VF-11 サンダーボルト VF-11 サンダーボルトの概要

VF-11 サンダーボルト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/02 15:15 UTC 版)

超時空要塞マクロス』より登場する「VF-1 バルキリー」の後継機で、「新統合軍(単に統合軍とも)」の主力量産機。『マクロスプラス』では、主人公「イサム・ダイソン」の序盤の搭乗機であるVF-11B、『マクロス7』では、「マクロス7船団」の主力機であるVF-11Cなどが主に登場する。愛称(ペットネーム)のサンダーボルトは雷電落雷の意。

メカニックデザイン河森正治。デザインモチーフは、Su-33 フランカーD(派生型のVF-11MAXLはF-16XL )。

概要

デザインモチーフとなったスホーイSu-33

2009年を舞台とする『超時空要塞マクロス』から、約30年後の西暦2040年を舞台とする『マクロスプラス』にて初登場。30年が経過していれば当然、新型機が出ているだろうということで、VF-1に変わる次世代機としてデザインされた。ファイター形態のデザインコンセプトは「翼を広げた翼竜[1]。ファイター形態はVF-1との差別化を図った一方で、バトロイド形態はVF-1に似たデザインになっている。コクピットのデザインは宮武一貴が、ガンポッドのデザインは吉野高夫が行っている。量産機ということで、後述のさまざまなバリエーションや、ロケットブースター、スーパーパック、フルアーマードパックなどの各種オプションも多数デザインされている。

『マクロスプラス』劇中では「VF-11B」が量産され普及しており、イサムも「YF-19」の前に搭乗する。しかし、ガルド・ゴア・ボーマンの乗る「YF-21」をレーダーで捕捉できなかったり、ブースターを増設しても追従困難であるなど、旧式機としての描写が強調されている。

『マクロスプラス』からさらに未来の2045年を舞台とする『マクロス7』では、発展型の「VF-11C」「VF-11D改」「VF-11MAXL改 ミレーヌ専用機(ミレーヌバルキリー)」が登場する。当初は『マクロス7』の主人公「熱気バサラ」もVF-11から後継機の「VF-19 エクスカリバー」に乗り換える構想があったが、VF-11は玩具商品の強度に問題があったため、実現しなかった[2]。VF-11MAXL改はヒロインのミレーヌ・フレア・ジーナスが搭乗する機体で、初の女性型VFとしてデザインされた。ミレーヌの母、ミリア・ファリーナ・ジーナスの「VF-1J」など、女性パイロットが乗る機体は従来作品にも登場していたが、形状も女性的な機体はシリーズ初。

2058年を舞台とする小説企画『マクロス・ザ・ライド』では、VFを用いたエアレース「バンキッシュ」を題材としており、民間に払い下げられたレース仕様機や報道用の機体が登場する。

バンダイやまとハセガワからはプラモデルや可変トイが発売されている。

機体解説

諸元
VF-11 サンダーボルト
分類 可変戦闘機
開発 新星インダストリー
生産形態 量産機
全高 3.49m(ファイター)
12.92m(バトロイド、頭部レーザー機銃を除く)
全長 15.51m(ファイター)
全幅 11.20m(ファイター)
空虚重量 9,000kg
エンジン (主機)新星/P&W/ロイス熱核タービン FF-2025G×2
(副機)P&W高機動バーニアスラスター HMM-5B
推力 (主機)28,000kg×2(宇宙空間瞬間最大推力)
最高速度 M3.5+(高度10,000m)
M8.2+(高度30,000m以上)
攻撃兵装 対空パルスレーザー機銃×1
ハワードGU-15 ガンポッド×1
(先端部に銃剣を内蔵、C型以降は銃剣不採用型のGU-16を装備)
防御兵装 防弾シールド×1(ガンポッド予備マガジン2基を格納)
チャフフレアディスペンサー×2
選択式装備 専用スーパーパック(大気圏内用、大気圏外用 他)
APS-11 アーマードパック
レーダードーム
サウンドブースター(MAXL改型専用) ほか
乗員人数 1名(D型は2名)
搭乗者 マクシミリアン・ジーナス(VFX-11)
ミリア・ファリーナ・ジーナス(VFX-11)
イサム・ダイソン(B型)
ガムリン・木崎(C型)
金龍(C型)
イリーナ・早川(C型)
ミレーヌ・フレア・ジーナス(MAXL改型)

