトロ、1965年、234頁。 
  13. ^ 『出演者名簿(1978年版)』著作権資料協会、1977年、16頁。 
  14. ^ a b 麻生美代子”. 東京俳優生活協同組合. 2017年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月25日閲覧。
  15. ^ a b c d e “「フネ」声優・麻生美代子さん逝く…「サザエさん」で46年間“日本のお母さん””. サンスポ. 産経新聞社. (2018年9月4日). https://www.sanspo.com/article/20180904-6Q5OWCJXR5IG3DQJTR6DR5BLEA/2/ 2018年9月4日閲覧。 
  16. ^ a b c d 緊急降板フネ声優、元気のヒミツは多趣味とタバコ!?”. ZAKZAK. 2014年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月7日閲覧。
  17. ^ 『第六回声優アワード』受賞者先行発表!”. 声優アワード. 2012年2月22日閲覧。
  18. ^ a b 『サザエさん』磯野フネ役声優・麻生美代子から寺内よりえにバトンタッチ”. ORICON STYLE (2015年9月18日). 2015年9月18日閲覧。
  19. ^ “サザエさんのフネ役、声優交代へ 演じ続け46年間”. 朝日新聞. (2015年9月18日). http://www.asahi.com/articles/ASH9L51FNH9LUCVL00R.html 2015年9月25日閲覧。 
  20. ^ “「サザエさん」フネ役卒業の麻生美代子 「和風総本家」は続投へ”. スポニチ Sponichi Annex. (2015年9月18日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/09/18/kiji/K20150918011156870.html 2015年9月18日閲覧。 
  21. ^ a b c “麻生美代子さん死去 92歳 「サザエさん」の母フネ役初代声優「最期はまるで笑っているかのよう」”. Sponichi ANNEX. スポーツニッポン新聞社. (2018年9月4日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/09/04/kiji/20180904s00041000052000c.html?feature=related 2018年9月8日閲覧。 
  22. ^ “麻生美代子さん「和風総本家」で追悼VTR 生前の声で「ニッポンっていいな〜」”. (2018年9月6日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/09/06/kiji/20180906s00041000292000c.html 2018年9月8日閲覧。 
  23. ^ “『サザエさん』初代フネ役麻生美代子さんをテロップで追悼”. ORICON NEWS. (2018年9月9日). https://www.oricon.co.jp/news/2119169/full/ 2018年9月9日閲覧。 
  24. ^ a b 小川びい『こだわり声優事典'97』徳間書店〈ロマンアルバム〉、1997年3月10日、8頁。ISBN 4-19-720012-9 
  25. ^ 【声優の履歴書】第84回『サザエさん』磯野フネ役を40年以上演じ続けている・麻生美代子”. リアルライブ (2015年3月12日). 2021年11月5日閲覧。
  26. ^ a b 友人語るフネさん声優の晩年 夫子いなくても孤独じゃなかった”. 女性自身 (2018年9月14日). 2020年9月7日閲覧。
  27. ^ HOME”. 鈴置洋孝プロデュース公式サイト. 2020年9月7日閲覧。
  28. ^ 鈴舟 公式サイト
  29. ^ 2012年2月5日放送の爆笑問題の日曜サンデー内での永井一郎の発言より。
  30. ^ あかねちゃん”. 東映アニメーション. 2016年6月16日閲覧。
  31. ^ 植草信和 編「富野由悠季フィルモグラフィー(原口正宏)」『富野由悠季 全仕事』キネマ旬報社〈キネ旬ムック〉、1999年6月9日、415頁。ISBN 4-87376-514-5 
  32. ^ みつばちマーヤの冒険”. 日本アニメーション. 2023年4月10日閲覧。
  33. ^ a b ピノキオ より ピコリーノの冒険”. メディア芸術データベース. 2023年4月9日閲覧。
  34. ^ 作品データベース 一発貫太くん”. タツノコプロ. 2022年12月23日閲覧。
  35. ^ シートン動物記 くまの子ジャッキー”. 日本アニメーション. 2023年5月27日閲覧。
  36. ^ 女王陛下のプティアンジェ”. 日本アニメーション. 2016年6月18日閲覧。
  37. ^ シートン動物記 りすのバナー”. 日本アニメーション. 2023年5月27日閲覧。
  38. ^ まえがみ太郎”. 日本アニメーション. 2016年6月29日閲覧。
  39. ^ 坊っちゃん”. トムス・エンタテインメント 公式サイト. トムス・エンタテインメント. 2023年3月19日閲覧。
  40. ^ STAFF CAST”. TVアニメ「鋼の錬金術師」公式サイト. 2016年6月4日閲覧。
  41. ^ 亡念のザムド”. メディア芸術データベース. 2016年8月28日閲覧。
  42. ^ ハリー・ポッターと秘密の部屋”. 金曜ロードSHOW!. 2016年9月6日閲覧。
  43. ^ 眠れる森の美女”. Disney Blu-ray&Digital. 2024年1月20日閲覧。


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