西暦2030年に就役した新統合軍主力機。2020年代以前は「VF-4 ライトニングIII」や「VF-5000 スターミラージュ」といった数種類の機体が配備されていたが、これらはいずれも特定用途に特化した設計であり、「VF-1 バルキリー」のような汎用性を持つ真の次世代機は登場していなかった[3]。やがて大規模な宇宙移民時代が到来すると、移民船団の護衛や治安維持を担う汎用機の需要は高まり、新統合軍はこれに適応した次世代機開発計画「ノヴァ・プロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトは新星インダストリー社製の「VFX-11」とゼネラル・ギャラクシー社製の「YF-14」との一騎討ちとなり、これに勝利したVFX-11が「VF-11 サンダーボルト」として次期主力機に決定した。なお、敗れたYF-14は、高い強度と搭載量の多さを評価され、「VF-14 バンパイア」として移民惑星でのライセンス生産へと回された。

VF-11はトータルバランスを重視した機体で、性能面で特に傑出したものはない。しかし、安定した飛行特性や高い信頼性と整備性など、現場での運用評価は高く、多数のバリエーション展開や豊富なオプションを装備可能な拡張性も備えていた。主機の熱核タービンエンジンは、VF-4に搭載された「FF-2011」の約2倍の出力を持つ「FF-2050G」を搭載している。しかし、機内の燃料容量(厳密には推進剤の搭載容量)が小さいというVF-1以来の根本的問題は解消されておらず、宇宙空間での活動にはスーパーパックなどの外装オプションを必要とする。

ファイター形態は、VF-1やVF-5000の流れを汲む、大気圏内での空力特性を重視した形状を持つ。機首両脇の大型カナードが特徴的で、未装備の機体と比較して若干最高速度は落ちるが、高機動時の操縦性に優れている。主翼は他のVF同様に可変翼を採用しており、高速移動時は後退させることができる。バトロイド形態への変形方法はVF-1以来の屈胴式で、変形後のシルエットも似通っている。しかし、VF-1では脚部が変形の際に一度切り離されてから機首のジョイントに接続されるのに対し、こちらではセンターモジュールから分離することなくそのまま変形する。

就役後は後継機の「VF-19 エクスカリバー」が登場するまでの10年以上にわたり第一線で運用され続ける。退役後は民間に多数が払い下げられ、レジャーやレースなどに使用されている。『マクロス・ザ・ライド』におけるバンキッシュレースでは、VF-11のみで行われる「サンダーボルト・クラス」という下位リーグがあり、独自の改造を施された機体が競い合っている。

武装・オプション

ハワード GU-15 30mm6連ガンポッド
B型用に供給された主武装。弾倉は銃身上部に位置する。銃身先端には収納式の銃剣を備え、バトロイド形態時の近接格闘戦に用いられる。C型以降の機体は、銃剣を撤去した低コスト仕様の「GU-16」や、短銃身化および減装薬で低反動化した「GU-16S」を装備する。
GU-XS-06 6連重ガンポッド
全長はバトロイド形態のVF-11の全高に匹敵し、非常に大型で重いため、重量バランスをとるために、APS-11装着時のバトロイド形態でのみ運用される。
後方対空パルスレーザー砲
頭部に装備されたVFの標準的な武装の一つ。ファイター形態では機体上面斜め後方に配置され、ドッグファイト時に死角となる後方への迎撃に備えている。この方式はVF-5000からVF-11を経て有効性が立証され、以降のVFシリーズの標準仕様となる。
チャフ・フレアディスペンサー
脚部エンジンナセルにはチャフ・フレアディスペンサーユニットを備える。
防弾シールド
本機で初めて採用された防御装備。ファイター形態時の後尾パンケーキ部(VF-1ではこの部分にバトロイド形態用のブースターが配置されている)に配置され、ガウォーク/バトロイド形態時は左前腕部に装着される。裏面にはガンポッドの予備弾倉を装着可能。VF-19以降の機体は、シールド表面にピンポイントバリアを展開することでさらなる防御性能を獲得している。
大気圏内用固体燃料ブースター
スーパーノヴァ計画の追跡観測機 (VF-11B) に外装されたロケットブースター。機体を挟んで上下に固形燃料ロケット2基を装着するため、これに干渉する対空レーザーは使用不可、ガンポッドも装備できなくなる[4]。燃焼時間は約5分と短く機体バランスも悪くなるものの、最高速度を大きく高めることができる。しかし、それでもYF-21に追随するのは困難であった。あくまでもテスト用の装備であり実戦用ではない。
フォールドブースター
VF-19やVF-22S シュトゥルムフォーゲルIIと共通のVF用小型フォールドシステム。空間を折り畳み、機体を別の場所へと跳躍させる。ミレーヌのMAXL改にはサウンドブースターの上に二段重ねで装備される。
スーパーパック
追加ブースターおよび推進剤のタンク、マイクロミサイルポッドによる機動性・攻撃力向上用のオプションパック。これを装備したVF-11は「スーパーサンダーボルト」と呼ばれる。
VF-11B用大気圏外型スーパーパック
ヒューズHMMM-Mk6マイクロ・ミサイルランチャーを搭載したMP-SP09背部ブースターユニットと脚部ブースターユニットからなる。VF-1のものよりも小型化されている。マイクロミサイルの発射口が片側4つで、ノズル形状が円錐型である。
VF-11C用大気圏外型スーパーパック
VF-1のものよりも小型化されている。マイクロミサイルの発射口が片側2つで、ノズル形状が角型である。
VF-11C用大気圏内型兼大気圏外型スーパーパック
空気抵抗を考慮した流線型で、推力偏向ノズルが付けられている。劇中では『マクロス7』の44話内での作戦「オペレーション・スターゲイザー」で使用された。
APS-11 アーマードパック
GBP-1S アーマードバルキリーの流れを汲むバトロイド形態専用の追加装備。GBP-1Sを凌ぐ耐弾性、重武装からフルアーマード・サンダーボルトと呼ばれる。バトロイドの全身を覆う脱着式装甲に大量のミサイルが内蔵され、両肩の連装ビーム砲計4門、専用の長射程高貫徹力型6連重ガンポッドGU-XS-06なども使用する。腕部の大型シールドはリアクティブアーマー仕様。
サウンドブースター
サウンドブースター 2号機
ミレーヌ・ジーナスのMAXL改型専用の装備。飛行時は全翼機型で背部にドッキングし、バトロイド時には両翼に大型の時空共振サウンドスピーカーを展開する。VF-11MAXL改のいる区域まで自律航行も可能である。量産型VF-19用のエンジンを搭載し大気圏内外で使用可能なブースターを備えているため、最大速度および機動性に優れる。 ファイター、ガウォーク、バトロイドの三形態に装備可能だが、変形時は一時的に切り離す必要がある。
VF-11D改用大気圏内外両型サウンドブースターパック
VF-11D改用で、時空共振サウンドスピーカーを備える。ミサイルランチャーも搭載している。

注釈

  1. ^ この機体は『マクロス7』第10話「ディープバラード」で使用されるアイキャッチ(北条アキコを中心とするもの)、および同話Bパートの回想シーンに登場し、ここではVF-11Bの設定画と共通したデザインの機体が描かれている(回想シーンの方はガンポッドの形状がB型のものと異なり、C型と共通するものになっている)。一方、テレビ未放映話「オンステージ」劇中の再現ドラマでは、キャノピーカバーの構造を除いてVF-11Cの設定画と共通するデザインで描かれている(ただし、この再現ドラマにおけるFire Bomberメンバーの過去などは、劇中において真実とは異なるものとして描かれている)。後年に発売された分冊百科『マクロス・クロニクル No.46』(ウィーヴ、2010年)の「キャラクターシート 金龍」(18頁。新訂版では第22号12頁)における囲み記事「関連事項 ピンクペッカー隊」では、カラー設定画とともに「VF-11B サンダーボルト ピンクペッカー仕様」と紹介されている。『週刊 マクロス・クロニクル 新訂版 No.16』(デアゴスティーニ・ジャパン、2013年)の「エピソードシート マクロス7 第10話「ディープバラード」」(25 - 28頁)では、冒頭(25頁)の「登場キャラクター・メカニック」では「VF-11Bピンクペッカー仕様」とされているものの、囲み記事「TOPICS ピンクペッカー隊の搭乗機」(27頁)では、「VF-11Cサンダーボルト」と紹介され、2030年という早い時期に配備されている理由については、精鋭部隊に配備された「先行試作機」ではないかという推測で締めくくられている(その横に配置されている写真は『マクロス7』第10話回想シーンのもの)。『新訂版 No.80』巻末の訂正用ステッカーにおいてこの記述は全面的に誤りとされ、ピンクペッカー隊の搭乗機はVF-11Bであり、「カスタマイズされた性能向上型のVF-11Bが配備されていたようだ」という記述に変更されている。

出典

  1. ^ 『マクロス・ザ・ライド ビジュアルブック2』77頁。
  2. ^ 「スタッフインタビュー1 XB-70からVF-22まで スーパーバイザー 河森正治スペシャルインタビュー」『マクロスデジタルミッションVF-X 最強攻略ガイド』100頁。
  3. ^ a b c d e 『THIS IS ANIMATION Special マクロスプラス』69頁。
  4. ^ 『マクロス・クロニクル No.29』6頁
  5. ^ 『マクロス・クロニクル No.46』31頁。
  6. ^ 富田祐弘「明日へファイアー! ファイアーボンバー音楽活動秘話」『FIRE BOMBER 公式プログラム in マクロス7』徳間書店、1995年、59頁。『マクロス7』テレビ未放映話「オン ステージ」でも同様。


「VF-11 サンダーボルト」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「VF-11 サンダーボルト」の関連用語

VF-11 サンダーボルトのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



VF-11 サンダーボルトのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのVF-11 サンダーボルト (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS